Magic of Pokemon/News File

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ニュース・ファイル

事件を読む

十二月士八日

事件当日

第一報
●アニメ番組見ていた子どもたちが各地で引き付け今夜、東京や神奈川、愛知など各地でテレビを見ていた子どもたちが気分が悪くなったり突然引き付けを起こすなどの同じような症状を訴えて救急車で病院に運ばれるケースが相次ぎ、各地の消防署などで症状や原因などを調べています。
各地の消防署などによりますと、きよう午後七時、全国各地でテレビを見ていた小学生などが相次いで気分が悪くなったり引き付けを起こすなどの症状を訴えて救急車で病院に運ばれました。
このうち東京・小平市にある昭和病院には、これまでに六人の小中学生が運ばれ、医師にょりますといずれもけいれん発作を起こしていましたがすぐに全員が回復して家に帰ったということです。
これまでにわかっただけで病院で手当てを受けた人数は▶東京が十五人▶愛知県が三十四人▶大阪府が四十二人▶川崎市が十ー人▶福岡市が二人▶千葉市が八人などとなっています。各地の消防署などのまとめによりますと、症状を起こした子どもたちはいずれも午後六時半から午後七時までテレビ東京の系列で放送された「ポケモン」を見ていて、番組の終わりのほうでさまざまな色の光が点滅するような場面を見ているうちに気分が悪くなったと話しているということです。
これについてテレビ東京は「現在、状況を調査しており、詳しいことはわかっていない」と話しています。
〈NHKニュース•二三時〇〇分〉

十二月十七日

事件の推移
●民放テレビのアニメ番組見て五百九十四人病院で手当て〈NHKニュース・七時〇〇分〉

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〈資料〉
●十二月十七日午前〇時テレビ東京広報室発表

十七日十時から「ポケットモンスター問題に関する緊急会議」を開き原因究明と今後の対応策などについて協議、以下二点について決定しました。
ー、外部の専門家(三名程度)に

13 PART-1▶ 「ポケモン事件」とメディア

●アニメ番組で体に異常
全国警察本部に実態調査指示
警察庁
〈NHKニュースニニ時〇〇分〉

●二十七都道府県で六百六十四人が病院で手当て
〈NHKニュース・ーニ時〇〇分〉

●さらに増え七百二十九人が病院で手当て
〈NHKニュース・ー九時〇〇分〉

●アニメ番組の「ポケモン」見て体に異常
小中学生ら五百六十人以上
十六日午後七時ごろ、テレビ東京系の人気アニメ番組「ポケットモンスタ—」を見ていた全国の子どもや大人が相次いで全身けいれんや目がかすむなどの症状を起こした。大阪市内では、五歳の女の子が一時的に意識不明の状態になるなど、十七日午前一時までに、二十七都道府県で五百六十大以上が異常を訴え、病院に運ばれるなどした。東京消防庁などによると、ほとんどが小、中学生だった。テレビ東京によると、この番組は同局を始め、大阪、愛知、岡山、北海道、福岡などのテレビ局で同日午後六時半から放送された。大気テレビゲームのキャラクタ—を主大公にしたアニメ番組で、毎週火曜日に三十分間放送されている。
ゲームボーイ版のポケモンには、強い光の刺激や点滅によるけいれんなどへの注意書きがあり、「ゲームをする前に医師と相談して下さい」などとある。〈朝日新聞・朝刊〉

●この日の番組タイトルは「電のうせんしポリゴン」。内容は主大公らがバーチャルリアリテイー(仮想現実)の世界に引き込まれるというもので、病院に運ばれた多くの子供たちは「『電のうせんしポリゴン』がコンピュータ—の中に入って戦う場面の中で、光がチカチカする所があり、それを見た直後に気分が悪くなった」と語っている。〈産経新聞・朝刊〉•子供たちの目をくぎづけにするアニメの画面が突然、大混乱を引き起こした。十六日夕、全国で五百大以上が病院に運び込まれた「ポケモン」パニック。「カメラのフラッシュのようなすごい光が出た」直後、「気分が悪い」と倒れる子が続出したという。ハイテクを駆使した大気番組に、何が起きたのか。電脳世代の子供たちも耐えられなかった映像技術の〃破壊力〃は、日本中に衝撃を広げた。〈毎日新聞・朝刊〉

●相次ぐーー九番で隣接市に救急隊応援/大阪市
大阪市消防局指令室では午後六時五十分ごろから救急車を要請するーー九番が相次いだ。「子供がテレビを見てけいれんを起こした。何とかしてくれ」。ポケモン騒ぎでの通報は二十三件だったが、一般のーー九番も

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ご参加頂いた「ポケットモンスター調査チーム」(仮称)を本日中に結成し、原因の究明にあたる。二、以後のこの件に関する作業報告については、本日十七日午後四時からテレビ東京本社内において記者会見でご報告いたします。緊急会議の参加者は編成などを含め、局内関係者三十名です。会議の冒頭、岡専務が「今回の件では、関係部署は隠し事をしないで、ありのままの報告をして欲しい」と発言し、事件発生から、現在までの経過報告と対策が協議されました。

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あり、七台の受付台は約十分間にわたって鳴りつ放しの状態。
指令室では通常七人体制のところを急きょ、三倍に人員を増やして対応、救急車の手配などに追われた。
また、十七件の通報を受けた堺市・高石市消防本部では、救急隊がすべて出払う状態になり、隣接する松原市などに応援を求めた。〈朝日新聞・朝刊【大阪】〉

●地方三十局で放送中止
この日の番組について、テレビ東京は、地方テレビ三十局での今後の放送の中止を決めた。来週放送分については、原因を究明してから決めるとしている。〈大阪読売新聞・朝刊〉

●テレビ東京によると、ポケモンのアニメは、テレビゲームのソフトと漫画雑誌の情報コーナーの人気に目を付けた同局映画部の発案で、同社と小学館プ口ダクションなどが共同製作し、今年四月から始まった。視聴率は、高い時で一八%にもなる。〈東京読売新聞・朝刊〉

●外国通信社も配信
AP通信やAFP通信など外国通信社は十六日夜、アニメ番組「ポケット・モンスタ—」を見ていた子供数百人が異常を訴えた事件を東京発で配信した。日本の通信社、テレビ報道を引用する形で、同番組が海外でも著名な任天堂のテレビゲームを元にしたアニメであることなどを伝えた。① 〈毎日新聞・朝刊〉

●テレビ東京に問い合わせ殺到
東京都港区虎ノ門のテレビ東京本社広報局には十六日夜、報道各社から問い合わせの電話が殺到し、残業していた二人の社員が「事実を確認中」「詳しいことは分からない」と対応に追われた。
間もなく同社の玄関前には他局のテレビ中継車が続々と集まり始め、ロビーは五十人近い報道陣でごった返した。
浦本紘広報部長は十七日午前零時すぎ、テレビ東京本社フロアで急きょ会見。「ポケットモンスターを見て、子どもさんの中に気分が悪くなり病院に運ばれた方がいることに驚いている」と、疲れた表情でメモを読み上げた。〈産経新聞・朝刊〉

●強い光の点滅シーン
十七日午前零時すぎに会見したテレビ東京の浦本紘・広報部長は、番組の終わり近くの強い光の点滅がきっかけになったようだと説明した。
搬送先の病院からの報告を総合したところ、午後六時五十一分すぎ、画面で青白い光と赤い光線が約十秒間、強く光るシーンがあり、それを見て、気分が悪くなったという症例が多かつたという。〈朝日新聞・朝刊〉

●ポケモン被害百三十人以上が入院救急搬送六百五十一人
テレビ東京系列で十六日夕放映された人気アニメ「ポケットモンスタ—(ポケモン)」を見ていた全国の子供たちが相次い

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①: やっぱり日本はわけがわからん、てな理解になるのが関の山なのだろう。

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でひきつけなどの発作を起こした問題で、救急車で病院へ搬送された患者は合計三十都道府県、六百五十一人に上っていたことが十七日午前までの自治省消防庁の集計で分かった。消防庁の集計によると、搬送患者は北海道から大分県まで全国にわたり、都道府県別で最も多かったのは神奈川県の七十七人。次いで大阪府七十六人▽東京都七十一人▽埼玉県七十人▽愛知県六十一人の順になっている。
一方、入院患者も大阪府、神奈川県、愛知県、東京都などが多く、それぞれ十数大以上が収容された。病院ではけいれんを抑える薬などを投与したが、患者の中には番組を見たことの記憶を失っている例もあったという。〈産経新聞・夕刊〉

●ビデオで見た子供の被害も
「ポケットモンスタ—」の十六日夜の放送後、ビデオに録画した番組を見た子供たちもけいれんを起こしていたことが、十七日わかった。
東京都の多摩地域だけでも四大いた。(2) 八王子市内では、十六日午後十一時ごろ、男子高校生(一七)と無職女性(ー九)が、それぞれ自宅で収録した番組を見ていてけいれんを起こし、救急車で病院に運ばれた。小金井市でも、同九時四十分ごろに小学生の男子(ー〇)が、また町田市でも同十一時四十五分に男子中学生(一四)が救急車で運ばれた。〈東京読売新聞・夕刊〉

●ビデオ・リサーチによると、十六日の「ポケットモンスタの視聴率は、関西ー〇・四%、関東一六・五%。〈毎日新聞・夕刊【大阪】〉

北でも南でも
●救急車で搬送、道内二十六人患者は十七日午前零時現在、少なくとも札幌、旭川など道内で二十六大(うち入院六大)、東京都内で五十七大(同十三大)など、全国一十三都道府県で計五百五十六大(同五十四大)に達している。
札幌市消防局によると、十六日夜、自宅でテレビ番組を見るなどしていた札幌市内の七歳から十六歳までの子供十一大が突然、全身をけいれんさせたり、ロからあわを噴いたりして、救急車で市内の病院に運ばれた。出動要請は番組がクライマックスを迎えた午後六時五十分から約三十分間に集中した。道内各地の消防本部によると、旭川で二人、小樽で四人、函館六人など三歳から十五歳までの計十五人が同様の症状で病院に運ばれた。〈北海道新聞・朝刊〉

●テレビ北海道
「キー局の対応に従う」
人気アニメ番組「ポケモン」を見て、病院に運ばれるなどした被害者数が広がる中、番組を放映したテレビ北海道(本社・札幌市中央区)にも十六日夜から十七日朝にかけ、視聴者からの電話が、十五、六件寄せられ

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②: 午後十一時頃ってことは、ビデォに録画しておいたものを見ていたわけで、十代に限らずいい大人でもこういう「ポケモン」ファンは結構多いらしい。

17 PART-1▶ 「ポケモン事件」とメディア

た。
同社編成企画局によると、「どんな病院に連れていったらいいか」などの問い合わせや「非常にショックを受けた」などの電話が目立った。今後の放映などについて、同局は「キー局のテレビ東京で今後の対応を検討しており、それに従う」と話している。〈北海道新聞・夕刊〉

●東北の各局も中止
宮城県内でポケモンを放送している東日本放送(本社仙台市)は、原因になったとされるタイトル「電のうせんしポリゴン」の放送を来年一月二十二日に予定していた。(3) しかし、今回の問題で放送中止を決定。今月二十四日のポケモン一時間スペシャルや、二十五日以降の放送分については、「テレビ東京から事情を聴いた上で決める」(編成部)という。
ポケモンを一週間遅れで放送している青森朝日放送(本社八戸市)は、二十三日の放送を中止する方向で検討中。視聴者からは「これまでの番組では問題がなかったのか」などの問い合わせが十六日夜から相次ぎ、十七日午前までに約八十件の電話が寄せられた。
岩手めんこいテレビ(本社盛岡市)、テレビユー山形(本社山形市)、秋田テレビ(本社秋田市)も当面、ポケモンの放送を中止する。福島テレビ(本社福島市)は来年一月に予定していた同タイトルの放送は中止するが、きよう十七日の番組は予定通り放送する。〈河北新報・朝刊〉

●【静岡】県内の被害者は十一人、入院なし
十六日夜、テレビアニメ「ポケモン」が原因と思われるけいれんや意識障害を訴えた県内の子供たちは十一人に達していることが十七日朝、静岡新聞社のまとめで分かった。子供たちの症状はいずれも軽く、入院した子供はなかった。
異状を訴えた子供が最も多かったのは浜松市内の六人で、内訳は七歳から十五歳までの男子三人、女子三人。県西部浜松医療センタ—や聖隸三方原病院に運ばれた。いずれも発症時間はポケモンを放映していた十六日午後六時五十三分からの五分間に集中した。同時間帯には七人の子供が救急車で運ばれたが、その後の調べでうち一人は異物を誤飲したため、と分かった。
テレビ東京やテレビ愛知で放映されたり、ケーブルテレビで流されたりした番組を見ていた子供たちとみられている。県内ではSBS静岡放送が毎週土曜日午後五時からテレビ東京より三カ月遅れてポケモンを放映している。SBS編成部は「問題となった回の番組の放映は中止する。そのほかの回の放映については、事実関係をよく調査した上で決定したい」と話している。〈静岡新聞•夕刊〉

●今夕予定の放送を中止岐阜放送
子供に人気のアニメ・ポケッ

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③: キー局と地方局との放映回のズレは数週間から、時に半年近くになる場合があるようだ。

トモンスタ—を-日遅れの十七日夕方に放送予定だった岐阜放送(岐阜市今小町)は同日朝、放送を急きょ中止することを決めた。同社編成部によると「多くの子供が救急車で運ばれたり、入院したなどの症状が出ており、社会的な影響を考え放映中止を決めた」としている。〈中日新聞・夕刊〉

●愛知で六十一人病院搬送
愛知県消防防災対策室の十七日午前の集計によると、県内で病院に搬送されたのは名古屋市十四人岡崎市六人、豊橋市五人など二十二消防本部で四歳から二十八歳まで計六十一人だった。このうち二十二人が入院した。このほか救急車が到着した時には既に回復し、搬送しなかった人が四人あった。同室では「現段階では重度の被害者の報告はない」というが、今回は特殊なケースであるため、搬送後の容体などの追跡調査を各消防本部などに指示した。
岐阜県消防防災課の十七日午前のまとめによると、県内で救急搬送されたのは岐阜市四人、各務原市三人など計十人だった。
搬送された子どもの年齢は十ー十七歳の男女。約半数が軽症で、入院したのは四人だった。同県教委学校指導課は「子供たちの気分が悪くなった原因がはっきりしていないので、一方的に番組を見るなという形にはならないように調査を進めたい」と話している。
また、三重県内では同県消防防災課の調べで、桑名、亀山、久居、松阪、鈴鹿市などでハ歳から十九歳までの計七人がけいれんなどの発作に襲われ、救急病院に運ばれた。〈中日新聞・夕刊〉

●テレビ愛知
問い合わせ百十二件
【放映存続は白紙】
テレビ愛知広報部によると、「ポケットモンスタ—」は毎回二〇%台前半の視聴率があり、十六日の番組の視聴率はーニ・三%。同日は事故の報道があった午後九時ごろから電話での問い合わせが相次ぎ、総数は百十二件に達した。
しかし、夜間の局員が少数のため、対応できたのはこのうち二十件程度。うち七件が、入院した小五女子の親など子供たちに異常が起きた家庭からだった。
十七日朝は、抗議の電話はなく、逆に「放送をやめないでほしい」という趣旨の電話が十件余りあったという。
放映の存続については、「人気番組なので、続けたい意向はあるが、事故の原因が分かるまで白紙の状態」としている。〈中日新聞•夕刊〉

●ニュースでも被害?
愛知県尾張旭市消防本部に入った連絡によると、十六日午後十一時半ごろ、尾張旭市に住む二十四歳の女性から「ポケットモンスター関連のニュース番組を見て気分が悪くなった」とーー九番通報があった。(4)

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④: こういう〃できごと〃にかぶれやすい人というのはいつの時代もいるもんです。

19 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

女性は名古屋市内の病院に運ばれて治療を受けたが症状は軽く入院はしなかった。〈中日新聞・朝刊〉

●三重テレビも中止
三重テレビ放送(津市渋見町)は、十七日午後六時から予定していたポケットモンスタ—の放送を中止して、急きょスポーツ番組に差し替えることにした。
同社には事故のあった十六日夜から十七日午前までに、事故を知った父母らから「問題の番組は放送するのか」「今後、番組はどうなるのか」といった電話が二、三十本かかった。〈中日新聞•夕刊〉

●RKC高知放送は放送中止
視聴者が救急車で病院に運ばれる騒ぎが相次いだ「ポケモン」についてRKC高知放送は十七日、一月八日放送予定だった問題の「電のうせんしポリゴン」の放送中止を決めた。RKC高知放送は「番組の存続について現在テレビ東京で検討しており、もし『ポケモン』が打ち切りになれば今後は別の番組に差し替える。番組の継続が決まっても問題の放送分は飛ばし、一月八日には一週繰り上げて放送する」と話している。〈高知新聞・夕刊〉

●【福岡】脳波など精密検査県内の病院
「ポケモン」を見た多くの子供たちが、けいれんや引きつけなどを起こした騒動から一夜明けた十七日午前、患者が搬送された福岡県内の病院では、患者の治療を続けたり、昨夜退院した患者を再び呼んで脳波の精密検査をしたりなど対応に追われた。
十二人の子供が運び込まれ、全員が同日未明までに退院した春日市の福岡徳洲会病院では、朝から脳波検査を実施。太宰府市の母親(三七)は、娘(六つ)を連れてきた。母親は「昨日は夕食の支度中、ポケモンを見ていた娘が〃目が見えない〃と突然泣き出した。その後も〃頭が割れる〃と訴え続けるのでかかりつけの小児科を通して搬送してもらいました」といい、心配そうな表情で順番を待っていた。
福岡市南区の福岡赤十字病院では、二人の女子中学生が入院したまま。けいれんの症状は治まって順調に回復しているというが、担当医が検査を始めた。浮羽郡内の病院に運ばれた女子小学生も、回復したものの入院を続けている。〈西日本新聞・朝刊〉

●後遺症など情報収集 TVQ
九州地区で「ポケモン」を放映したテレビ東京系のTVQ(福岡市博多区)には十七日朝までに、福岡県内を中心に二十六件の問い合わせが相次いだ。同社は十六日夜から、東京支社の社員をテレビ東京に派遣して情報収集する一方、独自に福岡市内の専門医師らに原因や後遺症の有無を聞くなど対応に追われている。〈西日本新聞・朝刊〉

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●相次いで放映中止
問題となったアニメ番組「ポケモン」の第三十八話「でんのうせんしポリゴン」の放映中止が、全国で相次いでおり、九州でも十七日、テレビ熊本(熊本市)、鹿児島放送(鹿児島市)が中止を決めた。テレビ宮崎(宮崎市)は三十八話ではないが、十八日放映分を中止する。〈西日本新聞・朝刊〉

そのとき……
●ピカピカ光って…
「目の前真つ白」
東大病院(東京都文京区)には、番組放映直後から、男子二人女子二人が相次いで救急車で運ばれた。いずれもけいれん、ひきつけなどの症状。病院に運ばれるまでに意識は回復したという。
午後十一時五十分ごろには、ビデオでポケモンを見たという同区内の女児(ーニ)が母親に付き添われて救急車で到着。母親によると、ビデオを見た後、気持ちが悪いと言い出し、その後意識を失ったという。母親は「娘が倒れた後でニュースを見てびっくりしてーー九番通報した。公共の電波でこんなことが起こるなんて」と声を震わせた。
番組を見ていた千葉県野田市山崎の市立南部中学三年、田村一平君(一五)の母親によると、一平君は突然倒れ、唇が紫色となり、目を閉じたままいびきをかき始めたという。驚いた母親がーー九番通報した。京都府木津町の女児(九つ)の母親(三二)によると、女児はテレビを見ている途中に突然立ち上がって倒れ、口から泡を吹いた。倒れた後は意識がなく、体が硬直していた。病院に運ばれて間もなく落ち着いたが、女児は「映像が目に焼き付いている」とおびえた。
千葉県君津市の小学六年の女児(ーー)は急に横向きに倒れ、病院に運ばれた。症状は軽く、夜のうちに帰宅できたが、母親(三五)は「娘が好きでいつも見ていた番組。もし原因だとしたら今後は見るのを控えさせなければ」と話した。午後八時すぎ、大阪市内の救命救急センタ—に運び込まれた女児は、一時は意識混濁状態になった。ぐったりと担架に横たわった女児は目の焦点が合わず、少しも動かなかった。当直医によると、当初は人工呼吸器をつけて治療。「一時間ほどは命の危険もあった」という。〈産経新聞・朝刊〉

