Magic of Pokemon/"Pokemon" course for fathers

From Poké Sources
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お父さんのための「ポケモン」講座

佐藤哲胆

あの事件以前に、「ポケモン」という言葉を聞いたことがあるお父さんは、何人いたでしょうか。そして、事件後の今も、名前こそ目や耳にしてはいても、「『ポケモン』ってなに?」という質問に答えられる人はそれほど多くはないはずです。子どもたちを夢中にさせ、お母さんをも魅了し、事件後もその人気がいっこうに衰えることがない、「ポケモン」とは結局なんなんだ一……そんなお父さんたちの素朴な疑問に答えます。

▶| 「ポケモン」とはゲー厶のタイトルであり、メディアである

「ポケモン」に簡単な定義をすれば、(一)任天堂の携帯ゲーム機「ゲームボーイ」用に開発されたソフトウェア『ポケットモンスター』(『ポケモン』)を指し、(二)(一)に登場するキャラクターや世界観に拠ったキャラクタ—商品、漫画、書籍、TVアニメーションといった関連商品の拡がり全体、『ポケットモンスター』を媒介とした「ポケモンというメディア」を指します。この二つの「ポケモン」は、いうまでもなく深くリンクしており、また相伴って「ポケモン」という現象を盛り上げていくべくさまざまな仕掛けが施されています。昨年十二月十六日、テレビ東京系列の人気アニメ『ポケットモンスター』を視聴していた子どもたちが大量に倒れました。この事件によって、これまでおもに小学生や小学生の子どもをもつ母親層にのみ認知されてきた「ポケモン」がいよいよ私たちの視野に入ってきたのです。ここでは、まず(一)の「ポケモン」についてったない解説を試みつつ、徐々に(二)の『ポケモン』、「メディアとしてのポケモン」の拡がりを俯瞰してみたいと思います。そもそも『ポケットモンスター』は任天堂から発売された「ゲームボーイ」用ソフ卜であり、ロールプレイングゲーム(RPG、プレイヤーがゲームの主人公となり、経験を積んで成長し、目的を達するゲーム)と呼ばれるジャンルに属します。モンスターの出現率など内容が微妙に変えられた「赤(レッド)」と「緑(グリーン)」の

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二つのバージョンがあり(後に「青」(ブルー)も出現)、ー九九六年二月二十七日、価格三千九百八十円(税抜き)で発売されました。同じタイトルのソフトで、二つのバージョンが発売されるというのは、ゲームボーイはもちろん、ファミコンやスーパーファミコン、ソ二ーのフレイステーションなどのソフトとして、それまで発売されてきた多くのゲームのなかでも、初めての試みでした。
ゲーム開発を担ったのは、ゲーム作家、田尻智氏が社長を務める㈱ゲームフリークで、プロデュースは『MOTHER』のプロデューサーとしても知られる石原恒和氏率いる㈱クリーチャーズが担当しました。八九年、このゲームの元になるアイデアが田尻智氏のなかに宿ってから、発売までじっに六年以上の歳月を費やしています。一昨年二月の発売以来、『ポケットモンスター』は「赤」「緑」そして後述する通販限定の「青」の三つのバージョンあわせてじつに八百万本以上を売り上げました。
昨年八月末の段階で、ファミコンソフトのロングセラー『スーパーマリオブラザーズ』(ー九八五年九月、任天堂より発売)の六百十八万本を抜き、国内ゲームソフトの売り上げ本数記録を更新しています。とはいっても、『ポケモン』には三つのバージョンがあるため、一人で三本とも所有しているというユーザーも少なくないので、単純に「ポケモンがマリオを抜いた」という表現はできないかもしれません。

▶| あなたはポケモンワールドの主人公になる

ゲームボーイに『ポケモン』「赤」「緑」「青」のいずれかをセットし、スイツチを点けると現れる『ポケットモンスター』のゲーム世界は「ポケモンワールド」と呼ばれています。ポケモンワールドには百五十種類(厳密には百五十一種類)のヴァーチャル(仮想)生物、ポケットモンスター(ポケモン)がいます。「ポケモン」とはゲームのタイトルであると同時に、ゲームのなかで生きる生物名でもあるのです。