●「まるで乗り物酔い」
「いつもと違った」
自宅で一人でテレビを見ていた埼玉県桶川市の中学二年、小針康弘君(一四)によると、午後六時四十五分ごろ、コンピュ—夕—ウィルスを排除するワクチンプログラムが作動する場面で光が激しく点滅。数秒程度だったが、急に頭が痛くなり、目がチカチカし、気分が悪くなった。症状は四十五分ぐらいでおさまった。小針君は「まるで乗

21 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

り物酔いみたいな感じでした。テレビのせいだとは思わなかった」と恐ろしそうに語った。千葉県松戸市の主婦(三八)は「めまいがした。エレベーターに乗った時のような気持ちの悪さだった。子供は『僕はこんな画面は見慣れているから大丈夫』と言っていたが、いつものポケモンとは確かに違った」と証言する。
東京都保谷市の主婦(三四)は「モノトーンの背景に細かな線が縦、横、斜めに走り、それが奥行きを出している不思議な画面だった」と話した。〈毎日新聞•朝刊〉

●イスごと倒れて失神
「イスごとひっくり返り、けいれんを始めた」「白目をむいて、急に意識がなくなった」——。東京・府中市の都立府中病院では、午後七時過ぎから多摩地域などから、同様の症状とみられる計六人の子供が運び込まれた。
九歳から十五歳の男女が三人ずつで、いずれも全身けいれんの症状を起こし、何人かはおう吐していたが、病院到着時には小康状態だったという。来院して手当を受けた結果、同八時半ごろまでに全員が帰宅した。同病院によると、ほとんどの子供が、派手な色の光が画面にちらちらした場面で、意識を失った。同病院でも、テレビゲー厶でひきつけを起こす症状と同様とみている。〈東京読売新聞・朝刊〉

●番組もう見ないかも前日夜に名古屋市天白区内の自宅でけいれんを起こし、同区内の病院に運び込まれた小学校六年の男子児童(ー二)は十七日、「テレビを見ていて、突然、意識がなくなった。気が付いたら、病院の中だった」と振り返った。その間のことについては「何も覚えていない」。ポケモンは学校の友人のほとんどが見る人気番組で毎週、妹と熱心に見ていたという。男児は「こんな体験は初めて。これから番組を見るかどうか分からない」と青ざめた表情で話していた。
また同じ病院に入院した同区内の中学校二年の女子(一三)は担当医に対し「目がチカチカしてテレビの画面が消えたり見えたりする状態になり、おかしいと思っているうちに、意識が無くなっていた」と語った。病院に到着したときには、意識は戻っていたが、しばらく吐き気が続いていたという。
二人は、脳波検査などを受けた後、十七日中にも退院する見込み。〈中日新聞・夕刊〉

テレビ東京の
動き
●「色彩フラッシュ部分が原因?」番組後半の四、五秒テレビ東京(東京都港区虎ノ門)では、この日午前、浦本鉱広報部長(五三)が報道陣との対応の中で、「番組後半に四、五秒程度あった色彩のフラッシュ部分が原因らしい」と、原因についての見解を示した。

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同社では、この日午前十時から「ポケットモンスタ1問題に関する緊急会議」を開いた。この席で精神科医や弁護士を含めた調査チー厶(計三十人)を設置し、詳しい原因究明に当たることを決めた。
浦本部長によると、問題になった番組については、事前に制作プロデューサーがチェツクしており、特に問題はなかったという。また、サブリミナル(潜在意識下に訴える技術)的な手法は「一切していない」と断言した。〈産経新聞・夕刊〉

●特殊な画像処理ない
浦本紘広報部長は十七日午前、番組担当プロデューサーに確認した話として、「十六日の番組はこれまでのシリーズ三十七回分と同様の手法で制作しており、今回だけ特殊な画像処理を施したなどということはない。現段階では番組内容に問題はなかったと判断している」と語った。〈朝日新聞・夕刊〉

●テレビ東京は十七日午前六時十五分からのニュース番組「ニユースウェーフ615」の中で、「ポケットモンスタ—を見て、気分が悪くなって病院に搬送されたお子さんがたくさんいたことについては、申し訳なく思っています」との浦本紘広報部長の謝罪を放送した。このほか、経過説明、専門家の意見を含め約五分間ずつ二度にわたって同じ放送を繰り返した。〈東京読売新聞・夕刊〉

視聴者の声
●「こんな番組やめろ」
「子どもは楽しみに」
テレビ東京に電話続々
テレビ番組「ポケットモンス夕—」を放送しているテレビ東京には十七日朝から、視聴者からの問い合わせや抗議が相次いだ。
児島尚文視聴者センタ—部長によると、「本当に番組が原因なのか」といった問い合わせのほかに「こういう番組はやめろ」などという抗議の声が親たちからあった。一方で、「子どもは楽しみにしている。番組をやめないで」といった声も寄せられた。〈朝日新聞・夕刊〉

●テレビ大阪に
「番組やめないで」の声も
テレビ大阪では、昨夜から泊まり込んだ編成局や広報部の社員らが、早朝から苦情などの電話対応に追われた。子供が症状を訴えた親から「責任をどうとってくれる」などの声が寄せられる一方、「番組はやめないで欲しい」との内容もあったという。〈大阪読売新聞・夕刊〉

ネットの中では
●問題の「せん光」シーン、パソコン通信に
ポケモンの問題のシーンがインタ—ネツト上で流されていることが十七日、分かった。テレビで放映されたものと同様、赤色と青色のせん光が約〇・五秒ずつ映し出されている。掲示さ

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⑤: 「サブリミナル」が技法として実際に効果がないことが証明されているにもかかわらず、こういう映像がらみの事件になると必ず「サブリミナル」がささやかれる。目の前の映像の背後に何か見えない意思が働いているのかも、という想像力は根深く広まっているらしい。
⑥: 「子どもが楽しみにしている」から「やめないで」という理屈は、「子どもの楽しみ」が至上のものになっていることを反映している。
報道の文法としても、「子ども」をタテにすればオッケー、という約束事がすでにできているようだ。

23 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

れているのはパソコンマニア向けのインタ—ネットのホームページ。投稿者は「ピカピカ」となっている。〈毎日新聞•夕刊〉

●パソコン通信に
「ビデオ譲って」
パソコン通信の掲示板には、十六日に放送されたポケモンのビデオの譲渡に関する情報が次々掲載されている。大手ニフティ・サーブの掲示板には、「十六日放送分のポケモンをお持ちの方、メール下さい」「問題の『ポケモン』ダビングして下さい。よろしくお願いします」など、ビデオを求める声が多く寄せられている。逆に「余ったビデオテープがあります。一本三千円からお譲りいたします」「ダビングしてビデオを譲ります」など買い取りを求める声もある。
十七日午前中にニフティ・サーブで確認できたものだけでも十件近く、「ポケモンパニック」がテレビのニュースで流され始めた十六日深夜以降、書き込まれた。〈毎日新聞・夕刊【大阪】〉

波紋
●ポケモン被害
任天堂など関連株急落
「ポケットモンスタ—」を見た子供たちが病院に運ばれるなどした事件に関連し、十七日午前の東京株式市場では、ゲーム機を製造している任天堂をはじめ関連株が急落した。
任天堂は朝方から売り気配が続いた後、前日比六百円安のー万二千百円で値がつき、映画化を予定している東宝も一時四百円安の一万四千円まで値下がりした。
ほかにも、キャラクターを使った菓子を出している明治製菓が安い。〈産経新聞•夕刊〉

●がん具業界も影響波及懸念
「ポケモン」騒動の波紋はクリスマス商戦真っただ中のおもちや、ゲームソフト業界にも広がった。
福岡市内の同業界によると、関連商品はピカチュウの等身大ぬいぐるみやゲームソフト、文房具など六百種以上にのぼり、いずれも「常に売り切れ状態」の売れ筋。ゲームソフトなどを取り扱っているベスト電器関連会社のベストパツクサービスは「テレビの事故なのでソフトの売れ行きに影響が出るとは思わない」としながらも「この事故でポケモンそのものに悪いイメージが広がると影響は出る」と心配する。
同市早良区のおもちや販売、アサヒトーイ原店では、社員に「お客にはポケモンに限らずテレビゲームはほどほどにしてくださいと伝えて」と通達した。一方、県内に三店舗チェーン展開している大手の「日本トイザらス」は「アニメの問題であり関係ない」と冷静だった。〈西日本新聞•朝刊〉

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⑦: ネット上にこのテの映像が貼り付けられるのはもう当然のお約束。それを今さら驚いてみせる新聞記者自身が、ネツトをのぞいてネタ拾いしてたりする。ネットはあやしい無法地帯である(まあ、おおむねそうなのだが)という印象を与えるこういう報道の文法こそ、「報道」゠エラいという権威主義に依拠している。だから、ネツトで情け容赦なくッツコまれるんだけどさ。
⑧: 「ポケモン」商売の勧進元のりクルートや小学館なんかはどうだったんだろ。やっぱり下がったんだろうか。

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関係者の対応
●「携帯ゲーム機アニメとは別」/任天堂
任天堂(本社・京都市)のゲームソフト「ポケットモンスター」のテレビ番組を見た子供たちがひきつけなどの症状を起こしたことについて、同社の今西紘史取締役は十六日夜、「携帯用ゲーム機のゲームボーイ向けソフトである、ポケットモンス夕ーはモノクロ液晶画面を使用しており、カラーアニメとは全く異なった映像。これまでにそういう事例はない」と述ベ、ゲーム自体には問題がないことを強調した。(9)
さらに今西取締役は「テレビ東京からは何も報告は聞いていないが、当社は番組のスポンサーでもあるので、問題になった画面がどのような映像だったのか詳しく聞いてみたい」と話し、事情を聞く意向を示した。〈大阪読売新聞・朝刊〉

●「アニメ番組の作り方の問題」【任天堂社長】
任天堂の山内溥社長は十七日朝、同社の人気ゲームソフト「ポケットモンスタ—」(通称ポケモン)を題材にしたテレビ東京のアニメ番組を見た子供らが相次いで倒れ、病院に運ばれたことについて、「(任天堂の)ポケモンはゲーム機に白黒画面で表示されるもので、テレビ東京の番組とは何の関係もない」と説明。その上で、「今回の事態は、あくまでテレビ東京の(アニメの)作り方の問題だ」と語り、責任があるとすれば、テレビ東京にあるとの認識を示した。(10) ただ、今回の一件がゲーム業界のクリスマス商戦に与える影響に関しては、「どうなるかは分からない」と述べ、テレビゲーム商品の売れ行きに波及することに懸念を示した。〈中日新聞•夕刊〉

●テレビ東京やアニメ製作の小学館プロダクション、任天堂など「ポケットモンスタ—」のキヤラクターにかかわる関係各社は十七日午後、対応を協議する。いずれもテレビアニメの今後の放送のほか、ゲームや来年夏の公開に向けて製作を進めている劇場用アニメ映画などに関係しており、対策を話し合う。〈東京読売新聞・朝刊〉

●同番組のプロデューサー、岩田圭介・映画部副部長は「確かにカメラのフラッシュが連続するようなシーンが続いたが、なぜ発作が起きるのかは専門家に聞いてみないと」と首をひねつていた。〈東京読売新聞・朝刊〉

●製作会社「緊迫感出すため赤、青を点滅させた」
「ポケットモンスタ—」のアニメを製作する小学館フロダクション(東京都千代田区神田小川町)の紀伊高明•TV企画部次長は十七日朝、「五百人以上という視聴者に甚大な症状が出たことについて、重く受け止めている」とコメントした。発作の

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⑨: テレビで起こった事件だからゲ ー厶とは関係ない、と言い切るあ たり、さすが商売人。
⑩: さらにこれは徹底的に商売人。 自分の商売に影響がないように手 を打つ発言のわかりやすさよ。

25 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

ていることに対して、紀伊次長は「ミサイルが襲ってくる緊張感、緊迫感を出すために背景を赤、青で点滅させた。これまでの放送分でも何回か使っており、なぜ今回に限って視聴者の発作を招いたか、全くわからない」と話した。
同社では、問題のシーンに至るまでの物語、音楽、効果音を含めて、心理学者などに相談するなどしたうえで、早急に原因究明をはかりたいとしている。〈東京読売新聞・夕刊〉

医療関係者はこう考える

◎近くでテレビ見せぬように【名古屋大学医学部の渡辺ー功教授(小児科)の話】
今回の原因、テレビとの因果関係は分からないが、チカチカと点滅する光やしま模様などの図形に過敏に反応して、発作を起こす反射性のてんかんは古くから知られている。二、三十年前には、スイツチを入れたばかりのテレビの光に反応する「テレビてんかん」が問題化した。最近は、家庭用テレビゲーム機で遊んでいる最中に発作を起こす子供が相次ぎ、注目を集め、世界的に研究が行われている。国内でも、断続的な光や図形などを見せたり、家庭用テレビゲ—ム機を見てもらい、脳波の異常などを調べる共同研究が進んでいる。小児期に多く、体質、素因も考えられるが、詳しい原因などはまだ分からない部分も少なくない。治療法では、抗てんかん薬による治療もあるが、テレビを近くで見せないなど、原因を取り除くことが大切だ。〈朝日新聞・朝刊【名古屋】〉

◎【松本和雄・関西学院大文学部教授(精神医学)の話】
「断定はできないが、番組内容によって引き起こされたのではないか。幼児期の場合、感情が高ぶると、憤怒けいれんと呼ばれる症状がよくみられ、今回もそうではないかと思う。ほかに強い光や色の刺激で誘発されるケースも考えられるが、全国的に多発している状況から、今回はあてはまらないだろう」〈大阪読売新聞・朝刊〉

◎光過敏性てんかんとは考えにくい
テレビ画面が症状を誘発する例としては、テレビゲームや信号の点滅など光のちらつきにょって発作を起こす「光過敏性てんかん」が知られている。しかし、国立小児病院(東京都世田谷区)の二瓶健次神経科医長は「光過敏性てんかんはもともと素因のある人が発症する。今回は多数の患者が出ており、てんかんとは考えにくい」と話す。二瓶医長によると、ディスコの中で頭がぼんやりしたりするように光のちらつきで気分が悪くなる例は大人でも見られる。「テレビを見て気分が悪くなった」と訴えた子を診察したこともある。しかし、いずれもまれな例で「テレビ画面で今回のように大量の患者が出るとは考えにくい」と話している。〈毎日

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⑪: 今回は、小児科、脳神経科、精神医学といった分野のお医者さんたちが「専門家」としてコメントを求められている。精神医学系の人ほど、社会病理的な脈絡を気にしている傾向があるようだ。テレビ画面でこんなに大量の患者が出るとは考えにくい、というコメン卜は、テレビというメディアの視聴環境がこれまでの常識とずれはじめていることを暗示している。

新聞・朝刊〉

◎国立療養所静岡東病院の清野昌一・名誉院長は「光過敏性体質の子供が、一秒間に十五—二十回点滅したり、赤い色などの、視覚的に有害な刺激を長時間凝視し続けたための反応」と見ている。
発作への対策について、清野名誉院長は、「有害な光刺激からニメートルほど離れて見るとか、明かりを消した暗い部屋で長時間見続けないことなどが有効だろう。以前にもひきつけを起こした経験がある子供さんの場合、脳波検査のできる病院に行くことを勧めたい」と話している。〈東京読売新聞・夕刊〉

◎井上健•大阪大医学部助教授(精神医学)は「感受性が高く、催眠術にかかりやすい子どもに、偶発的に起こったとみられ、一時的なものなので心配する必要はない」としたうえで「子どもにとってポケモンは身近な存在だった。そうした素地があったため優れた映像技術に入り込んでしまったのではないか。病気というよりは、一種の社会病理現象だと思う。テレビを見るのを禁じる必要はないが、友達と公園に行くなど、テレビやテレビゲーム以外の多様性のある遊びをさせるのがいい」とアドバイスする。〈毎日新聞・夕刊【大阪】〉

◎刺激避けるだけで予防山内俊雄・埼玉医大教授(精神医学)は「これまでにも似たような番組は存在したはずで、なぜ今回だけこれほど多数の発作につながったかは不明」としながらも、光誘発発作だとすれば特定の刺激を避けるだけで予防できるため「日本でも番組作りなどに向けた指針をまとめる必要が高まるかもしれない」と話している。〈産経新聞・夕刊〉

◎子供への影響は大きいテレビやゲーム機などが子供の肉体に及ぼす悪影響を指摘してきた真弓定夫医師(小児科)は「今冋は五百人以上が一気に発作を起こしたので問題が表面化したが、二、三人単位で同じような症状を起こしている例は常にあるのでは」と懸念している。「病院に運び込まれたのはほとんどが子供で、一緒に番組を見ていた親は大丈夫だったように、同じ刺激を受けても子供への影響ははるかに大きい。今回は光だったが、テレビから出る電磁波なども健康に悪影響を与えるだけに、親はテレビを見せる時間を減らしたり、まめに電源を切ることで子供を守るべきだ」と警告している。〈産経新聞・夕刊〉

◎大脳皮質に刺激
【桐野高明•東大医学部付属病院脳神経外科教授】
いろいろな色をパタパタ見せるなどすると、通常と違う異なる効果が生まれ、視神経を経て大脳皮質に刺激が伝わる。大部分の人は感じないが、それに敏感に反応する人が一部にいる。衝撃は一時的なもので、とりか

27 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

えしのつかない傷を脳に残すことはない。なぜ起こるのか、メカニズムはまだ解明されていない。〈毎日新聞・朝刊〉

◎光過敏性てんかんか【「テレビゲームと癒(いや)し」という著作がある精神科医の香山リカさんの話】
目がチカチカして倒れるということは、光過敏性てんかんや集団ヒステリーの可能性が考えられる。光過敏性てんかんの場合、ある調査では、てんかんを持つ人の四パーセントに起こるといわれている。ただ、光過敏性てんかんは一回光るというよりは、何回か光る場合にしか起こらない。
また、集団ヒステリーも、ー緒にいる人の間で普通起こるもので考えにくいが、ゲーマー同士でやりとりできるポケモンのようにコミュニケーション性が高いものは、別々にテレビを見ていても一緒にいるような感覚に襲われることもあるかもしれない。ただ、いずれにしても余程子供たちが夢中になってテレビを見ていないと考えられない。〈河北新報・朝刊〉

◎関亨・桐生看護大学教授(小児神経科)は「テレビやいろいろな色のついた強い光をあびると、脳波に光の刺激がでて、ひきつけを起こす人がいることは以前から知られていた。てんかんは発作を繰り返すものなので、てんかんでなくてもひきっけを起こすことはある。今回の事件はひきつけを起こしたというべきだ。しかし、今回の発生数の多さはそれだけが原因とは考えにくい。テレビを長くみていた疲労など心理的なものを含め、いくつかの要因が考えられる」と話した。〈毎日新聞・夕刊〉

◎「私は警告していた」
【仙台市内の神経科医、高橋剛夫(たけお)八乙女クリニツク院長の話】
「過去三十年の診療経験からいうと、赤い光のちらつきや、赤と主冃の強いコントラスト、幾何学的な図形の点滅などは脳にとって悪い刺激で、今回の事態の原因になった可能性がある」という。
けいれんを起こしやすい体質の人、例えば熱でけいれんした経験のある人などの場合、こうした刺激が脳の視覚野に影響し、吐き気、頭痛、目がちかちかするなど、自律神経の異常を引き起こすことがある。重い場合にはさらに、けいれんや意識障害につながることも考えられるという。
高橋院長は「テレビの影響でこうした症状が出るかもしれないと心配していた。私は過去に似た例を学会発表し、警告を発してきた」と話している。〈毎日新聞•夕刊〉

◎【野田正彰・京都造形芸術大教授(精神病理学)の話】
ビデオで番組を実際に見たが、光の刺激が原因で子供たちが意識障害やもうろうとした状態になったのだと思う。(12) 画面を

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⑫: 精神病理学という肩書の割には、内容はただの感想という、コメント屋的コメントの典型。この人、某社のノンフィクション大賞の審査員なんかもやってたはずだけど、単なる世渡り上手ってだけかも。

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見ていると、光がこちらに向かって来る場面が多く、それも、チラチラと揺れるうえ、繰り返し続けられている。子供は大人に比べて光の刺激に弱く、番組に集中しているため目をそらしたりしないので、このような障害を起こしやすい面がある。〈毎日新聞・朝刊〉

類似事件
●テレビゲーム機でも過去に突然発作の例子供が突然発作を起こすケースは、過去にテレビゲーム機の光の刺激での発作があった。ー九八九年、福岡市内で七歳から十二歳の子供五人がテレビゲームで遊んでいるうちに頭痛や全身を硬直させる症状が起きた。
また、海外では九一年に米ミシガン州で親子がテレビゲーム中に発作を起こした。英国で十四歳の少年がテレビゲーム中に発作を起こすなどのケースが相次ぎ、九三年に英貿易産業省が
調査に乗り出した。こうしたことからゲームメー力ーが警告表示をゲー厶機に付けている。〈朝日新聞•朝刊〉

●専門家の間では、テレビゲームで遊んでいる最中の子供が、全身けいれんなどの症状を起こす例は少なくないと言われている。強い光や光のちらっきなどの刺激が発作の誘因となるとみられており、「光過敏性てんかん」「光原性てんかん」などと呼ばれ、海外でも社会問題化しているという。〈東京読売新聞・朝刊〉

●NHKのアニメでも
今年三月
NHKのアニメ番組を見た静岡県内の子ども四人が今年三月、発作を起こして病院に運ばれていたことがわかった。NHK番組制作局では「視覚的刺激の強い演出は避けるように」と制作現場に指示したという。NHKによると、三月下旬、教育テレビで放送されたアニメ
「YAT!安心宇宙旅行」。その後、静岡県内の病院からNHKに「子供四人が番組をみて発作を起こし運び込まれた」と連絡があった。いずれも手足のけいれんなどで、一人は入院したという。
NHKで番組内容を検証したところ、宇宙船内部で数秒間ストロボの光が点滅する場面があった。NHK広報室は「番組との因果関係は分からないが、安全策を取った」としている。〈朝日新聞•夕刊〉

●「テレビ誘発発作」
米では症例
【ニューヨーク十六日】原因はまだわかっていないが、米国ではー九五〇年代から、テレビ番組を見ていた子供たちが同様の症状を起こす報告例があり、「テレビ誘発発作」(TIS)として知られている。九三年に、テレビゲーム機を操作して発作を起こした患者を対象に、調査を行ったワシントン大学(ワシントン州)のウィ

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⑬: 今回の事件でNHKの対応が早かったのは、こういう前例があったからってことらしい。

29 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

リアム・グラフ助教授(小児神経学)は「テレビ画面の性能が現在より劣っていた五〇、六〇年代の方が事例は多かった。今回のように大量の患者が一度に発生したということは聞いたことがないが、五千人に一人の子どもは光に過敏といえる。命にかかわる問題ではないので、親はパニックを起こさないでほしい」と指摘する。調査した患者はフラッシュライトのような光の刺激や画面のちらつきに特に敏感だったという。
米国の専門家は、光の刺激に弱い子供の親に、テレビによる発作を防ぐ方策として、テレビゲーム機の場合と同様に(こ部屋を明るくする(二)画面から出来るだけ離れる(三)長時間の視聴は避ける、などを勧めている。〈朝日新聞・夕刊〉

今後への対応
●テレビ東京が
緊急調査委員会設置
テレビ東京は十七日、未明から関係部署の担当者らがあわただしく出社し、朝には緊急調査委員会が設置された。午前十時からは岡哲男専務を長とする緊急会議を開催、対応を協議した。また、同日朝から、「ポケモン」のキャラクタ—紹介などの子供向け情報番組「おはスタ」(月ー金曜・午前七時五分)で、「ポケモン」関連情報を当分の間、扱わない方針を決めた。〈毎日新聞・夕刊【大阪】〉

●今春から日本てんかん学会、発作事象を調査中
日本てんかん学会は今春「テレビゲーム誘発発作委員会」を設置し、発作の起きる仕組みや発作の引き金となる事象について調査を始めた。三年間をめどにまとめたいとしている。「てんかんセンター」と呼ばれる国立療養所静岡東病院の井上有史・臨床研究部長によると、日本には光過敏性てんかんの患者が約ー万人おり、患者数はほぼ横ばいだ。(14) テレビゲームで子供がてんかん発作を起こして騒ぎになった英国では、専門医がテレビ番組の視覚刺激をチェツクし、光の強度や点滅周期などを適正にするよう、勧告する制度があるという。
井上部長は「日本にも英国同様の勧告制度が必要ではないか」と訴えている。〈毎日新聞・夕刊〉

関係省庁の動き
●通産相が
映像ソフト業界に注意通達民放テレビのアニメ番組「ポケットモンスタ—」を見ていた子どもたちに気分が悪くなるなどの症状が出た問題で、通産省はきょう、テレビ以外のビデオやゲームソフトでも同じような問題が起こるおそれがあるとしてソフトを制作する業界団体に対し、映像の取り扱いに十分注意するよう求める通達を出しました。
通達は、「日本映像ソフト協会」や「コンピュータエンタ—テインメントソフトウェア協

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⑭:「光過敏性てんかん」という言葉は今回、かなりポピュラーなものになった。

会」など、ビデオやゲームソフ卜を制作する企業で作っている十ーの団体を対象に出されたものです。
このなかで通産省は、アニメ番組を見ていた子どもたちに気分が悪くなるなどの症状が出た原因はまだはっきりしないとしながらも、テレビ以外のビデオやゲームソフトでも同じような問題が起こるおそれがあるとしています。
このため、視覚的に強い刺激を与える映像を使う際には、今回のような問題が起きないよう十分注意することを求めています。〈NHKニュース・ー九時〇〇分〉

●通産省が対策検討へ
英国ではテレビゲーム中の子供が突然発作を起こす事例が報告され、貿易産業省は調査に乗り出しているが、通産省では、テレビゲー厶機の担当所管がはっきり決められていない。電化製品の安全性などについては製品安全課が対応することになっているが、少なくともこの二年ほどは、国内でテレビゲームで子供がひきつけを起こしたなどの事故の報告は入っていない。(15)
英国の事故についても情報は入手していないという。だが通産省では、今回の事件を重く見て、何かの対策が立てられないかを検討したいという。古賀洋一・製品安全課長は「テレビの報道で見た感じでは、画面から光が出たのが原因のようで、製品の安全性に問題があるのかどうか分からない。取りあえず調べてみないと何とも言えない」と話している。〈朝日新聞・朝刊〉

●郵政省、
テレビ東京から午後聴取
郵政省は十七日午後、テレビ東京から事実関係について事情を聞く。同省放送行政局は「これだけの被害が出たのだから極めて重大な事態」と受け止めており、この日午前のテレビ東京の緊急会議の結果報告を受け、今後の対応などについても協議していく。〈東京読売新聞・朝刊〉

●厚生省は十七日朝から、厚生科学課が窓口となり、被害状況の調査など情報収集に追われた。職員の一人は「保健衛生の管理という点で薬や食品による被害を把握するルートはあるが、今回のケースでは手探りの状態だ。しかし、数百人の被害が出ているとなれば無視はできない。ある程度の状況が分かれば、通産省など関係省庁とも協議したい」と話した。
同課は、被害者数の把握と、さらに画面中の何がめまいやけいれんの原因になったかなどを究明する。〈毎日新聞・夕刊〉

●警察庁は十七日、全国の都道府県警察に「ポケモン」被害の実態を把握するように指示した。〈東京読売新聞・朝刊〉

●文部省青少年教育課などでは「子供たちの問題なので関心をもっているが、子供の心に有害

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⑮: 通産省、厚生省、文部省、警察庁あたりが一応「関係省庁」ということらしい。でも、通産省でテレビゲーム機の担当所管が決まっていないってのは、意外だった。やっぱり、所管がはっきりしないと目の前の問題にも対応できないってことかいな。

というより、テレビの画面にょって健康を損ねた事案で、今のところすぐに具体的対策はない」とし対応などを検討している。〈産経新聞•夕刊〉

●東京都教育庁では十七日午前、ポケモンを見て気分が悪くなった子供たちの実態調査を開始した。同庁によると、親などから「気分が悪くなり入院している」などと学校側に連絡があったケースや、担任などに「番組を見て具合が悪くなった」などの報告があった人数を調査するという。〈毎日新聞•夕刊〉

事件を読む
◎親子でハマれる番組
【オタク文化評論家•岡田斗司夫さんの話】
ひとつのキャラクタ—にクラス全員、男女とも夢中になるという意味で、ポケモンブームは十年来なかったことだ。セーラ—ムーンもミニ四駆もかなわない。しかもその集中ぶりがすごい。今の子は、テレビがちよっとでもつまらないとチャンネルを変えるが、ポケモンだけはかじりつくように見ているし、登場する百五十一匹のモンスターの名前すべてを織り込んだラップ調の歌は九九より先に覚える。親子ともどもハマれる数少ないアニメでもある。(16) キャラク夕—はかわいいし、筋書きはゲ—ムで描き切れない部分を補完するように巧妙につくられている。小学館や任天堂は「鉄腕アトム」や「ドラえもん」以上のものを手に入れた、百年はこれで行けるとまで言われていた。それだけに、この事件の打撃は大きいのではないか。〈朝日新聞・朝刊〉

◎人気の陰に強い刺激ポケモン「ほかのと全然違う」
「ポケモンはほかのテレビと全然違う」「ピカピカしているところが好き」と子どもたちはいう。十六日夜、テレビ番組の「ポケットモンスタ—」を見た子どもたちに気分が悪くなる子が続出し、病院に運ばれた背景には、より強い刺激を求める子ども側と、人気を得たい大人側との思惑がピタリー致したという事情が見え隠れしている。
ポケモンの人気キャラクタ—「ピカチュウ」は電撃をする。奈良屋小五年、太田有樹君(一一)は「ほかのテレビより激しいところが好き」と話した。このあたりに人気を集める理由があるようだ。〈朝日新聞・夕刊〉

◎「フリッカー」の手法
【大口孝之さん(映像クリエー夕ー)の話】
映像を見てみないことにはなんともいえないが、赤い光と黒い光を交互に点滅させる「フリッカー」の手法が使われていたようだ。これに過敏に反応する人がいることは以前から知られている。数年前に、テレビゲームで同じ症状が出たときもそうだった。ー九七〇年代には、実験的なサイケデリック映像の手法としてさかんに使われていた

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⑯: これで百年食える、というもの言いを流布させたのはこのコメン卜あたりからだったようだが、親子ともどもハマれるアニメ、という点をきちんと指摘しているあたりはさすが。

が、今ではあまりはやっていない。映像の作り手としては、症状を誘発した原因が赤い光なのか点滅なのか、医学的にはっきりさせてほしい。これで点滅が悪いなんてことになれば、多くの表現が妨げられることになる。〈朝日新聞・朝刊〉

◎「手法変わらずどうして……」
アニメ関係者にも困惑が広がっている。専門雑誌の月刊「ア二メージュ」の渡辺隆史編集長は、「アニメ技術はここ数年、基本的に変わっておらず、特に場面を強調するような新技術が使われていることはないはず。今回、なぜこのような結果となったのか不明だし、アニメ業界には技術面の自主規制を担当するような団体がないので、アニメ全般にどういう問題があるのかははっきりしていない。今後、当誌としても原因などを詳細に調べなければいけないと思っている」と首をひねっている。〈東京読売新聞•夕刊〉

◎七〇年代から使用このアニメは同社が下請けのアニメ制作会社に発注して共同で作っている。問題のシーンは、登場人物の背景で赤と青の色が交互に点滅する。アニメや特撮にくわしいオタク文化評論家の岡田斗司夫さんによると、「フリッカー」と「透過光」という二つの撮影技術を併用して撮影されているという。
「フリッカー」は赤と青、白と黒のようにコントラストの強い色を一コマずつ交互に出して、点滅する効果を出す技術だ。
「透過光」は画面の一部だけが発光しているように見せる技法。アニメをーコマずつ撮影するとき、セル画をいったん撮り終えてからフィルムを巻き戻し、画面の光らせたい部分以外を黒い紙で覆って裏側から光をあてて重ね撮りする。
どちらもアニメの撮影技術としては比較的高度でコストもかかるが、日本ではー九七〇年代ごろからすでに「マジンガーZ」「宇宙戦艦ヤマト」などの人気アニメの戦闘シーンには使われていた。
多用されるようになったのは、子供向けテレビアニメがスピーディーになった九〇年代前半ごろから。現在はむしろ全く使っていない作品を挙げるほうが難しいという。
【最も集中した場面】
なぜポケモンの今回放映分に限って問題を引き起こしたのか。岡田さんは、最も気分が高揚するシーンで用いられた点を挙げる。ポケモンは作品として演出のレベルが高く、子供が画面に集中する。「クライマックスで、子供に一番人気のあるピカチュウが危機一髪で主人公を救うもっともドキドキする場面だった。しかもこの回は電脳空間が舞台で、コンピュータ—内部を表現するために透過光の使い方がふだんより多めだったのではないか」という。〈朝日新聞・夕刊〉

33 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

◎私はこう見る
漫画やアニメに詳しい教育評論家の斎藤次郎さんは、「制作者が新しいタイプのインパクトを視聴者に与えようと考えたのかもしれない」とみる。
制作者の意欲が予想外の結果を生んだ、と指摘する声も多い。伊予田康弘・東京女子大学教授(メディア論)は「子どもを引きつけようと刺激的な映像を繰り返したことが、米国映画で問題になったサブリミナル効果と似た効果を生みだした可能性はある」と話す。
斎藤さんは、「メディアで不特定多数の人たちを攻撃できるということでショツクを受けた」といいながらも、「ポケモンは子どもが熱中する要素をうまくつかまえている。(17) 悪者視されては困る」と心配するのだ。〈朝日新聞•夕刊〉

◎最近のアニメの世界の変質が背景にあると指摘するのは、まんが評論家で日本社会事業大学講師の石子順さん。「最近のアニメは、エヴァンゲリオンやセーラームーンにしても、表現が鋭角的で、攻撃性も強い。社会全体に余裕がなくなっていることの反映ではないか」と、いきすぎた映像表現に警鐘を鳴らす。(18)〈毎日新聞・夕刊【大阪】〉

◎【マスコミ評論家の茶本繁正さんの話】
テレビを見ていて人間が倒れるなど、これまでにない出来事。画面が神経を逆なでするような状況で人間を興奮状態にする「逆催眠」がかけられたのではないか。(19) 今の子はテレビゲーム世代で、自分でゲームの世界に入っていく。彼らの見慣れない強烈な画面が放映されたと考えられる。見慣れたものでないものが視覚に飛び込んできた時、大きなショツクが与えられ、倒れたのではないか。〈毎日新聞・朝刊〉

◎「テレビのアニメ番組で、子供たちがひきつけのような症状を起こしたというのは初めて聞いた」と、アニメとゲームに詳しい文化放送のパーソナリティ1、おたつきい佐々本さんは語った。
佐々本さんは「アニメの見せ方の一っとしてセル画の後ろから強い光を照射して絵を強く浮かび上がらせる『透過光』という手法があるが、この効果が強すぎたり、光の明滅が激しかったりすると目に変調を来すことはよく知られている。ただ今回は、その技術が行き過ぎていたというよりは、作品のキャラク夕ー人気が要因だと思う。ピカチュウに代表される大好きなキャラクタ—が出たという心理的興奮も手伝い、画面に引き込まれ、結果的に過度の視角的な刺激を受けてしまったのでは」という。〈産経新聞・朝刊〉

TV•アニメ
関係者は……
●戸惑うTV関係者
「ポケモン事件」について各テレビ局の関係者は「これまで聞

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⑰: おいおい、「攻撃」じやないだろっての。それでいながら、「子どもが好きなものだから悪者にしないで」というのだからわからない。この斎藤次郎という人、かつてはマンガを熱っぽく語っていた「大人」の代表だったけれども、その「子ども」に対するスタンスはここまでズレてしまっている。
⑱: 出た! 陳腐極まりない「社会の反映」論。できあがった「権威」ってのはほんとにそのまま通用し続けるものらしい。
⑲: これも何も言っていないオヤジ世代のジャーナリズムオヤジのコメントの典型。「逆催眠」ってなんだ?わかんないならコメントすんなっての。

いたことのない例。原因は何だろう」と、一様に戸惑っている。日本テレビ広報部では「映像と病状の因果関係がわからないので何とも言えない。原因究明を待って、番組制作上の対応を考えたい。かつて指摘されたサブリミナル効果とは別のものだろうとは思うが……」と対応に苦慮している。
テレビ朝日では系列などの六局が「ポケモン」を扱っているが、この日は放映していなかつたという。
広報課によると、アニメ番組ではアクションなど子供に刺激の強い場面で気分が悪くなったという苦情は以前にもあった。このためアニメ制作では放送法や局内の基準に照らし合わせるなどの対応をしてきたという。しかし、今回は画面の光など映像の表現方法が原因とみられることから、「対応を考える上でも事実関係を早く把握し、医学的な問題点などを明らかにした上で対応したい」という。〈朝日新聞•夕刊〉

●安あがりで効果
大手アニメ制作会社の関係者によると、視聴者を引きつけるためには、セル画を増やして登場人物を派手に動かす方法があるが、コストがかさむ。しかし、今回のような手法は、比較的安あがりで視聴者を引きつける効果も大きいことから、多用される傾向にある。(20) この関係者は「テレビ局側の制作会社への発注の単価が上がらないことも多用の背景にあるのではないか」と指摘する。〈朝日新聞・夕刊〉

◎民放三局でアニメを放送している制作会社のスタッフは「衝撃を受けている。原因を究明してもらい、対策を立てないといけない」と話した。〈毎日新聞・夕刊〉

教育の現場では
●調査に追われる
全国の小中学校
十七日朝、全国の小、中学校
は、「ポケモン」の番組のビデ才をチェックしたり、張り出しをするなど児童らへの影響調査に追われた。
東京都千代田区の区立小学校では朝一番のホームルームで担任教諭が児童に聞き取り調査。欠席した児童はいなかったが、少し気分が悪くなったという児童がクラスに数人ずついたという。また横浜市教委によると、同市内の小、中学校など五百十一校のうち千ーー百七十一人の児童、生徒がポケモンによる症状を訴え、二十四人が病院で手当てを受けた。
大阪市立今津小学校では、校長が児童との連絡に使っている校長室前の掲示板に「世の中何があるか分かりません。㉑ テレビの見方にも気を付けてくださいね」と張り出した。
同市立生野小学校では校長が朝の職員会議で、具合が悪くなった児童がいないか確認するよう職員に指示。同校長は「学校を預かる身として、番組がどんな内容だったかビデオで確認し

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⑳: ここで、やっと技法と商業論理の関係が出てくる。遅すぎる。
㉑: このあたりの教育委員会関係の「調査」については、子どもに対して聞き取り調査をしたデータがどれだけ信頼できるものか、そのへんの配慮はあまりなさそうだ。「世の中何があるか分かりません」って、子どもに言うセリフじやないよな。

たい」。〈産経新聞・夕刊〉

●都教委が被害調査
全公立小・中校対象に
東京都教育委員会は十七日、都内の全公立小中学校を対象に、生徒・児童の欠席など「ポケモン」の影響による被害がどれだけにのぼるか調査を始めた。また、都教委が同日午後一時現在、都内二十八区市町村教委からの報告をまとめたところ、「ポケモン」の影響で都内の公立小中学校を欠席している児童、生徒数は計四十五人。内訳は小学校児童が四十四人で、中学生が一人。欠席者数が最も多い葛飾区では十人にのぼっている。〈東京読売新聞・夕刊〉

●千二百七十一人が症状訴え
横浜市教委の調査
「ポケットモンスター」による児童、生徒への健康被害について、横浜市教育委員会は十七日、同市内の小中高、盲ろう学校を対象に聞き取り調査を実施した。同日午後零時現在、医療
機関で診察を受けたのは二十四人だったが、目がちかちかしたり、吐き気がしたりするなどの症状を訴えた児童・生徒は、千二百七十一人にも上っていることがわかった。〈東京読売新聞・夕刊〉

●「見るなとも言えないし」
戸惑う名古屋市教委
愛知県教育委員会保健体育課では、被害のあった児童・生徒を把握することはしていない。担当者は「重体の児童・生徒がいた場合は報告があがってくることになっているが、いまのところそういう例はない。現在人数などをつかむ必要はないと思っている」と話す。
名古屋市教育委員会学校保健課では、テレビを見て被害を受けた子どもの数や状況を把握するつもりはないという。「学校外で起こったことなので、対処の仕様がない。調べたからと言って、ポケモンを見るのをやめろとは言えないし……」と戸惑い気味だ。〈朝日新聞・夕刊【名古屋】〉

●【大阪】被害把握、
通達に奔走
大阪府堺市教委は、市内百四十二の市立幼稚園、小中学校に対し、テレビ視聴の仕方を通達。▽画面からニメートル以上離れて見る▽部屋を暗くしない▽三十分間見たら五分休憩▽時々画面から目を離す——などを指導している。また各校園に被害の実態調査を指示。和泉市教委も、市内三十七の市立幼稚園、小中学校に対して「気分が悪くなりかけたらすぐにテレビ視聴をやめさせる」などの対応を保護者にとってもらうよう通達した。
東大阪市立玉川小学校では、昨夜から鼻血が出るなどの症状を訴えた児童がおり、テレビ番組を見たかどうかを調べている。(22) 内山秀男校長は「教師たちは番組についてはタイトルぐらいしか知らず、何が原因かわからず、不気味だとの感情を抱いている」と話した。

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㉒: あの、鼻血は違うんじやないでしょうか?