この世界ではポケモンの飼育や研究が盛んで、町々には「ポケモンジム」や「ポケモンセンタ—」といった施設があります。主人公、つまりあなたの祖父、オーキド博

115  PART-2▶「ポケモン」とは何か

士は有名なポケモン研究家です。あなたはポケモントレーナーを目指す少年で、百五十種類のポケモンを集めてポケモン図鑑を完成させるため、ポケモンワールドをせっせと冒険するのです。道中にはさまざまなイベントが待ち受けており、あなたは採集したポケモンを他の「ポケモントレーナ—」たちと対戦させることで成長・進化させながら、自らも最強のポケモントレーナー、「ポケモンマスター」へと成長を遂げるのです。
ゲームボーイ『ポケモン』のいちばんの特徴はネットワークの要素をゲームに組み込んだことです。ゲームボーイ同士を通信ケーブルで繫ぐと、お互いの持っているポケモンを交換したり、手持ちのポケモンを駆使して腕試しの対戦をしたりすることも可能です。交換によって手に入れたポケモンは通常のポケモンのー・五倍のスピードで成長します。また、通信交換を通じてのみ進化する性質をもったポケモンもいます。つまり、ポケモン図鑑は、スタンドアローンでいくら遊んでも、けっして完成しません。同じポケモンソフトを持った友だちとの間でネツトワークを繫ぐことが、ゲ—ムストーリーの要請として最初から織り込まれているのです。
先に少し触れたように、『ポケモン』は「赤」バージョンと「緑」バージョンの二種類が同時に発売されました。赤のパツケ—ジには「炎」の種に分類されるポケモン「リザードン」が、「緑」には「草・毒」のポケモン「フシギバナ」がそれぞれプリン卜されています(この二匹のポケモンはもともと、それぞれ「ヒトカゲ」「フシギダネ」という、主人公が最初の「ポケモン」として選ぶパートナーが立派に進化した姿です)。この二種類のソフトは、ストーリ—などゲームの内容はまったく同じなのですが、出現するモンスタ—が少しずつ違うのです。ダンジョンや草原、洞窟などに出没する野性ポケモンの出現率が「赤」「緑」ごとに、それぞれ多いもの、少ないものがあり、または「赤」「緑」それぞれにしか登場しないポケモンもいます。
「友だち同士で、それぞれが持っているゲームボーイのポケモンのなかから、欲しいポケモンを交換する」というモチベーションを駆り立てるための、とてもよくできた仕掛けだと思います。
このほか、九六年の秋にはポケモン百万本突破記念と銘打って、小学館の人気幼年誌『コロコロコミック』と学年誌を通じて、期間限定の通販で『ポケモン』の「青」バージョンが発売されました。こちらのパッケージには「水」ポケモンの「カメックス」(主人公が最初に選択するポケモンのひとつ、「ゼニガメ」の進化形)がプリントされています。「青」に関してはポケモンのグラフィックも若干変えられています。こちらも大好評で、通販期間中だけでも六十一万本以上の注文を集め、九七年六月からの新規販売の際は、コンビニチエーン・ローソンが小学館とタイアップし、予約受け付け窓口を開きました。ソフ卜の値段も手頃なことから、「赤」「緑」

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97年ヒット商品番付
西
たまごっち 横綱 もののけ姫
携帯情報機器 大関 ポケットモンスター
デジタルカメラ&ビデオカメラ 関脇 失楽園
小室ファミリー 小結 小顔化粧品
Gショツク 前頭1 チャイドル
デジキューブ 同2 キャンドル•イン・ザ•ウィンド
キシリトール入りガム 同3 ねるじえら
少年H 同4 サプリ
キティちゃんグッズ 同5 割引サービス
ガーデニング 同6 高付加価値白物家電
日本総研ビジコン発表
「青」の三本を購入し、完璧なコレクションを目指している「ポケモン通」の子どもも珍しくはありません。
97年ヒット商品番付

|▶ 『ポケモン』はゲー厶ボーイの救世主

ゲームボーイは八ビツト、モノクロ液晶ディスプレイを搭載した携帯ゲーム機としてー九八九年四月二十一日に発売されました。開発者は故・横井軍平氏です(彼は任天堂の名を広めた懐かしの「ゲームウォッチ」〈一九八〇年〉の開発者でもあり、昨年十月、不慮の死を遂げられました。価格は一万二千八百円で、モノクロながらファミコン並みの複雑なゲームを、携帯してどこでも楽しめるという触れ込みで、新たなゲーム市場を開拓し、「ファミコンの弟分」として人気を博しました。もっとも横井氏自身は「ソフトの交換が可能なゲームウォツチ」というコンセフトでゲームボーイを開発したのです。
ゲームボーイはしかし、『ポケモン』登場当時、ほとんど〃死にかけた〃メディアでした。九〇年度、九一年度と年間百二十タイトルを超えるソフトを発売していたにもかかわらず、以後はじり貧状態が続き、『ポケモン』が発売された九五年度には年間発売タイトル数が四十本台にまで落ち込んでいました。『ポケモン』の「赤」「緑」が登場した九十六年二月に発売されたソフ卜は他に『くまのプー太郎宝さがしだ大入りゲームバトル』(タカラ)のみ。前月は新作ゼロ、九六年三月から六月までは毎月一本のみ、という寂しい状態でした。
ソフトの販売本数の落ち込みはもっと顕著で、九〇年度には千七百九十一万本を売り上げていたのが、九五年度には四百三十ー万本と、四分のー以下になっていました。
原因はさまざまでしょうが、「ファミコンの弟分」という横井氏の意図とは違う評価がソフトメーカー内で先行し、ファミコンソフトを単にグレードダウンしたような安易なソフトが横行したためという説もあります。この窮状を救ったのが『ポケモン』の爆発的ヒットでした。
ポケモンをやっている子どもたちは、よくケーフルをぶら下げたまま遊んでいます。このケーブルは「通信ケーブル」と呼ばれ、ニ台のゲームボーイを繫いで遊ぶために、開発されたものです。しかしゲームボーイ発売初期の看板人気ソフト『テトリス』で利用された以外、このオプションを有効に活用したソフトウェアは六年間ほとんど存在しませんでした。
「通信ケーブル」はいっしか「対戦ケーブ

117  PART-2▶「ポケモン」とは何か

ル」と言い慣らわされ、「通信」というキーワードに秘められた可能性は忘れられていました。死にかけていたゲームボーイというハードを復活させ、日本のゲーム界をも変えてしまったのは、言い換えればこのわずか千五百円のオプション機能だったわけです。さらに九六年七月二十一日、六千八百円という廉価で、スリム化されカラーリングを施したボディと見やすい液晶を備えた「ゲームボーイポケツト」が発売されたことも、ポケモン人気と相乗して新たなハードの売り上げに寄与しました。筆者がポケモンを遊ぶために購入したのも、この「ゲームボーイポケット」でした。