大阪府教委は、これまでにない事態に「はっきりした原因がわからず、特定のテレビ番組を見るなともいえない。学校現場に何を指示したらいいか、見当がつかない」と困惑。(23) とりあえず同日朝、医師など専門家に助言を依頼。市町村教委の動きの把握に努めた。
同教委によると、十七日午前中に東大阪、大阪狭山、松原など十七市町村教委が、市立小、中学校に児童の被害の実態把握の報告を指示。四教委が消防本部を通じて病院に運ばれた児童がいないかを調べ、二教委で学校現場に通達を出すことを検討している。〈大阪読売新聞・夕刊〉

●福岡県教委が緊急協議福岡県教委は十七日朝、関係各課が緊急協議したが、当面は事態の推移を見守り、必要があれば子供たちの実態調査や指導を行うことにした。
県教委には、早朝から対応を問い合わせる報道機関などからの電話が殺到したが、職員らは「前例のないケースなので、対応は協議中」と繰り返すばかり。騒ぎを報じる新聞を持ち寄り、県内で病院に運び込まれた人数や症状などを検討したが、職員たちは「データがあやふやで、よく分からない」と頭を抱えた。
県教委では、同日午前十時ごろから、義務教育課と保健体育課の職員らが対応を協議した。しかし、テレビ番組と、症状の具体的な因果関係もはっきりしないため、「生活指導として、テレビを見るなとは言えない」と義務教育課。保健体育課も「インフルエンザ予防のような健康教育にも当てはまりそうもない」と頭を悩ましている。〈西日本新聞・夕刊〉

あれこれ……
◎大きい声で同じことを何度も何度も聞かされると人はそれを信じるようになる。耳の話だ。が、「ポケモン」パニックは目の話。テレビ画面にクギづけで激しい点滅光を浴びると、脳をやられ、身体がけいれんするらしい。現代を生きる上での新知識の追加である。〈東京毎日新聞・夕刊【近事方々】〉

◎「ポケモン」を知っていましたか。子供に人気絶大というそのテレビ番組が、意外な騒ぎを起こした。全国各地で見ていた子供たちがけいれんや引きつけを起こしたとは、ただ事ではない。テレビに先駆け爆発的にヒットしたゲームソフト「ポケットモンスタ—」とは何か▼「現代用語の基礎知識ー九九八」には〈草原や森や池に隠れている百五十一種のモンスタ—を順に捕まえ飼い慣らして成長させ、自分のモンスタ—図鑑を作っていくゲーム〉とある。子供の遊びをポケモン一色にした趣のこの怪物、学者に』冊の本まで書かせた。中沢新一さんの「ポケットの中の野生」(岩波書店)だ▼ポケモン人気もすごいけど、携帯液晶ペット「たまごっ (24)

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㉓: 特定のテレビ番組を見るなとも言えないし、という学校の戸惑いは、かつて「有害図書」などを指定して断固として「読むな」「見るな」と指導していたのと比べて、隔世の感がある。学校の外でも読んじやいけないものはいけなかったと思うんだけどなあ。

㉔: なんでいきなり中沢新一なのかわからない文章だが、かつて「イケてる」学者の代表だった中沢センセイの〃ご威光〃は、今でもこういう微妙なところにあるらしい。でもって、「電通」の分析も引用したりして、この記者は『河北新報』ではかなり「イケてる」人として知られているのではないか(箋。

37 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

ち」も売れた。失楽園にガーデニング、体感ゲーム。今年のヒット商品のキーワードは「小宇宙遊泳」と電通が分析している。特徴は主人公になり切り自分の世界で遊べることだという▼自分の世界に浸れる場所は気持ちがよく現実から逃避できる。夢中になるのも分からないではない。ただ、若者の「閉じこもり現象」や公共の場での人なきがごとき振る舞いにどこか通じる、と思うのは短絡思考だろうか▼日本人は周囲に塀を築き家族や社会から孤立する「孤人主義」だ、と指摘する調査報告がある。欧州四カ国と比べて、社会にかかわる意欲や責任意識が薄いことが浮き彫りになったという▼「孤室」で「孤食」しながら菰人趣味」に興じる。「小宇宙遊泳」の隣にそんな寂しい光景が広がっている。〈河北新報・朝刊【河北春秋】〉

十二月十八日

被害状況
●入院は二百人
人気アニメ番組「ポケットモンスタ—」(テレビ東京系)を見ていた全国の子供らが「気分が悪くなった」などと異常を訴えた騒ぎで、自治省消防庁は十七日午後五時現在、三十都道府県で計六百八十五人が病院に運ばれ、意識不明などの重症者三人を含む計二百八人が入院したと発表した。また、警察庁は病院や学校に問い合わせた結果、体調不良者は七百四人、うち百三十人が入院したと発表した。
自治省消防庁によると、病院に運ばれた人の内訳は、〇歳児一人▽ー〜五歳七人(うち入院は五人)▽六〜十歳百六十五人(同四十三人)▽十一〜十五歳四百十八人(同百三十四人)▽十六〜二十歳七十四人(同二十一人)▽ーー十一歳以上二十人(同五人)。小中学生が九割近くを占め、最高齢は神奈川県の五十八歳。(25) 男性は三百十人、女性は三百七十五人だった。
意識を失うなど被害の深刻な重症者は三人で、そのほかは中等症二百十七人、軽症四百六十二人、不明三人だった。〈毎日新聞・朝刊〉

●ポケモン・パニック
一万人が異常訴え
読売新聞社のまとめによると、十八日午前零時現在で、病院に運ばれ、手当てを受けた子供などは七百五十五人、うち入院した人は二百十六人。また、各地の教育委員会の調査では、小学生を中心に病院には行かないまでも、ー万人以上が吐き気などの症状を訴えていたことが分かった。(26)〈東京読売新聞・朝刊〉

●ポケモン被害 八十八人が欠 席 都内の公立小中学校
テレビ東京のアニメ番組「ポ ケットモンスタ—」を見た子供 が相次いで引きつけなどの発作

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㉕: 神奈川県の五十八歳男性、って どんな人だったんだろう。誰もが 知りたがったはずだ。
㉖: ここでついに「一万人以上」 に。教育委員会関係の数字だ。

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を起こした問題で都内の公立小中学校で八十八人が学校を休んだことが十七日の都のまとめで分かった。
これは同日朝から、区や市町村の教育委員会を通じて都教育庁がまとめたもので、保護者からの連絡などで同番組による体調不良のため同日欠席した児童、生徒の数をカウントしたもの。
調べによるとこの日欠席したのは、小学生八十人と中学生ハ人、高校生はいなかった。地域的に最も多かったのは葛飾区の十人で、次いで足立区が八人、台東区、昭島市などが五人となっている。〈産経新聞・朝刊〉

二次被書も続々
●「ポケモン」の録画見て
四十二歳男性失神
同日午後六時半ごろ、千葉県流山市の男性(四二)が、茨城県つくば市の友人宅で、テレビ東京系の人気アニメ「ポケットモンスタ—」の録画を見ている
うちに意識を失って倒れ、救急車でつくば市内の病院に運ばれ、入院した。(27) 救急車を出した筑南広域行政事務組合消防本部によると、意識を失っていたのは五分ほどで、けいれんも伴ったという。〈朝日新聞・夕刊〉

●録画ビデオ見て意識もうろうに——長岡京の中一男子京都府長岡京市の中学一年男子(一三)が十七日夕、テレビ東京系の人気アニメ番組「ポケットモンスタ—」の十六日放送分の録画ビデオを見ているうち、体に異常を起こし、救急車で市内の病院に運ばれ、手当てを受けた。意識がもうろうとなって意味不明のことを口走り、階段で足を踏み外してしりもちをつき意識を取り戻したという。病院で点滴を受けるなどし、午後七時過ぎに帰宅した。〈毎日新聞・夕刊【大阪】〉

その後の動き
●郵政省局長、
テレビ東京の常務を呼び聴取郵政省の品川萬里放送行政局長は十七日午後、テレビ東京の田村哲夫常務らを呼んで事情を聴き、今後の対応について説明を受けた。この後記者会見した品川局長は「今回の事態は重く受け止めなければいけないと考えている。今後、テレビ東京の原因究明を見守りながら、必要に応じて報告を受けたい」と述べた。〈朝日新聞•朝刊〉

●警視庁捜査ー課と愛宕署も、被害者が多数に上った事態を重視し、テレビ東京編成部関係者から事情聴取を行った。〈東京読売新聞・朝刊〉

●厚生省、追跡調査へ
「ポケモン」問題で、厚生省は十七日、新たに研究班を設けて追跡調査に乗り出すことを決めた。発作を起こした子供の年齢や症状を分析して実態を把握、

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㉗: この四十二歳男性もかなりカツコ悪いかも。つくば市の友人ってのも、いくつぐらいだったんだろ。

39 PART-1►「ポケモン事件」とメディア

「調査結果によっては放送内容の自粛を求める」としている。消防庁と郵政省の協力を得て三省庁合同で対策に臨む。厚生省では大臣官房厚生科学課が中心となって、障害保健福祉部精神保健福祉課、児童家庭局母子保健課が新たに研究班を設立し、消防庁や全国の病院から今回、発作を起こした子供のデータを取り寄せ、年齢別や症状の程度などの実態を把握する。
その上で健康危機管理の立場から(一)具体的に何がきっかけで発作を起こしたのか(二)どういう体質や性格の子供に多かったか(三)どういうケースが問題になるのか——などについて追跡調査を行っていく。調査結果を受けて、放送内容が今回と同様の発作を起こす危険があると判断した番組については、郵政省を通じてテレビ局に通知し、自粛を求める。〈産経新聞・朝刊〉

テレビ東京の対応・視聴者の声
●テレビ東京、会見で謝罪「このような事態になり、誠に申し訳なく思っています」。テレビ東京の森広成編成専任局長は、「事件」からほぼ一日たつた十七日午後四時から本社大会議室で記者会見、深々と頭を下げた。
森局長は「現在のアニメでは普通に使われている手法ばかりなのに、なぜこんなふうになつたのか。びっくりしている」「社員プロデューサーが放映前にチェックしたが、まったく問題ないと判断していた」と釈明を続けた。
「ポケモン」はアニメの多いテレビ東京の番組の中でも、亠咼視聴率を誇る「ドル箱」。会見で森局長は当初、「人気アニメだし、企画自体が今回の事象を引き起こしたということではないと思う。番組は引き続きやっていきたい」と話したが、番組中止に関する質問が続くと「問題
点が特定できなかったり、ストーリー構成など全体的な問題があれば放映は中止します」とー転。同社の困惑ぶりを浮き彫りにした。〈毎日新聞・朝刊〉

●「ポケモン」お休み
テレビ東京
テレビ東京は、社内に調査チームを設置し、結論が出るまで同番組の放送を自粛する方針を明らかにした。
記者会見したテレビ東京の森広成・編成総局編成専任局長は「原因はどうあれ申し訳ない」と陳謝。「放送後半の午後六時五十分以降に不調が訴えられており、この時間を中心に調査を始める」とした。多くの視聴者が番組を録画しているとみられ、ニュースやテロップで録画ビデオを見ないよう呼びかけた。問題の番組は、全国の三十一局が十七日以降の放送を予定していたが、すべて中止される。〈朝日新聞・朝刊【大阪】〉

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〈資料〉
●十二月十七日十六時
テレビ東京記者会見内容

午後四時今回の「ポケモン」問題に関する記者会見を行ないました。
冒頭、テレビ東京編成専任局長は「原因はどうあれ、このようなことを引き起こした事を申し訳なく思っております。入院された方々の一日も早い回復を祈っております」と語り、今後局として誠意を持って対応していきたいと述ベました。
【会見の主な内容】
〈調査チームを組織、原因究明へ〉
当面の対応としては原因究明のための調査チームを出来れば今日中、遅くとも十八日朝の段階までに結成し、早急に原因を突き止めたい。
メンバーは制作専任局長常務金沢龍一郎をリーダーとし局内から六人、それに外部から精神科医や小児科医などの専門家三人を予定しているが、専門家についてはなお人選中です

●抗議電話など数百本も
テレビ東京の視聴者センタ—にかかってきた電話は、十七日だけで約二百本に達した。不安な親たちからは「ウチの子も見ていたが大丈夫?」「番組は今後も続けるのか」と問い合わせる内容が多かった。また「危険な『ポケモン』なんか、放送を中止しろ」といった厳しい非難も相次いだ。〈毎日新聞•朝刊【大阪】〉

●テレビ東京、年内と年始特番は自粛
人気テレビアニメ「ポケットモンスタ—」(テレビ東京系)を見た全国の子供が体の異常を訴えた問題で、テレビ東京は十八日午前、「ポケモン」の年内レギュラー放送分(二十三日)と、年末年始に予定していたスペシャル番組三十一日、一月三日)の放送を自粛する方針を固めた。放送再開は年明けになるが、日時は明確にしていない。〈毎日新聞•夕刊〉

●十七日夜、一部テレビニュースなどで、被害の補償問題が大きく報道されたことから、同局には十八日早朝から補償問題を問い合わせる電話が殺到した。視聴者センタ—では「誠意をもって対応します。再度、連絡します」と返答している。さらに同日午後には、患者向けの相談ルームの設置を決めた。〈毎日新聞•夕刊〉

インターネット上はますます過激に
●番組存続問題はインタ—ネッ卜上でも大きな話題となり、「ポケモン」ファンが多数設けているホームページの掲示板に「ポケモン」擁護論やマスコミに対して冷静な報道を求める意見が数多く寄せられている。〈毎日新聞・朝刊【中部】〉

●ネットに「売って」掲示も多数の小、中学生らが体調異常を起こした十六日夕放送分の「ポケットモンスタ—」につい
ては、多くの視聴者が放送を録画していた。騒動がニュースで伝えられた直後から関心を集め、インタ—ネツトや大手パソコン通信の掲示板などで「ビデオを売ってほしい」「譲りたい」などという書き込みがあらわれた。中には、「送料込み三千円」などと値段を具体的に示したものもあった。一方では、これらの動きに「興味本位だ」と怒るポケモン・ファンの声も掲示されている。〈朝日新聞・夕刊〉

広がる波紋
●「ポケモン」ビデオのレンタル、一時停止
「ポケットモンスタ—」のレンタル用ビデオを販売しているメディアファクトリー(東京都港区)は十七日、発売元の小学館(東京都千代田区)と協議し、安全が確認されるまで、レンタルを一時停止するよう、レンタルビデオ店に要請した。販売も安全が確認されるまで見合わせるという。

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㉘: 「補償」がここで大きく出てくる。「カネ」がからんでまた別の問題に移行してゆく。

41 PART-l▶「ポケモン事件」とメディア

レンタルビデオショップチェーンの大手「TSUTAYA」は十八日から店頭の「ポケットモンスタ—」ビデオを撤去し、当分の間、貸し出しを停止することを決めた。〈毎日新聞・朝刊〉

●医師ら〃危険な映像〃指摘
十七日夕方、都内で医師グループによる緊急の記者会見が行われた。会見を開いたのは、テレビゲーム画面による発作症例を研究している「ESGSの会」。同会では十六、十七の二日間の日程で、中間報告会を東京・市谷で開催する予定にしていたが、今回の事態を受け、急きよ問題のビデオの検証と、テレビ画面と光に過敏に反応する「光過敏症」の関連についての話し合いを行った。
同会では今後も調査を進め来春までに調査結果をまとめる予定だが、アニメ映像で子供の発作が引き起こされる「電脳時代」の意外な落とし穴に、メンバーは驚きを隠せなかった。
〈産経新聞・朝刊〉

●てんかん協会が報道機関に要望
「ポケモン」で倒れた子供たちが「光過敏性てんかん」の症状に似ているとの一部報道に、社団法人「日本てんかん協会」(東京都新宿区)は十七日、「てんかんに対する偏見や差別への
助長にならないように」との要望を発表した。同協会の古山寿郎・事務局長は「原因が明らかになるまで、子供向けアニメの放映内容について各局の適切な対応を」と話した。〈毎日新聞・朝刊〉

●おもちや売り場
歳末商戦に不安よぎる
デパートのおもちや売り場店員は、クリスマス商戦の主役・ポケモングッズの売れ行きに不安をよぎらせ、子供たちの間からは「残念」「なぜ見れない」の大合唱が起こった。
鹿児島市の山形屋のがん具売り場には、二百種類以上のポケ
モングツズが並ぶ。クリスマスプレゼントの〃主役〃でもあるだけに、担当者は「ニュースを知ったときは一瞬不安になつた。だが、ポケモンを知らない人にも興味を持ってもらったのでは」
同市のダイエー鹿児島店内のおもちや売り場。店員は「春にテレビ放送が始まってから、中高校生まですごい人気。売り上げには影響ない」と淡々。〈西日本新聞・朝刊〉

槻害者対策
●日生協、特例で共済金支給へ
日本生活協同組合連合会(本部・東京)は十七日、COOP共済「たすけあい」の加入者で、十六日夕にテレビ東京系列(道内はテレビ北海道)で放映されたアニメ番組「ポケットモンスター」を見てけいれんなどの症状を起こした人に、特例として共済金を支払うことを決めた。(30)〈北海道新聞・朝刊〉

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※40ページ下段のつづき
〈ご注意呼びかけ〉
録画した番組を見ても同じような不調を訴えている人がいるときいています。
いまロールスーパーやニュースを通じて、今回問題のあった三十八話については録画したものもご覧にならないよう呼びかけています。ご協力ください。〈サブリミナルなどは一切なし〉番組プロデューサーと番組プロダクションでーコマづつチエックしたが特殊な信号やサブリミナル効果を狙ったようなものは一切なかったとの報告を受けています。〈今後の対応〉
いまのところは番組の企画自体に問題があったとは思っていません。表現の方法、手法などに問題がなかったどうかを中心に調査をしているが、いずれにしても調査チームの結論を待って今後の対応を決めていきたい。
来週の火曜日の放送につきましては、調査の結論を待って早急に対応を決めたい。
今回の問題が三十八話の一部分

●ファクスで情報提供
——茨城県衛生部
県衛生部は十七日、「ポケモン」を見ていた子供などに出た症状は、反復する光で発作が誘発される「光源性てんかん」の可能性が高いとする報道などを受け、県民向けにファクスによる情報提供を始めた。
操作案内のテープ音声に従い、情報番号〇六〇ーを入力すると、「光源性てんかん」の症状や予防法、発作が出た場合の対応、問い合わせ先がファクスで取り出せる。〈毎日新聞・茨城版〉

橋本首相は……
●〔橋本首相の一日〕
十二月十七日
【午後】〇時四十九分、人気アニメ「ポケットモンスタ—」を見た子供たちがひきつけなどを起こしたことについて「光とかレーザーは、もともと武器としても考えられていたものだ。(人間に及ぼす)効果には未知
のものが残っているんじゃないか」(31) 〈東京読売新聞・朝刊〉