▶| 四千億市場となった『ポケモン』関連商品

ゲームボーイで『ポケモン』をプレイしている最中、作りかけのポケモン図鑑を開くと、電子音の鳴き声をあげて、モンスターたちが順繰りに姿を現してくれます。ふと気が付けば、二次元ドット世界に描かれた、この見るに飽きないモノクロのモンス夕ーたちが、綺麗に彩色されたキャラクター商品として日本中の街頭にあふれています。
バンダイが制作している「ガシャポン入りポケモン」や、トミーの「プラモン」(プラモデル)、ぬいぐるみ「ピカチュウシリーズ」など、立体的なグッズとして流通したポケットモンスターの数を合計すれば、恐らく日本の総人口をはるかに超えるでしょう。
圧倒的に人気があるポケモンは、やはり「ピカチュウ」(電気ポケモン)です。ピカチュウの原形はネズミだそうですから、都市生態系は彼らにとって案外、棲みやすいのかもしれません。食品分野でも、永谷園はポケモンキャラクターのカレー、フリカケ、ホツトケーキミックスを扱い、カレーでは他のキャラクターの六〜七倍の売り上げを記録しているほか、明治製菓もポケモンチョコレート・スナックなどで売り上げを伸ばしています。現在までにポケモン関連商品のライセンスを取った企業は三十五社、商品数は約七百にも上り、いまや四千億円市場とまでいわれています。これらポケモン関連商品の草分け的な存在が『ポケットモンスター』カードゲーム(発売元、メディアファクトリー)です。このカードゲームは千五百万枚以上を売る大ヒットとなりましたが、ゲームボーイ用ソフト『ポケモン』の制作と並行して企画されたもので、ポケモンの生みの親である田尻智氏も「キャラクター商品のなかでもいちばんよくできている」と評価していま不況下の日本で、ひとり打ち出の小槌のように利益を生んでいるポケモン関連商品ですが、昨年四月にテレビ東京系列でアニメ『ポケットモンスター』が放送開始されたことを期に、ライセンスの窓口は任天堂から㈱小学館プロダクションに移行されました。小学館は〃『ドラえもん』の後釜〃となるドル箱を手に入れたと、同業者から憧憬されています。
実際、ポケモンが小学生たちに広まった

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背景としては、小学館の『コロコロコミツク』とのメディアミツクス戦略が大きく寄与しました。いわゆる「コロコロコミツク・システム」と呼ばれるものです。出版科学研究所がまとめた昨年の雑誌販売状況調査によれば、『コロコロコミック』の売り上げ増加はいうまでもなく、普通は毎年四月号をピークに売れ行きが落ちる小学館各学年誌も、秋の誌面でポケモン情報を掲載したところ販売部数が四月号を上回り、十ー月までの累計で通常のー•五倍の売れ行きとなったそうです。ちなみに日本の雑誌全体の推定年間販売部数は前年割れしています。
『ポケモン』の厳密にいうところの百五十一種類のポケモンのうち、百五十一匹目のポケモンは「ミュウ」といって、実際のゲームには登場しない「幻のポケモン」です。九六年夏、別冊『コロコロコミック』誌上でのポケモンマンガの反響に好感触を抱いた編集部が、抽選で二十名のカートリッ

119  PART-2▶「ポケモン」とは何か

ジに、この幻のミュウのデータを入れて返送するという告知をしたところ、編集部には応募ハガキが七万三千通も殺到しました。『コロコロ』編集部はこの枚数に驚愕し、以来『ポケモン』に本腰を入れるようになったのです。現在も子どもたちの「ミユウ」熱は高く、任天堂のイベントでは、「ミュウ・プレゼント」が大きな呼び物となっています。
その一方ではマニアのバグ技(プログラム上のエラーを利用する)によってつくり出された「ニセ・ミュウ」も、全国に何万匹も棲息しています。そういえば昨年の晩夏、〃今、ニンテンドウ64を買うと、「なみのりピカチュウ」が抽選でー万名様に当たります。期間•平成九年九月二十一日〜平成九年十月三十一日〃という奇妙な広告が出回りましたが、これは「ミュウ」人気と同様の手法、オリジナルのポケモンデー夕・プレゼントで、不振の次世代機NINTENDO 64の売り上げを伸ばそうという任天堂の戦略でした。
ここまで来ると一種の頹廃まで感じてしまいますが、一昨年経常利益を五三%も減らした任天堂が九七年中間決算で六四%増と見事な回復を見せたのは、まぎれもなく『ポケモン』の貢献です。いまや、誰も彼もが、「ポケモンの魔力」にすがっているのです。

▶| 事件後、「ポケモン」は知名度アップ

昨年十二月の事件で話題になったTVアニメ『ポケットモンスター』は、別冊『コロコ口コミック』掲載のマンガ『電撃! ピカチュウ』が下敷きになったストーリーで、ポケモンの世界観を忠実に再現した秀作でした。同番組は異例の高視聴率をたたき出し、昨年十月七日に放映された『ポケットモンスター•秋のスペシャル』では視聴率一七•四%を記録、テレビ東京としては二年ぶりにゴールデンタイムでトップを取りました。昨年十二月の事件によって、一時期ポケモン関連商品を出している企業の間には動揺も走りましたが、テレビ東京のアニメーションが一時放送中止となり、ビデオのレンタルも中止されているほかは、とくにポケモン関連産業への影響はないようです。
クリーチャーズの石原氏によれば、むしろ知名度が上がったので問い合わせは増えているということ。とくにアメリカCNNほか、三大ネットで報道されたことをきつかけに、海外とのビジネス交渉も始まっています。まずアニメがアメリカで放映されることが決定、『ポケモン』の英語版ソフ卜とカードゲームの英語版も発売されます。今年九月から本格的なポケモンの海外進出が開始される予定です。今年の三月末には『ポケットモンスター』の続編といってもいい「金(ゴールド)」「銀(シルバー)」各バージョンが発売されます。とはいっても、これは昨年夏の発売予定が延び延びになっているので、あくまで予定です。
今明らかになっている新機軸を列記すると、『ポケモン』の「金」「銀」では、ポケ

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モンの数が二百五十種類以上に増えます。ポケモンにはすべて雄雌がいて、子どもも産むそうです。「たまごっち」みたいですね。また「金」「銀」のなかには「赤」「緑」「青」で育てたポケモンを連れてくることもでき、「赤」「緑」「青」で最終進化したはずのポケモンが、「金」「銀」でさらに進化することもあります。つまり旧ポケモンと新ポケモンの間に断絶はなく、相互補完的にポケモン世界を構成するということです。

▶| 子どもの世界を席巻する「ポケモン」

今子どもたちはポケモンブームにどっぷりと浸かっています。小学校の先生方からは、図画工作の時間、「こちらが指定をしないと、ピカチュウが教室のなかにいっぱい並んでしまう」(富山県小学校教諭)とか、「学年関係なしに、筆箱や下敷きなど、ポケモンキャラクタ—があふれています。ポケモンカードに子どもたちがはまりこんで授業中や放課後にかかわらずながめていたり、交換したり、なかには稀少カードを子ども同士で現金で売買したりして、学校内でちよつとした〃社会問題〃化しました」(愛知県小学校教諭)という声も聞かれました。
こういう現状のなか、今年、『ポケモン』の「金」「銀」が売れるか否かという詮索など、あらかじめ結果が決まった無意味な問いでしかありません。しかし筆者には、クリーチャーズの石原恒和氏が一昨年末、ポケモンブーム勃興の最中に語った言葉が忘れられません。
「子どもはあっというまに夢から醒めますからね。どういうかたちでポケモンを卒業していくかはわからない」さて、先ほど筆者は『ポケモン』をやるためゲームボーイとソフトを購入したと書きましたが、筆者は今、『ポケモン』をやっていません。モンスタ—も五十種類以上集めたのですが、そのまま放ってあります。でもそれは、「飽きた」とか「つまらない」とかいう感覚とはどこか違うのです。昆虫採集や怪獣消しゴムのコレクションを彷彿とさせる『ポケモン』には、ハイテクを駆使したTVゲームらしからぬ「懐かしいオモチャ」、「昔ながらの遊び」のやさしい手触りがあります。
それはわれわれ大人にとってみれば、しばらく触れていれば懐古趣味が満たされて、自然に離れていく類いの魅力なのだと思います。TVゲームが、そういう子どもが夢中になれる、でも大人になればきちんと卒業できる、まっとうなオモチャであり得ているのは、すごく希望のもてることだと、最近は考えるようになりました。しかしその感想とは別に、キャラクタ—商品やアニメーションを通じ、メディアとして、世代や性別を超え、際限なく拡がり続けるもうひとつの「ポケモン」、私たちの周囲に蔓延する「メディアとしてのポケモン」のあり方には、先ほど触れた「頹廃」に通じる違和感も覚えるのです。

121  PART-2▶「ポケモン」とは何か
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