北でも南でも
●【室蘭】
「ポケモン」被害数件
室蘭市内でも数件の被害があったことが十七日、室蘭市教委などの調べでわかった。
同市教委は、小中学校長を通じ、被害状況をまとめた。その結果、日進と絵斬、本輪西の三小学校から四年生五人、五年生一人の計六人から「ポケモンを見て気分が悪くなった」との報告があった、という。
いずれも、病院にはいかなかった。また、テレビ番組の影響かどうかははっきりしないが、日進小二年の女子児童が夜中にてんかんを起こした報告もあった。〈北海道新聞•朝刊【道央】〉

●青森では小六女児
青森市では、十六日午後六時五十五分ごろ、テレビ東京系列
のテレビ北海道で十六日放映された「ポケモン」を同時再送信した青森ケーブルテレビを見ていた小学六年女児(ーニ)が、けいれん発作を起こし、救急車で病院に運ばれた。(32) 症状はすぐ回復し、同日中に自宅に戻つた。
〈河北新報・朝刊〉

●福島は二人発症
テレビ東京の番組が受信できる福島県田島町で十六日、アニメ番組「ポケモン」を自宅で見ていた県立高校三年の女子生徒(一七)が意識を失い、同日午後七時ごろ、救急車で県立南会津病院に運ばれた。福島県で被害が分かったのは、中島村の県立高校二年の女子生徒(一七)に次いで二人目。
生徒は病院到着時には意識が回復し、自力歩行できたが、病院は経過をみるため一時入院させ、十七日昼に脳波検査を行った。検査結果をみて今後の対応を決める。
生徒は妹と一緒にテレビを見

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の問題だという事になったとしても、この次に予定しているー二十九話についても専門家のチェックを受けたあと放送する方針です。

㉙: はい、お約束の「差別」問題が出てきました。いつもながらこの「要望」ってやり口がミソですな。

㉚: なんで生協が?「補償」問題とのからみで微妙な判断が必要な時期のはずが、いきなり先取りしたようなこのケースは謎だ。

㉛: 総理大臣がこのコメント。すげえトンデモ。それとも、,番記者の悪意かな。

㉜: CATV(ケーブルテレビ)が地域のテレビの視聴環境で大きな役割を果たしていることが、今回改めて明らかになった。

43  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

ていたが、妹に異常はなかったという。〈河北新報・朝刊〉

●【新潟】JCVは問題なく
上越地区では上越ケーブルビジョン(JCV、本社・上越市)がテレビ東京を同時放映しており、問題となった「ポケモン」第三十八話も十六日午後六時半から放映された。上越地域消防事務組合消防本部には十七日午後八時現在、「ポケモン」に関係した救急車出動要請はないという。
JCVは上越市、新井市、中頸・頸城村を対象地域にして、約二万三千世帯が加入している。〈毎日新聞・新潟版〉

●【長野】「ポケモン」県内各地にも波紋広がる岡谷市
百人超す児童が自覚症状
県内では十六日夜、ケーブルテレビで見た子どものうち九ー十四歳の七人がけいれんを起こすなどし、救急車で運ばれ、うち四人が入院したことが十七日分かった。岡谷市の小学校では
百人を超える児童が自覚症状を訴え、医院で診察を受けた児童もいて、波紋は県内各地に広がった。
岡谷市教育委員会が市内の小中学校を通じて調べたところ、市内全校に当たる小学校八校で百六人、中学校四校で七人の児童生徒が、番組終了後に「目がチカチカする」「頭が痛い」などの症状を訴えていた。県警本部の調べによると十七日午後五時現在で、十七人が体調不良を訴え四人が入院したとしている。〈中日新聞・朝刊〉

●【山梨】女子八人が被害、二人が入院
県内でも八人の女子がひきっけなどを起こした。うち六人は病院に搬送され、二人が入院した。〈毎日新聞・山梨版〉

●【山梨】豊橋では、ケーブルテレビ(CATV)の契約世帯に放映された。テレビ東京からの電波を受信し、手を加えずにケーブルで流す「再送信」放送で、甲府CATV局(甲府など二十三市町村、約十三万世帯)やケーブルテレビ5(富士吉田市、約ー万五千世帯)などが放映した。〈朝日新聞・朝刊〉

●【静岡】県西部浜松医療セン夕ー小児科医の平田善章副院長と十六日夜の当直医だった矢野邦夫医師によると、救急患者は七ー十五歳までの男子三人、女子二人。全員が十七日にあらためて診察を受けた。さらに同日、女子(ーー)が新たに受診した。
救急患者は来院時、全員がけいれんを訴え、うち一人は意識不明の状態だった。患者六人はいずれも発症する前に番組を見ていたという。心電図やCTスキャンの検査の結果、全員異常はなかった。〈静岡新聞・朝刊〉

●【愛知】豊橋では小中生千三百人が被害訴え
「ポケモン」を見て、気分が悪くなるなどの被害を訴えた小中学生は、愛知県豊橋市内で約千

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〈資料〉
●十二月十八日十三時三十分テレビ東京広報室発表

「ポケットモンスタ—」の今後の放送について
本日、専務取締役編成総局長の岡を中心とした緊急会議を開き、来週十二月二十三日(火)の放送分についてのみ、休止する事を決めました。
これは今回の問題に関する調査チームの発足が遅れているため、放送しても良いかどうかという判断材料がそろわないためです。なお、十二月二十三日放送の休止に代わる番組、およびそれ以降の「ポケットモンスタ—」の放送については未定です。

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三百人に及ぶことが十七日、同市教委のアンケートで分かつた。調査は市内の五十二小学校と二十二中学校で計約三万七千人を対象に実施した。
調査によると、番組を見た小学生は全体の七三・四%にあたる約ー万七千人、中学生は三五・四%の約四千五百人だった。このうち被害を訴えたのは、小学生が千百八十四人(六・七%)で、中学生は百五十四人(三・四%)に上った。〈中日新聞•朝刊〉

●【奈良】県内に十人以上三人一時入院
県内では少なくとも十二人が気分が悪くなり、うち七人が病院で診察を受け、三人が一時意識を失うなどして入院した。ー夜明けた十七日朝、子どもたちにテレビ番組は選んで見るよう呼びかけた学校もあった。異常を訴えた子どもたちは、テレビ大阪が放映した「ポケモン」を見た。同社によると、番組を直接受信できるのは奈良市
約六万三千世帯、檀原市約ニ万六千世帯のほか、大和高田、生駒両市、北葛城郡など、計九市四郡の約二十万八千世帯。また、生駒市と奈良市西部にー万七千世帯の契約を持つ近鉄ケーブルネットワークでも、テレビ大阪の番組を同時刻に見ることができる。〈朝日新聞•朝刊〉

●【兵庫】県のまとめによる
と、救急車などで病院に運ばれたのは神戸市七人▽尼崎市五人▽芦屋市三人▽西宮市、宝塚市各二人▽伊丹市、加古川市、川西市、小野市、三田市、洲本市、滝野町、淡路町、五色町、東浦町各一人の計二十九人。内訳は男子十三人、女子十六人。〈毎日新聞・兵庫版〉

●【大阪】大阪府堺市教委の調査では、二十二人が医院で手当てを受け、六人が入院した。このほか、幼稚園児から中学生までの計百十二校・園で計千四百九十五人が「気分が悪くなった」と訴えた。九五%以上が小
学生だった。〈毎日新聞・朝刊【大阪】〉

●【京都】京都市教委の調査では、気分が悪くなり欠席した児童は五校に五人、出席したが前夜に吐いたり、頭が痛くなった児童は八校に十九人いたという。〈毎日新聞・朝刊【大阪】〉

●【岡山】「ポケモン」アニメを見た小学生、一割近くが異常訴え
岡山市教委で、ポケモンを見た市内の小学生の一割近くが異常を訴えていたことが分かつた。学校を欠席したり、病院で手当てを受けた子供以外にも「目がチカチカする」などの軽い症状が出た子供が多数いるとみられる。
岡山市教委の調査によると、ポケモンを見て具合が悪くなり十七日欠席したのは、幼稚園(在籍数四千六百七十三大)で一大、小学校(同三万六千百三十人)で十八大、中学校(同一万六千三十六大)で三大の計二

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十二人。しかし、「頭がクラクラする」「吐き気がする」などの症状を訴えたのは幼稚園六十六人、小学校二千百七十七人、中学校百六十三人の計二千四百六人にのぼった。幼稚園、小、中学校を合わせると、十六日のポケモンを見たのは約六割のーニ万三千八百七十三人で、うち七・一%の子供が異常を訴えたことになる。〈毎日新聞•朝刊〉

●【愛媛】県内直撃
東予の小中生九十人異常
県内では、同番組を見ていた東予地方の小中学生のうち、少なくとも九十人が「気分が悪くなった」などと感じていたことが、県警や教育委員会などの調ベで同日、分かった。
問題の番組を放送していたテレビせとうち(本社•岡山市)の電波が受信できる東予地方のうち、伊予三島市では十七日、市教委が小学校八校、中学校三校で被害実態を調査。その結果、▷気分が悪くなった(小学生十五人、中学生一人)▷目がチカチカした(小学生五人)ーなど計二十五人がテレビを見ていて異常を感じたと回答した。いずれも症状は軽く、病院に行った子供はなかったという。〈愛媛新聞・朝刊〉

●【香川】県内でも異常訴える
県内では八歳から二十歳の十一人が病院へ運ばれたことが十七日、分かった。いずれも症状は軽かったが、子供たちに人気のテレビ番組が原因とあって、被害は広範囲に及んだ。県消防防災課のまとめでは、「ポケモン」のテレビ番組を見てけいれんやひきつけを起こし、救急車で病院に運ばれた患者は、高松市五人、丸亀市一一人、三豊郡三人の計十人。このうち四人が入院したが、三人は退院。残り一人は脳波の検査をするため十七日も入院するが、十八日には退院する見込み。ほとんどが小学生、中学生だった。〈毎日新聞•香川版〉

●【島根】県内でも
七歳男児入院
県内でも十六日夜に七歳の男児が松江市内の病院に入院した。男児は「テレビを見ていて、目の前がぼ一っとして、気分が悪くなった」と話しているという。
男児は午後七時半ごろ松江赤十字病院(松江市母衣町)に運び込まれ、診察を受けた。病院側の話では症状は軽く、特に治療はしなかったという。〈毎日新聞・島根版〉

●【山口】子供たち十一人に症状 ー時意識不明者も
県内でも十一人の子供がひきつけを起こすなどして救急車で病院に運ばれていたことが分かった。うち厚狭郡楠町の女児(六つ)は一時意識不明になり、山口市の女子中学生(ニニ)は入院した。
県などのまとめによると、番組を見て発作を起こし、救急車で病院に運ばれたのは、いずれも六歳から十六歳までの子供だ

47  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

った。男子が二人、女子が九人。〈西日本新聞・朝刊〉

●【大分】小中学生ら五人が発症
県内でも視聴した小・中学生ら計五人が発症していたことが、県健康対策課の調べで十七日分かった。番組は県内の広い範囲で流れており、県警や県教委、テレビ局は「ポケモンショック」への対応に追われた。
県内には地兀テレビ局の放送はなかったが、TVQ(福岡市)の映像が直接またはケーブルテレビで流れ、子供たちは放映時刻に番組を見ていた。十七日夜までに判明した分では、九重町内の小学六年女児(ーニ)は自宅でけいれんを起こし、一時意識を失った。中津市内の中学二年女子生徒(一四)も自宅でけいれんを起こした。二人とも救急車で搬送されて入院、十七日に退院した。姫島村内の小学六年女児(ニー)も一時意識を失い、家族の手で村診療所に運ばれたが、点滴を受けてすぐ回復し十六日中に帰宅した。〈西日本新聞・朝刊〉

●【長崎】四人を病院搬送不安広がる
県内でも四人が救急車で病院に運ばれるなど、不安が広がつた。
四人は長崎市二人、大村市一人、対馬一人で年齢は七歳から十五歳。三人が入院したが、いずれも症状は軽く、十七日は全員がほぼ回復しているという。また、長崎市消防局には「子どもがポケモンをみて具合が悪くなった。病院を紹介してほしい」という電話相談があり、対馬・厳原町でも、同番組を見て気分が悪くなる小学生がいた。十六日、県内で「ポケモン」が視聴できたのは、ケーブル放送や共同アンテナがある地区。地上波では、長崎国際テレビ(NIB)が毎週金曜日、テレビ東京から二週遅れで放映しており、問題の第三十八話は、来年一月九日に放送予定だった。〈西日本新聞・朝刊〉

地方局も
放送中止

●放送中止相次ぐ三十八話以外も
テレビ東京は、問題となった三十八話の放送を今後予定しているテレビ局三十一社に対し放送の中止を要請。これを受けて三十八話については全社が放送を見合わせる見通し。〈産経新聞・朝刊〉

●地方十六社が放送を中止
地方のテレビ局十六社が十七日までに、同番組の放送を当面中止することを決めた。宮城県内でポケモンを放送している東日本放送(本社仙台市)も同日、年内の放送中止を決めた。
一週間遅れでポケモンを放送している青森朝日放送(八戸市)は二十三日の番組のほか、来年一月十日までに予定していた二番組の放送中止を決めた。〈河北新報・朝刊〉

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●北陸朝日放送が中止を決定
テレビ朝日系列の「北陸朝日放送」(HAB、金沢市松島)は十七日、原因とみられる第三十八話の放送中止を決めた。
HABはポケモンを毎週金曜日夕方五時から五時半、テレビ東京から四週遅れで放送。問題となった第三十八話は来年一月十六日に放送の予定だった。しかし、全国の子どもたちに大きな被害が出ていることから、HABはとりあえず三十八話を放送しないことに決めた。
今月十九、二十六日に三十五、三十六話を放送する予定だが、年明け以降は未定。編成を担当するHAB業務部は「テレビ東京の説明を聞いた後、三十八話を除いて放送を続けるか、放送そのものを打ち切るかを判断する」と話している。〈毎日新聞・石川版〉

●ポケモンの「問題作」、放送中止——テレビ新潟
テレビ新潟(本社・新潟市、日本テレビ系列)は十七日、同日午後四時から予定していた「ポケモン」の第三十五話「ミ二リュウのでんせつ」の放映を休止し、問題となった第三十八話「電のうせんしポリゴン」(一月十四日放映予定)の放映中止を決めた。
県内で「ポケモン」は、三週遅れで毎週水曜午後四時から放映されている。〈毎日新聞・新潟版〉

●福井テレビ、九八年六月予定の放送を中止
テレビアニメ「ポケットモンスタ—」(テレビ東京系)を見ていた子供たちが異常を訴える騒ぎが十六日夜、全国で相次いだが、県内では同日放送がなく、被害は出なかった。県内にはテレビ東京の系列局がないが、福井テレビが同番組を約半年遅れで毎週月曜日午後四時二十五分から放送している。同社によると、問題の番組は来年六月ごろの放送予定だったが、放送を中止するという。〈毎日新聞・福井版〉

●今週の放映中止
——長野放送
県内で「ポケットモンスタ—」を毎週金曜日に三日遅れで放送している「長野放送」(本社・長野市)は十七日、今週分の放映を中止することを決めた。来週以降については未定という。
ポケモンは、平均視聴率が一〇%前後で、同時間帯のほかの番組に比べ約二倍の人気番組。同社には十七日朝から「放送を続けるのか」などの問い合わせが視聴者から殺到したという。〈毎日新聞・長野版〉

●テレビ山梨、二十三日以降放映を休止
二十三日分以降の「放送休止」を決めたテレビ山梨は番組を買い取り、今年十月から火曜日の午後四時二十五分から放送していた。約半年遅れて放映しており、十六日の放送分は今回、子供たちが異常を訴えた第三十八話とは異なっていた。〈朝日新聞・朝刊〉

49  PART-1►「ポケモン事件」とメディア

●【奈良テレビ】同番組を六日遅れで放映している。問題になった第三十八話は二十二日の予定だったが、原因がはっきりするまで当分休止することを決めた。同社によると十七日、「ポケモン」をめぐって十五件の電話があった。大半は「子どもが楽しみにしているのでやめないで」という保護者で、苦情はー件もなかったという。〈朝日新聞・朝刊〉

●【滋賀】「ポケモンやめないで」子供たちの訴え相次ぐ
「びわ湖放送」(BBC)では同番組を、テレビ東京から二週間遅れて毎週日曜日午前七時三十分から放送している。問題となった「電のう戦士ポリゴン」は二十八日の放送予定だったが、十七日に中止を決定。また次回(二十一日)も放送を見送る。来年一月以降については「テレビ東京の調査結果を見て結論を出す」としている。BBCには早朝、小さな子どもの声で「ポケモンやめないで」と言っただけで切れる電話がかかったほか、父母から「放送はどうなるのか」と心配する声が多く寄せられた。(33)
また「京都放送」(KBS京都)は、問題の回を年明け二十五日に放送予定だったが、やはり中止を決定。次回放送分(二十一日)も別のアニメに差し替える。次々回以降の放送はBBC同様、キー局の対応を見て決めるという。
そのほか、「水口テレビ」(加入戸数三千五百戸)「近江八幡ケーブルネットワーク」(加入戸数二千百戸)の両ケーブルテレビでは同番組をリアルタイムで放送したが、異常を訴える子どもはなかつた。(34)〈中日新聞・朝刊〉

●【広島】中国放送は放映見合わす
県内では尾道、三原両市のケーブルテレビで放映されたが被害はなかった。中国放送(RCC、中区)は来月十七日に問題のシーンのある番組を放映する予定だったが、十七日、中止を決めた。
十六日夜に「ポケモン」を放映したのは、尾道ケーブルテレビ(尾道市)と三原テレビ(三原市)。いずれもテレビせとうち(本社、岡山市)の電波を受けて十六日午後六時半〜七時に放映したが、被害や苦情の連絡は入っていないという。三原テレビの中村勝総括営業兼総務課長は「雑音防止用のビデオシグナルプロセッサーを使っており、やや映像の鮮度が落ちたことが幸いしたのかもしれない」と話している。
一方、RCCでは毎週土曜日の午前六時から「ポケモン」を放映している。今月二十日以降の放映については、原因究明の調査結果を踏まえたうえで、放映するかどうか判断する方針。同局広報部によると、放映を続けるかどうかという視聴者からの電話の問い合わせは、十七日夕方までに約二十件あったという。〈毎日新聞・広島版〉

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㉝: 別に好んで八スに構えるつもりはないけれども、「ポケモンやめないで」という「子どもの声」の電話は、本当に子どもが自分の意思でかけてきたものかどうか、留保しておいたほうがいいかもしれない。
「子どもの声」が無条件に「正義」になる風潮を見越して子どもに電話をかけさせるやり口は、ある種の「運動」系でもすでに常套手段だし。
㉞: 滋賀県近江八幡周辺の子どもは光刺激に強いのか?
㉟:「映像の鮮度」ってなんだ?刺身じやあるまいし。つまり解像度ってことか?

●【テレビせとうち】岡山、香川両県で「ポケモン」を十六日午後六時半から放映した「テレビせとうち」(岡山市)には、苦情を含む多数の問い合わせ電話が寄せられたという。具体的な番組編成や体の異常を訴えた児童らへの対応は未定のまま。〈毎日新聞•岡山版〉

●問題の三十八話、放送中止南海放送
人気テレビアニメ「ポケモン」を二週間遅れで放送している南海放送は十七日、弘岡寧彦総合企画局次長視聴者センター部長が県庁内で記者会見。「番組と子供たちの症状との因果関係は不明だが、視聴者に危険が及ぶ可能性がある」として、問題となった第三十八話の放送を中止する方針を明らかにした。十六日までに三十六話分を放送したが、第三十八話以外の放送を今後続けるかどうかはテレビ東京の調査委員会の報告を待つて決めるという。
県内では、キー局のテレビ東京と同じ内容で「ポケモン」を放映しているテレビせとうち(本社・岡山市)が東予地方で受信できるほか、同局の番組を新居浜テレビネットワーク薪居浜市)や今治シーエーティーブイ(今治市)など東予地方の五つのケーブルテレビ局が同時再送信している。〈愛媛新聞・朝刊〉

●【島根】山陰放送二週間分の放映中止
同番組は県内では松江、出雲両市のケーブルテレビで両市内の契約世帯に向けて十六日午後六時半から三十分間放送された。両市の契約世帯は約二万二千軒。
また、山陰放送(鳥取県米子市)は同番組を東京より八日遅れで毎週水曜午後四時から放送しているが、二十四日放送予定の同番組の放送とともに、十七日放送予定の番組も放送を取りやめ、この日は代わりにバラエティー番組を流した。それ以降の方針は未定。〈毎日新聞・島根版〉

●RKCは年内放送中止
視聴者が救急車で病院に運ばれる騒ぎが相次いだ「ポケモン」についてRKC高知放送は十七日、年内いっぱい放送を見合わせることを決めた。
RKC高知放送は「ポケモン」を毎週木曜日に放送しており、中止するのは十八、二十五日の二回分と、三十一日放送予定だったスペシャル番組。舎冋知新聞・朝刊〉

●【山口】テレビ山口は今週分を休止
「ポケモン」を放送したTVQ(本社、福岡市)の電波を受信できる県西部に集中。山口、萩、徳山、下松各市のケーブルテレビでも放送されたことから、番組を見た児童生徒はかなりの数にのぼるとみられる。〈西日本新聞・朝刊〉

51  PART-1►「ポケモン事件」とメディア

●【テレビ大分】
「ポケモン」は地元のテレビ大分(大分市)が毎週金曜午後四時半から三十分間、数週間遅れで放映している。同局は十七日朝、来年一月ーー十三日に放送を予定していた問題の第三十八話の放映を中止し、一話飛ばすことを決めたほか、今週十九日に放映予定分は、ドキュメンタリー番組に差し替えることにした。〈西日本新聞・朝刊〉

●鹿児島放送は十七日午前、今回問題になった番組(第三十八話)のみを放送中止すると発表。だが、直後に「放送はすべて見送り」に変更するなど混乱ぶりをうかがわせた。同社によると、ポケモンは、視聴率がー〇パーセントを超える、夕方の超人気番組という。同社には視聴者約五十人から「問題番組は放送するのか」との問い合わせが相次いだ。〈西日本新聞・朝刊〉

続く制作者たちの戸惑い

●色彩点滅やフラッシュ特別な技法でないのに
テレビ東京系のアニメ「ポケットモンスタ—」(ポケモン)を見た子供たちが次々にショックを受けた問題は、医学的な因果関係が特定できない段階だけに、現場のアニメ制作者やテレビ局の困惑は強い。
「重大な被害事実は厳粛に受け止めているが、今回だけ特別な技法を使ったわけではない。どうしてこうなってしまったのか…」と、「ポケモン」を制作する小学館プロダクションのテレビ企画部・盛武源担当プロデューサー。
同氏によると、十六日放送分で問題の後半部分に限れば、通称「パカパカ」と呼ばれる色彩を交互に点滅させて緊迫感を高める技法と、強い光を放射する「フラッシュ」という技法が使われたが、いずれも「通常のア二メ制作で使われる演出方法で、決して〃禁じ手〃ではない」と言う。
番組を見た別の民放局の編成マンも「パカパカは、アニメでは古典的な手法。これまで、さんざん使われてきたが、被害など聞いたことがない。ストーリーの流れや視聴者の意識との関係で、偶発的に〃八マった〃のでは?もし、これが原因となったら、アニメの作り方は変えざるを得ない」と首をかしげる。
アニメ番組は、テレビ局が外部プロダクションに発注することが多い。
オンエア前には、編成、考査など局内の各部署でチェックする態勢をとっている。
「ポケモン」の場合は、放送用に仕上がったテープを、制作側と局側が別々に試写、技術面や表現・倫理などに問題がないか「二重チェツク」しているという。
今回の出来事はほかのテレビ各局にとっても、人ごとではない。「クレヨンしんちやん」や

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「ドラえもん」など子供に人気のアニメを放送するテレビ朝日は「因果関係がはっきりしないと何とも言えないが、短絡的に〃アニメ悪者論〃につなげられても困る」と、制作や放送状況のチエックに必死。
「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」など、ファミリー向けアニメが強いフジテレビも「今回の事件とは直接関係しないと思う。ただ、通常の演出が思わぬ事故を招くとしたら、制作や放送に慎重な対応が必要になる」(広報局)と話している。またNHKも「放送技術研究所に目から入る刺激による感覚などへの影響を調査するセクションがあるので、今回の現象を取り上げられないか、検討する」(河野尚行放送総局長)ことを明らかにした。〈産経新聞・朝刊〉

◎一線超えた? 刺激志向
テレビ東京系の人気アニメ番組「ポケットモンスタ—」を見ていた多くの小、中学生らが起こした体調異常は、赤や青の光を画面で激しく点滅させるなど、視覚刺激が強い映像技法の影響が指摘されている。テレビ関係者は、映像メディアが新しい映像処理技術によって刺激性を高めつつあったここ数年の傾向をあげ、「ポケモンは、たまたま限界点を超えてしまったのではないか」という。多くの場面を瞬間的に切り替え、見ている人の感覚をより強く刺激しょうとするコマーシャルフィルムも増えている。実験的に、脳波を測定して刺激の効果を調べる広告代理店もある。
テレビ東京は十七日の記者会見で「使われている技術は、ア二メ制作現場では決して珍しくない」とコメントした。他の民放関係者の間には「ここ数年、言葉や絵柄の過激さとは別に、映像処理が過激になっていたことと無関係ではないのでは」という声も多い。
同じ技術でも、使う色の種類や背景、点滅の周期、その組み合わせによって、衝撃度が違ってくる。「内容的にはおとなしいポケモンが、技術的過剰さの限界点を、図らずも超えてしまった」との見方だ。
コンピューター•グラフィツクスによる合成をはじめ、光学的処理が簡単にできるようになった映像技術の進歩もある。短い場面をつないで、ストロボをたいていくように見せる手法は一番、効果的だ。
フジテレビの広瀬英明広報局長は、映像メディアの現状を「光の速射砲メディアになりっっある」と表現した。番組を変えないで、かつ集中して見てもらうために、飽きさせないことが重要になる。勢い、「常に眼球を刺激する」見せ方が多くなりがちだ。
広告代理店の関係者らによると、テレビCMはここ数年、場面を切り替える間隔をどんどん短くする傾向にある。以前は二、三秒に一場面(カツト)が一般的だったが、最近は一秒に一場面あるかどうかというCMが増えている。

53  PART-1►「ポケモン事件」とメディア

スポーツシューズ「ナイキ」のCMの場合、今年度の広告業界での賞を受けた「サッカー編」は、燃え上がる炎、笑う悪魔の顔、ボールをける場面、倒れる人の顔、へディング場面……と、三十秒の間に三十三の場面が次々と現れ、たたみかける。こうした手法は化粧品や子供向けのお菓子のCMにも目立つ。
人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇場版で、今年公開された「シト新生」予告編も話題になった。鮮やかな赤と黒を基調に、平均で〇・五秒にー回、場面が切り替わる。「一秒に一回以十の頻度は、メッセージというより単に光の刺激を与えているのに近い」と関係者らはいう。
広告代理店の第一企画生活研究センターは、昨年暮れから、脳機能研究所(所長H武者利光東工大名誉教授)と共同で、被験者にテレビCMを見せて脳波を調ベ、映像技法の効果を測る実験をしている。 (36)
同センタ—の相原博之・副部長によると、ーー、三十代の人の実験では、カット数が多いほど喜びや快感を示す数値が高い傾向があった。競合する飲料のCM比較でも、倍以十違うカット数が快感数値の高さの一因になったとみられた。
相原副部長は「コピー、つまり言葉の力が落ち、映像のインパクトで訴える傾向が強まっているためだ」と話す。幼いころからテレビゲームに親しんでいる年代には、光の刺激が強い方が心地よく感じられるのではないか、という。〈朝日新聞・朝刊〉

教育の現場では
●【苫小牧】事態を受けて、苫小牧市教委は十七日午後、市内三十五小中学校に、実態を把握するよう通知。同市教委は「搬送されなくても、具合が悪くなった子がいる可能性もある」とみており、各校からの報告をもとに、週明け二十二日の全市教頭会議で対策を協議する。〈北海道新聞・朝刊【道央】〉

●ポケモン被害の実態把握に着手/青森県教委
ケーブルテレビで同日放映された青森市では十七日、市教委が管内の全小中学校六十九校に対し、児童や生徒に放映による異常が確認された場合、市教委に報告するよう電話連絡した。県教委も同日、県内六カ所の教育事務所に対し、今後管内の学校の児童や生徒らに被害が認められた際、報告するよう電話連絡した。〈河北新報・朝刊〉

●【茨城】「ビデオ見ないで」——県教委注意
県教育庁は十七日、県内のすベての公立小中学校八百二十五校に対し、各教育事務所を通じて、十六日放映された「ポケモン」に関する注意を電話で行うとともに、被害状況の調査に乗り出した。
注意は、問題の番組の録画ビデォを見てけいれんを起こした

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36: へえ、広告代理店って、こういう「実験」もやってんのね。エヴアのイントロでみんな卒倒しなくてよかったね。

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ケースが県内にもあったことから、被害の拡大防止のため、子供が録画ビデオを見ないようにするほか、テレビを長時間見たり、近くで見ないように指導することも求めた。
さらに、教育事務所ごとにー校を選び、児童生徒が問題の番組を見た状況や、その後の体調悪化の有無を調査。この結果、十七日夕方までには、番組を見て具合が悪くなり、欠席した児童生徒はいないという。〈毎日新聞•茨城版〉

●「人権に配慮」ポケモン被害調査せず【綾瀬市教委/神奈川】
綾瀬市教委は、十七日に県教委から依頼された「ポケモン」の被害調査が、子どもたちの人権にかかわるとして、実施しなかった。市教委によると、県教委から同日朝、「午前中に子どもたちへの影響を調べて報告するように」との通知があった。(37) しかし、短時間で調べるためには、ひきつけなどの症状が出た
子どもに手をあげさせるなどの方法を取らなければならず、「特定の病気との因果関係などが報道される中で、症状を訴えた子どもがいじめや差別の対象になることを避けるべきだと判断した」という。〈朝日新聞・朝刊〉

●【山梨】県教委が調査指示
今回のポケモン騒動で、県教委スポーツ健康課は十七日、教育事務所を通じて、県内の小、中学校約三百校に医療機関で診察を受けた子供の調査をするよう指示した。
体に異常を訴えて救急車の出動を要請したのは八件だったが、同課は保護者が病院に連れて行ったケースも把握するために、独自の調査を行う。十八日中に結果をまとめる予定という。〈朝日新聞・朝刊〉

●【静岡】事態を重視した浜松市教委指導課は、市内の二十四幼稚園と九十六小中学校に被害状況を報告するよう文書で要請、ー園と数校から報告があった。「相当数の園児、児童が吐き気や目まい、頭痛などの症状を訴えた」という。中には吐き気で寝込み欠席をした児童も。学校側からは「子供によって感じ方が違い、症状の把握が難しい」との戸惑いの声も寄せられた。〈静岡新聞•朝刊〉

●【名古屋】名古屋市も調査へ
名古屋市教委は十七日、テレビアニメ番組「ポケモン」でどれぐらいの児童・生徒の健康に影響があったかの調査を、全小中学校を対象に実施することを決めた。
市教委では当初「実数を調べたところで、テレビを見るなと言えるわけではない」として調査を実施する予定はなかった。しかし、市内の小中学校二十校を無作為で選んで電話で聞き取りをしたところ、深刻に受け止められていたことから、調査を決めたという。〈中日新聞•朝刊〉

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37: ああ、出た「人権」!もう自動的な反応みたいなもんですな。ポケモンが放送中止になった原因はおまえが倒れたからだ、と被害者の子どもが「差別」されるかも、というとんでもない意見も出てきていた。

55  PART-1▶ 「ポケモン事件」とメディア

●【岐阜】ポケモン問題で「いじめ」の恐れも 各務原市教委が小中校などに文書
各務原市教育委員会は十七日、「刺激的なテレビの視聴について」と題した文書を市立幼稚園三園と小、中、養護学校計二十四校の校長あてにファクスで流した。
文書は、一連の騒ぎを受けた報道の中で、子どもたちが倒れるなどした原因として「光過敏性てんかん」という言葉が使われている点を指摘。学校や保護者間で「この『てんかん』という言葉が先行し流布してしまわないかということを心配しています」と述べている。
続いて、園児や児童、生徒への配慮として「『てんかん』については、人権にかかわることでもありますので、学級会などの際、面白しろおかしく取り扱うようなことのないよう慎重な配慮をお願いします」と呼び掛けている。〈中日新聞・朝刊〉

●【奈良】奈良市立左京小学校(五百六十九人)では十七日朝、何人の子が番組を見ていたか各学級で調べた。ケーブルテレビの普及もあり、約半数の児童が見ていた。今中智恵子教頭は「番組の実態を確かめて、子どもたちへの指導を決めたい」と話す。同市立若草中学校でも生徒に異常がないかどうか確かめた。
生駒市立生駒北小学校も須藤宮子校長が、十七日の職員朝礼で「冬休みもあるので、テレビ番組を選んでみるよう子どもに話してほしい」と指示した。〈朝日新聞・朝刊〉

●【兵庫】ショック大きい教育現場、実態把握に追われた担任県内の小・中学校では十七日朝から、「気分の悪くなった人はいないか」とクラス担任が子供たちの状態を聞くなど、被害の実態把握に追われた。ひきっけや、けいれん発作を起こした子供は県内全域にわたっており、計二十九人が救急車などで病院に運ばれた。学校現場からは、子供たちの人気を集めていただけに、「楽しんで見ている子供たちのことを十分考えて」と制作者側に求める声が上がり、異例の事態にショックを隠せない様子だ。〈毎日新聞・兵庫版〉

●【滋賀】県教委は近く、「青少年を守るための有害情報等対策協議会」を招集し対応策を検討する方針。同協議会は十五日に県青少年対策本部内に設立されたばかり。〈中日新聞・朝刊〉

●【岡山】学校現場では
同市万倍、市立芳明小学校では、六百五十二人の児童のうち七割にあたる四百六十人が十六日の同番組を見ていたという。病院で治療を受けた児童はいなかったが、約五十人が「目がチカチカした」「頭が痛くなった」などの症状を感じていたという。和泉孝治校長は「ここまでの人気とは思わなかった」と驚き、「原因がはっきりしないうちに、子供にテレビを見るなと

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38: ここでも「差別」が。ほんとに、今の学校はこういう「市民サマ」系のもの言いを考えなしに増幅してゆくターミナルになっている。そんなこったからガキが暴れてもほっとくしか手がなくなってるんだっての。
39:「テレビは選んで見るように」という指示をきっちり出したこの校長先生は偉い!
40:「楽しんで見ている」からこそ倒れたということを、こういう先生方は考えないらしい。

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いう訳にもいかないし……」と対応に苦慮している。(41) 〈毎日新聞・岡山版〉

●【香川】今回の騒ぎについて、県教委や各市教委では「重い症状もないので、特に各学校への指示はしない」としており、各学校が独自に対応。子供たちの間にも大きな不安は広がらなかったようだ。
高松市立花園小では、「担任を通してテレビを近くで見たり、長時間見たりしないよう児童に伝えた」(岩島卓男校長)という。〈毎日新聞・香川版〉

●【島根】県教委保健体育課は「番組と症状がどう結びついたかはっきりしておらず、家庭の中でのことでもあるので、今のところは様子を見守りたい」としている。〈毎日新聞・島根版〉

小説のなかの出来事

◎米のSF小説に、酷似した症状
今回の事件と酷似した症状が、今年六月に新潮社から発売された米国のSF小説「致死性ソフトウェア」(グレアム・ワトキンス著)に取り上げられていることが、十七日分かった。小説はコンピュータ—中毒症候群と名づけられた架空の病気がテーマ。
男性がゲームソフトで遊ぶ場面で、「画面が赤くひらめいた。それに続く画面のチカチカは、ひどく長い間続いたように思われた」「体が激しくけいれんし、弓のように反り返った」など、今回の被害者の症状と酷似している表現がある。(42) 〈毎日新聞・朝刊【北海道】〉

警告!!

◎ハイテク娯楽に要注意画面に近づきすぎないで
十年前にテレビゲームをしていた子どもたちに起きた、今度と似たような症状について、日本で最初に報告した前田泰史・まえだこども医院院長は、「私が報告したテレビゲームの場合と、ム今度もほぼ同じといっていいと思う」といい、家庭で、子どもたちがテレビゲームを行う場合の注意点を次のようにあげる。
(一)テレビの画面に近づくほど、目に対する刺激が強くなる。ニメートル以内に近づかないこと(二)暗い部屋で見ていると、それだけテレビの光からの目への刺激も強いので、部屋に明かりを必ずつけること(三)毎日ゲームは行わない。また、ゲームを行う日には、遊ぶ時間を決めて、絶対に守ること。
さらに前田さんは「ゲームの画面を長く見続けることによつ

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41: 繰り返すが、どうして「テレビを見るな」と子どもに言えないんだろう。
42: だからどうし

57 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

て、近視、乱視などになりやすい。室内で長時間遊ぶことで慢性的に運動不足になり、疲れやすい、肥満の子どもにもなりやすいと思う」と強調する。〈朝日新聞・朝刊〉

◎東正樹・総合子供の遊び情報研究室長(四十七)は「今回の騒ぎは、映像表現法の問題から起きた。『ポケモンを見て倒れた。ポケモンそのものが不気味』という誤解につながらないか、が気にかかる。せっかく子供のコミュニケーション手段として広がっている〈ポケモン遊び〉を禁じる方向につながらないよう願っている」と話す。〈大阪読売新聞・朝刊〉

◎ポケモン発作「特異な症状ではない」精神医学者が警告
精神医学などの専門家たちは十七日、映像情報と健康のかかわりが医学上もエアポケットになっており、改めて研究を広げる必要性を訴えた。
一方、各医療施設で手当てを受けた子供たちの状況から、ー連の症状が、極端な光刺激に脳波が反応、激しい一過性のけいれん発作を起こしたものだったことがわかった。
今回の集団症状を、専門家は「特異な症状ではない」と強調する。
吉川武彦・国立精神•神経センター精神保健研究所長は「大人のように脳が成熟していない子供が、光の刺激を受けて一過性のけいれんを起こしたもの。過敏の程度や症状に個人差はあるものの、被害にあった子供が特殊だというわけではない。条件が整えば、全国でこれだけの数に達するのも無理ない」と説明。また八木和一・国立療養所静岡東病院長は「小児の五丨一〇%がこうした光に対する発作の素因を抱えている」と指摘する。〈東京読売新聞・朝刊〉

ゲー厶業界では
◎ゲーム業界では取り扱い説明書に警告表示を入れるなどの対応を取っている。きっかけはー九九三年にイギリスで起きた子どもの健康被害。任天堂やセガ・エンタ—プライゼスなどのゲームで遊んでいた子どもたちが、けいれんなどの発作を引き起こすケースが報道されてからだ。
その後、大手メーカーはゲームソフト、ハード両方の取り扱い説明書などに「ごくまれに、強い光の刺激や点滅を受けたりゲーム画面等を見たりしている時に、一時的に筋肉のけいれんや意識喪失等の症状を経験する人がいます」(任天堂)と、ルビをふつた警告文を入れている。各メーカーとも消費者からの発作の報告は受けていない、という。〈朝日新聞・朝刊〉

●〃点滅〃に要望書も
今回の事故を起こしたアニメの〃原作〃は携帯用ゲーム。大手ゲームメーカー「任天堂」のヒット商品だ。同社は自社ゲーム機「ファミコン」にゲームを提供するソフト製作会社に、

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43: このあたりから、これは特異な症状ではない、という方向での軌道修正が始まる。エイズの語られ方の変遷なども同じだった。次には「誰にでもあり得ること」となって、「みんなで考える問題」というふうに事態はどんどん丸められてゆく。誰にでもそうそう起こらないことだったからこそ、具体的な被害者の実数が六百数十人なんだろっての。

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「画面をむやみに点滅させるゲー厶を作らないで欲しい」という要望書を出していた。また、ソフトはすべて社員が最後まで実際に操作し、過度の残虐シーンの有無をチェックする。画面がチラっく場合は、修正要望も出す構えだ。
また、他のメーカーも、「連続して遊ぶと事故の発生する危険性がある」と説明書で明記して消費者に注意を促し、医療研究機関に研究資金援助をするなど、業界を挙げてゲームと発作の関連性の解明を急いでいる。だが、ある局のアニメ関係者は「ゲーム業界の取り組みは知っていたが、問題となった手法は、『パカパカ』と呼ばれ、古くからアニメの世界で当たり前のように使われていた。自分だって、問題があるとは思わなかっただろう」と話す。だとすれば、光に対するこのゲーム業界の〃警戒〃を放送界はストレー卜かつ深刻には受け止めていなかったようだ。〈東京読売新聞・朝刊【解説】〉

親たちは
◎「うちの子も当日、テレビを見ていたのでびっくりした」と三歳の女の子を持つ千葉県八千代市の主婦(二九)。「パッパッと画面や色が切り替わるものは他のアニメもある。戦うシーンや、血が出るシーンなど激しいものも。気にはしていたのだが……」と戸惑いを見せる。
東京都足立区の主婦奥成泰子さん(三三)は「テレビゲームをしていて具合が悪くなった子どもがいることや、ゲームソフ卜の警告表示は知っていたけれど、実際にこんなことが起こるなんて」と話す。六歳の娘は毎週番組を欠かさず見ており、ゲームもよくしている。「時間を限るようにしたいと思うけれど、すべてやめさせるというのは無理。早く原因が知りたい」「テレビ局やゲーム会社は娯楽を与える側。規制するのではなく、親がしっかり選べばいいのではないか」と冷静にとらえる声もある。しかし、実際に見てみなければ、中身が分からず、判断できないのが現状だ。ニ歳半の子を持つ東京都渋谷区の主婦は「子ども向け番組ははんらんしている。暴力的なものや刺激の強いものを大人が判断できる指標を作り、選ぶ材料を公開していくべきではないか」と話している。〈朝日新聞•朝刊〉

◎「ポケモン」被害の再発防げ主婦・四十二゠千葉県印旗郡十六日夜放送のテレビ東京系列のアニメ番組「ポケットモンスタ—」を見ていた子供たちが、けいれんやひきつけを起こし、全国で七百人以上が病院に運ばれたことを知って驚きました。
実は、わが家でもこの時間、同じ番組にチャンネルを合わせていたのですが、幸い、中学生と小学生の三人の子供たちは入浴や食事に忙しく、熱中して見ていなかったせいか何事もありませんでした。
テレビゲームをしていた子供たちが「光過敏性てんかん」な

59  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

どの症状を起こし、外国で問題になっていることは知っていました。しかし、毎日見ている日のテレビでも、同じようなことが起きるとは、本当に恐ろしいと思います。
問題のアニメ番組は、かわいいキャラクタ—がたくさん出てくるので小学生の娘も好きでよく見ていました。
こうしたことが二度と起きないよう、原因究明を急ぐのはもちろんですが、テレビ局は番組放映にあたっては放送内容のチェックを徹底してほしいと思います。〈東京読売新聞・朝刊【気流】〉

社説より
◎「ポケモン」がポケットモンキーでなく、ポケットモンスターの略称だと知っている大人は、ほぼ限られている。そのア二メやキャラクタ—を愛する子、または孫を持つ世代の人間だろう▶テレビ東京系のその人気番組「ポケモン」を見ていた茶の間の子どもたちに異変が起こり、全国で六百人を超える視聴者が次々に倒れた。米国CNNテレビも「日本で奇怪な現象」として報じたという。記憶喪失などで二百人以上が入院したというからただごとではない▶テレビの世界の騒動では「サブリミナル効果」というのがあった。映像のなかに、人間の目では感知できないほど短いコマ(画像)を挿入する方法で、効果のほどは定かではないが、それを見る人の潜在意識に残るのだという。こんどの騒ぎは光化学スモッグ・テレビ版かもしれない▶ジョージ・才ーウェルの反ユートピア小説『ー九八四年』には、独裁者である〃偉大なる兄弟〃のお告げがテレスクリーンにあらわれる場面が、しばしば登場する。こうして管理された人びとは〃思想の囚人〃として独裁者に支配されていく▶子どもは柔軟な頭脳と純粋な感性の持ち主だから、テレビで伝えられる情報やメツセージには鋭敏に感応するし、それをまるごと受け入れてしまう。十六日付の本紙生活面にも、赤ちゃんの脳と心には想像以上に反応する機能があるという新しい研究の成果が報道されていた▶こんどの問題にむやみと過剰反応するのはどうかと思うが、テレビやゲーム機など電脳世界には、それが人間にどんな影響を与えるのか、まだ解明できないなぞがいくらでもある。「ポケモン」騒動も〃未知との遭遇〃だったのだろう。〈産経新聞・朝刊【産経抄】〉

◎全国で人気アニメ番組「ポケモン」ショツク
ポケットに納まる電子の箱に閉じこめていたはずのモンスターが、二年足らずの間に文字通りの怪物に成長した。テレビの人気アニメ番組を見ていた全国の子供ら二百人以上が、引きっけを起こすなどして入院した。異常を訴えたのは六百人を超す▶「ポケモン」の愛称で幼稚園児や小学生をとりこにした携帯型ゲーム機のソフトは、今年の

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44:「光化学スモッグ」がなかば今回の「ポケモン事件」のようなフオークロア的な想像力を媒介にしたものだったことを示唆している点、ちよつと注目。

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代表的なヒツト商品となり、発売元の任天堂を業績不振の窮地から救った。テレビや漫画雑誌でも増殖を続け、さまざまなキャラクター商品も売り出されるなど猛威を振るっている▶もともとは愛らしい外見と特異な能力を持つ小怪獣である。捕獲し戦わせながら育ててきた子供たちにすれば、今回の騒動はお気に入りのペツトに思わぬ反撃を食らったような気分だろう。不特定多数が見るテレビ画面は、同時多発の危険性が潜むことを実証した。原因究明と対策を急いでほしい▶天国の横井軍平さんは、今どんな思いだろう。ポケモンの揺りかご「ゲームボーイ」の開発者で十月急逝した。マジツクハンドや光線銃など数多くのヒット玩具を送りだし、花札屋にすぎなかった任天堂を、業界の雄に引つ張り上げた伝説のアイデァマンだ▶横井さんは常々、飛躍的進化を遂げる中で派手さとスピードを追い、異常に興奮を誘う傾向が強まるゲームの世界に疑問を投げ掛けていた。「枯れた技術の水平思考」を強調して、想像力と遊び心の入る余地を追求し続けた▶怪物に取りつかれ、反対に遊ばれていないか、ここらで省みるべきだ。ポケモンは従来のゲームと異なり、ケーブルを介して友達と交換することで、黙々と一人で遊んでいた世界を広げてもくれた。悪役にするには忍びない。〈南日本新聞・朝刊【南風録】〉

◎ポケモンショックというべきか。パニックといった方がいいかもしれない。テレビのアニメ番組「ポケットモンスタ—」を見て数百人もの子どもたちが入院した。きのうはゲームソフトを作った任天堂の株が売られた▶第一報が入った夜の編集局は見ものだった。中堅記者が次々に電話に取り付いた。取材先はわが家。「ピカチュウが出たところで画面がピカピカしたらしい」。子どもたちからの情報で輪郭が見えてきた▶ポケモン人気のほどは数字にも表れている。テレビ視聴率日報の速報を見ると、先日の火曜日の夕方六時半。ポケモンのチャンネルの占拠率は三〇%強。テレビをつけていた十軒に三軒はこの番組だった▶もう一つ、別の数字。永谷園がこの五月からふりかけ、カレー、ホットケーキミツクスに「ポケモン」の名をかぶせて売り出した。半期の売り上げ予想は十五億円。実績は四十七億円。予想の三倍以上も売って、減益予想が一転、増益になった▶こうなると、その名のとおりモンスタ—というにふさわしい。もちろん「化け物」「怪物」の意味。ただしモンスタ—のもとは「注意する、警告する」という意味を持つラテン語「モンストルム」だそうだ▶子どもたちが「目の前真つ白」になった原因はまだしっかりとは分かっていない。あまりの面白さに画面にのめり過ぎたところへ、強烈な光の刺激が入り込んだとすれば、とりあえずは「見る時はテレビから少し離れて」というところか。パニツクはモ

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45: 自分の家に電話取材する記者たちの様子をとらえたこのコラムは結構ポイント高い。

61  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

ンスタ—が日本の皆に出した「注意、警告」なのだろう。〈中日新聞・朝刊【中日春秋】〉

◎テレビアニメ・ポケモン事件
騒ぎになっている「ポケモン」のビデオを見た。ポケモンと聞くと、まずはポケットモンキーを想像するという、そんな知識しか持ち合わせていないのだが▶正しくは「ポケットモンスタ小、中学生に人気のゲームソフトだ。子どもたちはさまざまな冒険を仮想体験しながら、百五十を超える怪物(モンスター)を集める。ゲーム機同士をケーブルでつなげば、友だちと怪物の交換もできる。それをアニメーションにしたテレビ番組で、体の異常を訴える子どもが続いた▶問題を起こした十六日放送分の中身は、相当に「高度」だ。通信回線でモンス夕ーを転送するセンターに苦情が殺到する。コンピューターのネットワークに何者かが侵入したらしい。主人公たちがコンピューター内部に送り込まれるが、手違いでコンピュータ—ウイルスを退治するワクチンソフ卜が稼働し……▶年配の人の多くは、筋書きにアレルギーを起こしてしまうだろう。コンピュー夕ーの中だから、舞台は無機質で絵も冷たい。ワクチンソフ卜に擬した巨大な注射器が向かってくると、思わず避ける子もいるかもしれぬ。クライマックスの爆発シーンは、なるほど、チカチカツとくる▶では、このアニメは悪質か。判断は少々むずかしい。登場する人間や動物、怪物の顔つきにはむしろ親しみがもてるし、人が殺されるわけでもない。もちろん、大勢の子どもたちに被害が及んだのだから、配慮に欠けた点があったのは確かだけれど▶アキハバラ博士なる人物が出てくる。電脳街・秋葉原とともに、鉄腕アトムの恩人、お茶の水博士も思い出させる。半世紀近く前のあのころ、子どもたちはメンコやおまけカードを友だちと交換した。いまの子はポケベルやパソコンに囲まれ、ゲーム機を使い怪物を交換している。起こるべくして起こった事件のような気もしてくる。〈朝日新聞・朝刊【天声人語】〉

◎「ボーダーレス時代」のポケモン騒動
子供たち多数の被害が出たテレビ東京の人気アニメ「ポケモン」は、映像の影響調査が終わるまで、放映を見合わせることになった♦ビデオ業界でも貸し出し自粛の動きが出た。一連の症状は番組を見て起きたのだから当然だろう。極端な光刺激に脳波が反応、激しい発作が起きたことは確からしい♦映像と健康のかかわりはまだ医学上もエアポケットというが、ゲーム機ではすでに注意喚起がされていた。イギリスではテレビでも自主規制があるという。残念な事件だった♦うかつを繰り返さないよう確かな究明と対応を望む。無論、問題はテレビ東京、ポケモンに限らない。放送界全体のことだ。小さなモンスタ—が大きな警告を発した♦それ

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46: じつに最近の「天声人語」らしい、支離滅裂なコラム。「ポケモン」の説明をして事態の解説をした後に、「では、このアニメは悪質か。判断は少々むずかしい」ときた。で、「起こるべくして起こった事件のような気もしてくる」というどうでもいい締め。これだから新聞記者は、と言いたくもなる。

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は、何かとより強い刺激を求めるような社会全体、技術の追求に追われ心を忘れがちな時代への警鐘でもあると受け止めた方がいいかも知れない♦刺激の強い大人の世界とゆったりしたものが必要な子供の世界がボーダーレス(境界不明)になってもいる。すしだって子供にはわさび抜きがあるのに。〈東京読売新聞・夕刊【よみうり寸評】〉

◎ポケモンという妖怪
マルクスの「欧州に妖怪(ようかい)がはいかいしている。共産主義という妖怪が」の口まねをするなら「日本に妖怪がはいかいしている。ポケモンという妖怪が」ということになろうか◀最初は野山や街のどこかに生息する百五十一種類のポケットモンスターを探し、飼いならして成長させるコンピューターゲームだった。やがてテレビアニメ化されて大評判になった。カードゲーム、バトルめんこ、マスコット人形など関連商品は百種類以上に及ぶ◀ポケモンの縫いぐるみは愛きょうがあるが、テレビの「ポケットモンス夕ー」は愛きょうをかなぐり捨て、モンスター性を発揮した。多数の子どもたちが気分が悪くなった原因は明らかではないが、激しいせん光、赤や青の点滅などに関係があることは確かだ◀目の網膜は写真のフィルムでも、ビデオカメラでもなく、スーパーコンピューターのようなものだと視覚生理学の村上元彦さんが書いている(岩波新書「どうしてものが見えるのか」)。網膜は膨大な画像の情報を同時に並列処理して脳に送り込む複雑な機能を持っている◀「感覚の強さは刺激の強さの対数に比例する」という法則があるそうだ。つまり光を二倍明るく感じさせるには光の強度を十倍にしなければならない。三倍明るく感じさせるには百倍、四倍感じさせるには千倍。テレビの「ポケットモンスター」は刺激を求めて光の強度をつり上げ、スト口ボのようなせん光を出し、赤、青の原色を点滅させた◀子どものスーパーコンピュータ—は、膨大な画像の情報を一度に送り込まれて、処理し切れずにダウンしてしまった。それがポケモン騒動だったかもしれない。目は脳と密接な関係にある。問題のポケモンのタイトルは「電のうせんしポリゴン」。脳のせんし子どもも負けてはいられない。〈毎日新聞・朝刊【余録】〉

動き出した調査・研究会
●テレビ東京が「実態調査チー厶」を発足
テレビ東京は十八日、総務局を中心とする「実態調査チーム」を発足させた。メンバーは約二十人で、被害者家族からの電話をもとに患者リストを作成し、具体的な症状などについて調査を進める〈東京読売新聞・夕刊〉

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47: 何でもかんでも、社会や時代との関係でとらえてみようとする性癖が常に正しいとは限らない。
48: イントロのマルクス云々は爆笑だが、視覚刺激と脳の関係を比喩として語ったところは悪くない。
49: 結局は医者と「エラいさん」である。

63  PART-1►「ポケモン事件」とメディア

●小児科医らも調査チー厶にテレビ東京が方針
テレビ東京は十七日の記者会見で、同社内に設置する調査チームに、小児科医ら外部の専門家らの参加を求めることなどを明らかにした。
チームは金澤龍一郎•常務取締役編成総局制作専任局長を座長とする。テレビ東京では現在、調査チームに加わってもらう小児科医ら専門家を人選中で、会見した森広成•編成総局編成選任局長は「専門家の意見を踏まえて速やかに原因を突き止めたい」と話した。〈朝日新聞・朝刊〉

●民放連、調査へ
アニメ番組「ポケットモンス夕ー」を見た小、中学生らが異常を訴えた問題で日本民間放送連盟(会長、氏家斉一郎・日本テレビ放送網社長)は十七日、事態を「テレビ四十年の歴史の中で初めて生じた問題」と重大に受け止め、調査・研究して必要な対応策を講じると発表した。〈朝日新聞・朝刊〉

●テレビ・ポケモン事件で研究班分析
テレビゲームなどの光刺激で誘発される発作の研究に取り組んでいる小児科医・精神神経科医らでつくる共同研究班(代表゠清野昌一・国立療養所静岡東病院名誉院長)は十七日、テレビのアニメ番組「ポケットモンスター」を見て体調異常を起こした子供たちを対象に、全国調査に乗り出すことを決めた。研究班はゲーム会社のセガ・エンタ—プライゼス、ソニー・コンピュータエンタテインメン卜などの出資で三年ほど前から活動開始。テレビゲームの体への影響を研究している。〈朝日新聞•朝刊〉

十二月十九日

番組は休止の動き

●テレビ東京の森広成•編成専任局長は同日の記者会見で、ーー十三日に予定していた放送(第三十九話)の休止についても正式に発表。三十一日のスペシャル番組と、来年一月の関連クイズ番組についても、「個人的にはかなり(放送は)難しいと思う」と語った。〈産経新聞・朝刊〉

●アニメ番組「ポケモン」放送休止に同調テレビ大阪関西地区で「ポケットモンス夕ー」をネットしているテレビ大阪も、今後の放送については、テレビ東京の判断に同調する方針。〈朝日新聞•朝刊【大阪】〉

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〈資料〉
●十二月十九日十三時テレビ東京広報室発表

本日十一時から局内調査チームの初会合が開かれました。冒頭、チームリーダーの金沢常務は「民放連に調査委員会が設置されますので、テレビ東京としてはこの委員会に全面協力して、早期の原因究明を期待したいと思います」と語りこの局内の調査チームの目的については「制作手法を含むアニメ制作の技術面の検討を主眼として行いたい。同時に出来うればアニメ制作のガイドラインっくりを視野に入れて作業を進めて行きたい」と述べました。その後森編成専任局長から十六日夜の異常事態発生から現在までの対策についての経過報告を受けて討議、検討に入りました。この会合では問題を引き起こした「ポケットモンスター」第三十八話の特に問題があると思われる部分を試写し、「透過光」技法という制作手法について具体的な検討に入りました。

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●放送休止拡大
系列外は二十一社
「ポケモン」問題で十八日、テレビ東京から同番組の供給を受けている「静岡放送」「テレビ愛知」「岐阜放送」「琉球朝日放送」が当面放送を見合わせることを決め、テレビ東京によると、もともと年内の放送予定がなかった社も含め放送休止の局は系列外の三十一社のうち二十一社になった。残りの局は態度を留保しているか、問題となった第二十八話以外の放送続行を決めている。〈産経新聞・夕刊〉

今後に向けて
【テレビ東京】
●放送界は演出面調査テレビ東京は十八日、原因究明にあたる調査チームを同局内の映像専門の職員中心のチームに編成替えすることを決めた。当初加える予定だった外部の医療専門家三人が、厚生省研究班と重なったため。諧査チームは、「ポケットモンスター」の担当プロデューサーのほか、映像技術専門の社員ら計十人からなり、映像、音声など演出面を重点的に調査する。さらに、チームでは来年
早々にも、英米にメンバーを派遣、映像によって発生した同種の問題に対する規制を調査した上で、局独自のガイドラインを作る予定。〈東京読売新聞・朝刊〉

●テレビ東京調査チー厶初会合
テレビ東京の人気アニメ「ポケットモンスター(ポケモン)」を見ていた子供たちがけいれんの発作を起こすなどした問題で、同局は十九日午前、金沢龍一郎製作専任局長を座長とする調査チームの初会合を開き、来年一月十五日をめどにアニメ製作の規制などの実態を把握するためにアメリカとイギリスに調査チームを派遣する方針を決めた。〈産経新聞・夕刊〉

●〃問題の四秒間〃浮上
四色が百コマ点滅/テレビ東京調査班
テレビ東京系の人気アニメ番組「ポケットモンスター」問題で、同局は十九日午前、局内調査チーム(座長・金沢龍一郎制作専任局長)の初会合を開いた。
その結果、十六日夜放送の三十八話のうち、子供たちに体調異常を起こさせた問題の部分は、午後六時五十一分三十四秒からの四秒間の可能性が高いとみて調べを進めることにした。この部分では、赤、青、白、黒の四色が百こま入れ替わって続いていた。〈東京読売新聞・夕刊〉

【郵政省】
●自見庄三郎郵政相も同日の閣議後会見で、郵政省内に「放送と視聴覚機能に関する検討会」を設置したと発表した。郵政省では、検討結果を年度内に中間報告としてまとめる。
郵政相は「厚生省、NHK、

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〈初会合でのやり取りの主な内容〉ー、ガイドラインつくりに関連し、その面で先端的といわれるアメリカおよびイギリスに調査団を派遣して、規制等の実態調査を行いたい。一月十五日をメドに派遣し、一月末までに報告書をまとめたい。
二、入院している子供さんたちには誠意ある対応をするという基本方針で臨んでいます。テレビ東京および系列局、さらに関連局の協力を得て入院患者のリストづくりに全力を注いでいます。三、テレビ東京では現在週二十本のアニメを放送中だが、そのすべてのアニメについてその内容を再チェツクするよう各プロデューサーに指示している。
四、今後の放送についてはすでに二十三日(火)の放送分は休止する事を決めたが、年末の特別番組(三十一日に予定)についてはまだ最終決定をしていない。

50: でもって、何をするかっていうと、英米サマがどのように対応なさっているか、おそるおそる視察

日本民間放送連盟などとも密接な連絡を取りながら再発防止に努める」としている。〈産経新聞・夕刊〉

【厚生省】
●厚生省が研究班発足へ
人気アニメ番組「ポケットモンスター」(テレビ東京系)問題で、厚生省は十八日、省内に被害者の症状とテレビ映像の因果関係を究明する「光感受性発作に関する臨床研究班」(班長、山内俊雄・埼玉医科大教授)を発足させることを決めた。研究班は神経精神科や小児科の医師、映像関係の専門家など十人程度で構成。体の異常を訴えた全国の児童などから約百五十人を抽出し、病歴や脳波、テレビを見ていた時の状況(テレビ画面との距離、部屋の明るさ)などを調査するという。今年度中に報告書をまとめる予定。〈毎日新聞・朝刊〉

●厚生省は十八日、全国五十四か所の精神保健福祉センターで
健康被害の相談に応じるよう都道府県に通知した。同センタ—は各都道府県に最低一か所設置され、専門医紹介や発作が起きた場合の手当てのアドバイスなどを行う。〈東京読売新聞・朝刊〉

【国会】
●国会でも集中審議
国会では同日、衆参両院の逓信委員会がそれぞれの理事懇談会で問題個所の録画を試写。衆院委員会が二十四日に、参院委員会は二十五日に、それぞれ「ポケモン」を放映したテレビ東京や民間放送連盟、視聴者が同様の症状となつた番組を放送したことのあるNHKから参考人を招いて、集中審議を行うことを決めた。〈産経新聞・夕刊〉

【民放連】
●民放連、アニメ新基準づくりを検討
ポケモンの問題で、日本民間放送連盟(民放連、会長・氏家斉一郎日本テレビ社長)は十八
日午後、定例理事会を開き「ポケモン問題は全民放共通の課題」として早急に調査、研究し、テレビアニメの新たな基準づくりに向けて検討することを決めた。
現在の民放連の基準には表現や広告の時間などについての項目はあるが、アニメについての具体的な規定がない。テレビ東京では現在週に二十本のアニメ番組を放送しているが、全番組について技法をチェツク、強い刺激を与えないような対応をする。
理事会では、テレビ東京の一木豊社長が今回の事態を説明。この問題を「放送基準審議会」(議長・武田圭策北海道文化放送社長)の場で話し合い、医師など専門家の協力も得て具体的な対応策を協議することにした。〈産経新聞・朝刊〉

●ポケモン被害放送界全体で映像ガイドライン検討
日本民間放送連盟(民放連)の氏家斉一郎会長(日本テレビ

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に行くという寸法。日本のアニメは世界水準の商品のはずなのに、こういう部分はいまだに後進国根性丸出し。目の前のアニメ商品の消費者の成熟や先進性も含めた変貌についての現状把握ができていない自分たちの問題にはまるで自覚がない。

51: 委員の議員センセイ方は倒れなかったんだろうか。倒れたら、それこそ「電波兵器」説がさらに蔓延したろうなあ(笑)。

社長)とNHKの海老沢勝二会長が十九日午前会談し、放送界全体の問題として、NHKと民放が共同で映像のガイドラインの設定を検討していくことを決めた。〈産経新聞・夕刊〉

【NHK】
●NHKも十八日、「アニメーション問題等検討プロジェク卜」を発足させた。今年三月、教育テレビのアニメ「YAT安心!宇宙旅行」を見た静岡県内の子供四人が発作を起こしたことが分かったため。千葉県内と山形県内からも「子供の具合が悪くなり、病院に行ったことを思い出した」という内容の問い合わせが二件あった。NHKは、問題のシーンが収録されているビデオについても、販売と貸し出しを見合わせるよう販売店などに要請した。〈朝日新聞・朝刊〉

【各TV局】
●ポケットモンスター問題で民放各局がアニメ番組を再点検テレビ東京系の人気アニメ「ポケットモンスター」で子供たちが異常を訴えた問題に絡み、在京の民放各局は年末年始に放送予定のアニメ番組を中心に再点検をしている。
「それいけ!アンパンマン」を放送する日本テレビは、制作現場の判断で、強い光を点滅させる手法「パカパカ」を減らすことを決めた。動きの少ないアンパンマンでも十年以上使っていたという。
アニメ担当の中谷敏夫プロデューサーは「光過敏性てんかんを起こす危険があるので、回数を減らすことにした。ただアニメ制作に欠かせない手法なので、調査を見守りたい」と話す。
「サザエさん」「ちびまる子ちやん」などの人気番組を抱えるフジテレビも、制作現場が慎重に対応することを決めた。広報部は「放送前に編成の担当者が内容のチェックを念入りに行う」としている。
テレビ東京と並び人気アニメを多く抱えるテレビ朝日にとつて、今回の事件はひとごとではない。同局は「クレヨンしんちやん」「ドラえもん」など朝夕六本のアニメ番組を抱える。大みそかの「ドラえもん」三時間番組など年末年始に放送予定のアニメ特別番組を含む二十本の見直しを行った。〈東京読売新聞・夕刊〉

制作者の声
●ポケモン問題「光点滅手法使いすぎ」制作側から指摘も民放テレビのアニメ番組「ポケットモンスタ—」を見ていた子どもたちが気分が悪くなったりして病院で手当てを受けた問題で、アニメの制作現場では、光が激しく点滅するシーンがきっかけになったとみられていることについて、対応に戸惑うー方で、視聴者を引きつけようとこうした手法を使いすぎた結果

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〈資料〉
●十二月十八日付・厚生省発表テレビ番組の視聴による健康被害への対応について

ー、今般の十二月十六日放映のテレビ番組の視聴による健康被害の問題については、健康被害を受けた方等が精神保健福祉センタ—等において相談を受けられるようにするため、都道府県・政令指定都市の衛生部局長に対し、本日、指導通知を発出した。

二、本件についての現状を把握し、その原因を調査するため、厚生科学研究費により研究班を設けることとした。

〈問い合わせ先〉
・厚生省障害保健福祉部精神保健福祉課
・厚生省大臣官房厚生科学課(健康危機管理調整会議事務局)

67 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

だという指摘も出ています。
光が点滅するシーンは、原画の裏側から赤や青の光を交互に当てて撮影するもので、爆発シ—ンなどで迫力やスピード感を出すために用いられます。
これについて東京・国分寺市のアニメ制作会社では「二十年ほど前からある手法で、SFや戦闘シーンなどを扱うほとんどのアニメ番組で盛んに用いられている。なぜ今回の番組だけが問題を引き起こしたのかわからずこれからどういう表現をしたらいいか困っている」と話していて、制作現場の関係者からは戸惑いの声が出ています。
一方、数多くのアニメ番組の監督をしている黒川文男さんは「この手法は特別なものではないが、今回は三十分の番組の間に繰り返し使われていて、画面に占める光の面積や色の対比もかなり刺激的だと感じる。最近のアニメは視聴率を重視するあまり、こうした手法を安易に使いすぎる傾向があると思う」と話していて、今回の問題の背景には、視聴者を引きつけるためより刺激の強い手法に頼ろうとする姿勢があると指摘しています。〈NHKニュース・七時〇〇分〉

全国の被害者は
●欠席児童・生徒は百十三人——都内公立校
テレビ放映翌日の十七日に、都内の公立小中学校などを欠席した児童・生徒数は百十三人にのぼることが十八日、都教育庁の調査でわかった。内訳は小学生は百一人中学生が十一人、都立養護学校の生徒が一人となっている。〈東京読売新聞・朝刊〉

●【道南】函館市教委や渡島、檜山管内各消防署の十八日現在のまとめでは、ポケモンの放送やビデオを見ていて病院に搬送されるなどした患者は函館十二人、八雲二人、七飯、南茅部、木古内各一人の合わせて十七人。〈北海道新聞・朝刊〉

●【山梨】ポケモンで体調異常、千六百六十二人に
県教育委員会は十八日、県内の公立小中学校を対象に、同番組が児童に与えた影響を調査した。その結果、小学校で全体の六八・三%、中学校では同四五%の学校で、計千六百六十二人の児童が異常を訴えたことが分かった。
まとめによると、小学校では、二百十二校のうち百四十五校(六八・三%)で千五百二十一人が、中学校では百校のうち四十五校(四五%)で百四十一人が、体調に異常を感じていた。目がチカチカする、頭痛、吐き気、めまいなどの症状が多く、翌日欠席した児童は、小学校で十二校十三人中学校は五校六人だった。〈毎日新聞・山梨版〉

●番組影響の欠席は十人浜松市教委が調査
人気アニメ番組「ポケモン」を見ていた子供たちが全国でけいれんなどを起こした問題で、

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●十二月十八日付・各都道府県精神保健福祉担当部(局)長宛て資料

各都道府県・指定都市
精神保健福祉担当部(局)長殿
厚生省大臣官房障
害保健福祉部精神保健福祉課長

精神保健相談の適切な実施及び情報提供について

精神保健福祉対策については、かねてより特段の御配意を煩わしているところである。今般の十二月十六日放映のテレビ番組の視聴による健康被害の問題については、その原因は現在特定されていないが、「光感受性発作」等精神保健上の問題である場合も考えられることから、相談の求めがあった場合は、貴管下精神保健福祉センタ—等においても、関係医療機関との連携を図りつつ、その適切な実施について遺漏のないよう御配意願いたい。

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浜松市教委が市立の幼稚園児と小中学校を対象に行った被害調査の結果、十八日までに番組の影響とみられる欠席者が十人いたことが分かった。けいれんなどは起こさなかったものの、目まいなどの異常を訴える児童生徒も多数いた。しかし、いずれも症状が軽かったり既に回復していることから、各校とも事態を冷静に受け止め特別な対応策は取っていない。
市教委は「各校の調査方法がまちまちだったことなどから、集まった被害結果は実数を表していない」と分析、欠席者などを除いて異常を訴えた児童、生徒数を明らかにしていない。しかし、症状が一時的だったことから今のところ再調査を行う考えはないという。〈静岡新聞・朝刊〉

●三千六百六十八人が気分悪く名古屋市教委調査
名古屋市教委は十八日、テレビアニメ番組「ポケットモンス夕—」(十六日放映)による健康影響調査の結果をまとめた。対象は、市立の全幼稚園、小中学校、高校の二十万二千七百七十七人。「気分が悪くなった」など何らかの影響を訴えたのは、幼稚園十四人、小学校三千四百九十三人、中学校百五十四人、高校七人の合わせて三千六百六十八人だった。
そのうち救急車で病院に行ったのは十人、医者に自分で行って診察を受けたのは四十六人。このうち八人はテレビを見ていて意識を失い、六人が入院した。〈中日新聞・朝刊〉

●【広島】福山の女児も入院アニメ番組「ポケモン」被害
県内でも福山市の小学生の女児が放送後に体の異常を訴え、入院していたことが十八日、同市教委などの調べで分かった。福山市の一部と、尾道、三原両市のケーブルテレビで、テレビ東京系の「テレビせとうち」(岡山市)の放送を見ることができ、この女児は自宅のテレビ見たらしい。
このほか、三原市教委が十八日、市内の小、中学校と幼稚園五園で調べたところ、小学生五人が「気分が悪くなった」「頭が痛くなった」などの症状を訴えた。いずれも程度は軽く、学校も休んでいない。

●【福岡】ポケモン被害十八人に北九州市教委
アニメ番組「ポケモン」を見た子どもたちがショツクを受けた問題で、北九州市教委は十八日、同市内の小学生十五人、中学生三人の計十八人が病院で治療を受けたと発表した。十七日の調査時点から計三人増えているが、一部校長から報告漏れがあったためとしている。〈西日本新聞・朝刊〉

波紋
●【島根】ポケモン被害で十九日から十ーカ所で相談窓口置く人気アニメ番組「ポケットモンスター」を見た子供たちがひ

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されたい。
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(別添1)
今般のテレビ番組(十二月十六日放映)の視聴による健康被害についての考え方今回多発した事例について、詳細は調査してみなければ不明であるが、下記のようなものが考えられる。
ー、光感受性発作の場合
光感受性発作は、画面のちらっき、図形の変化、反復する閃光などの刺激によって誘発される発作であり、全身のけいれん発作などの症状を呈するものである。
(詳細は参考を参照のこと)

二、その他の場合
閃光刺激、素速く動く色模様、強烈な図形反転などのスクリーン映像を長時間にわたって凝視していると、眩暈、嘔気、冷汗、動悸などの徴候を自覚することがある。これらの徴候・症状は急に起始し、数分の間に消褪するのであれば、必ずしもてんかん発作ではない。
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きつけなどを起こした問題で、県は十九日から健康被害の相談窓口を置く。窓口は松江市大輪町四百二十の県精神保健福祉センターのほか、県内十保健所。〈毎日新聞・島根版〉

●おもちや店は〃誤解〃懸念、Xマス商戦控え
ポケモンのキャラクタ1商品をクリスマス商戦の目玉にしている函館市内のおもちや店には「この騒動でポケモン自体が危ないと誤解されては困る」との懸念が広がっている。
クリスマス商戦のピークは二十一日と二十三日とみられ、直前に起きた騒動に、長崎屋函館店の大滝寿則次長は「今回は刺激的な映像手法の問題だが、これだけポケモンが騒がれると消費者がどういう反応を示すか
…」と心配する。〈北海道新聞・朝刊【道南】〉

●ビデオ貸し控えも
レンタルビデオ店側はポケモンのビデオ貸し出しを次々に中断している。十一月下旬からー、二巻合わせて二十本を扱っていたTSUTAYA函館鍛治店は「常時レンタル状態の人気ソフトだったが、本部の指示で大事を取った」とする。(52)〈北海道新聞・朝刊【道南】〉

●【鹿児島】
アニメ「ポケモン」問題で
レンタルビデオの自粛相次ぐ
鹿児島県内でも十八日までに、大手ビデオレンタル店を中心に「ポケモン」のビデオの貸し出しを一時中止する動きが広がっている。ただ、ビデオへの苦情はこれまでなかっただけに複雑な表情だ。
販売元の「メディアファクトリー」=本社東京゠などによると、「ポケモン」のビデオは十一月下旬にレンタル専用として二巻゠計六話゠を発売。今回の問題を受け十七日、レンタル自粛を要請した。「強制ではないが安全性が確認されるまでの当面の措置」としている。〈南日本新聞・朝刊〉

地方局の対応は
●福島テレビが放映を休止福島テレビは十八日、「事態が明確になるまで番組の放映を休止する」と発表した。福島テレビは同番組を六週遅れで放映しており、第三十八話までに四回分の放送を残していたが、「子供たちへの影響を考慮すれば、休止は当然の措置」として休止を決定した。〈河北新報・朝刊〉

●二十三日分放送中止
テレビ愛知決定
テレビ愛知は十八日、次回二十三日に予定していた放送を取りやめることを決めた。事故原因がいまだはっきりしていないための処置。テレビ東京が放送の取りやめを検討している「大みそかだよ・ポケットモンスタ一!アンコール」(三十一日午前九時)も自粛を決めた。
「64マリオスタジアム『年忘れポケモンリーグスペシャル』」

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52: TSUTAYAが「ポケモン」のビデオすべてを貸し出し中止にしたのは、一部で肇蹙を買った。ただ、この後二月には問題の技法を使った部分を修正したものをサクツと出してきたあたりの対応の速さは、さすがに商売がらみとうならされるものだった。

(三十日午後六時放送予定)は、アニメ番組ではなくゲームが中心という理由で、今のところ自粛の対象にはなっていないという。〈中日新聞•朝刊〉

●【中国放送】テレビ東京よりーカ月遅れで、毎週土曜の早朝に放映している中国放送(RCC、広島市)は十八日、原因が究明されるまで、二十日以降の放映を見合わせることを決めた。また、来年一月十七日放送予定だった問題の「電のうせんしポリゴン」の放映中止もすでに決めている。〈朝日新聞・朝刊〉

●【テレビ山口】TYSが方針ポケモン年内お預け
同番組を八カ月遅れで放送しているテレビ山口(TYS)は十八日、年内の「ポケモン」の放送を見合わせる方針を決めた。TYSは、今後放送する予定の番組内容に問題がないかどうかをテレビ東京に要請する。

●がないことを確認したうえ
で来年以降の放送再開について検討する。〈西日本新聞・朝刊〉

●【TKUテレビ熊本】
二十三日放送分は中止に
TKUテレビ熊本(河津龍介社長)は十八日、熊本市徳王町の同社で第三百十六回番組審議会(上田祐規委員長、八人)を開いた。今年最後の審議会で、社側からは国内外・県内の主な出来事や年末年始自社製作番組と編成、十一月の視聴者応答の内容報告があったほか、今年の総括と来年の自社制作番組について各委員からアドバイスを求め、意見交換した。
また、十六日放映されたテレビ東京系列の人気アニメ番組「ポケットモンスタ—」(ポケモン)で子供を中心に多くの視聴者に体調異状が起きた問題について、東博敬・番組審議会事務局長から、一週遅れの二十三日に放映を予定していたが、十七日の責任者会議で自主的に中止を決めた、との報告があった。〈西日本新聞・朝刊〉

●琉球朝日放送は放映中止
琉球朝日放送(QAB、本社・那覇市)は十八日、毎週火曜日に放映していた「ポケットモンスタ—」について、来週以降の放映中止を決めた。同社は本土より放映を遅く始めたため、問題になった番組は来年四月中下旬に放送予定だった。十七日には当該番組の放送をやめる決定をしていた。〈毎日新聞・朝刊【西部】〉

海外から
●ちかちか映像、英TVは禁止四年前に同じ現象
【ロンドン十九日】人気アニメ番組「ポケットモンスタ—」を見ていた日本の子どもたちが体調異常を訴えたが、英国では四年前に同じような現象が起きた後、強い光が明滅するなど特定の映像を「健康に害を与える」とみなして、テレビから締め出している。
英国で問題が起きたのはー九九三年四月。菓子のテレビ・コ

71  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

マーシャルが原因で「子どもがひきつけを起こした」などという視聴者からの苦情が二十八件、当局に寄せられた。このコマーシャルは、コンピューター・グラフィックスで作製され、強い光がちかちか光る場面があったという。このため、商業放送を監督する「独立テレビジョン委員会」(ITC)は、大学教授に科学調査を依頼。その結果をもとに九四年十一月、放送法に基づく番組制作規定を改め、映像技法の一部を禁止した。(53)〈朝日新聞・夕刊〉

見方
◎背景に企業戦略? (54)
関連グッズ売り込み映像、より刺激的に
テレビ東京(東京都港区)の人気アニメ「ポケットモンスター(ポケモン)」を見ていた子供たちがけいれんの発作を起こすなどした問題で、同局や厚生省などは十八日、相次いで研究チームを発足させるなど、原因究明のための動きが急ピッチで進んだ。ポケモンの映像が、より刺激性を強めていた背景として、子供向け商品の販売戦略も絡んでいると指摘する関係者もいる。
「バトル(戦闘)が面白いんだ。それに(画面全体が)光ったり、色が変わる場面も早くて楽しい」
東京都文京区内の小学一年生、伊藤悠馬君(七つ)は、「ポケモン」がどうして好きなのか、という問いに、こう応じた。
今回の集団的な発作の有力な原因として、伊藤君が「好きだ」と言う、光る映像が高速で点滅する場面を挙げる専門家が多い。
「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」を製作するシンエイ動画(東京都田無市)は「口ボットものやメカものの作品にょく見られる手法。実写ではできないアニメならではの処理で、必要か否かについては難しいが、作品によっては、ああいう演出でどうしても見せたいという場面はあるはず」という。ポケモンの問題の場面では、「赤と青」の光が交互に、高速で激しく点滅する手法が用いられた。「赤と青の組み合わせは不快感を与えることがある、という理由から、これまではあまり使われなかった」とアニメ業界の関係者は指摘する。
これについて、「ルパン三世」などを作る東京ムービー新社(東京都中野区)の松本理人・製作統括部長は「問題のシーンは、手法として度が過ぎたとの感じは否めない。あそこまで激しくやらなくても、訴えたいことは視聴者に伝わるはずだ」と批判的にとらえる。
□  ■  □
より刺激性を強めるのは、受け手の子供たちに、より深く印象づけようとする狙いがうかがえる。その背景には「メディアミツクス」という企業戦略の存在がある。
ポケモンは昨年二月、任天堂の携帯ゲーム機「ゲームボー

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53: 断片的に出てきていた海外での技法の規制について、NHKでは報道されていたが、新聞紙上に具体的に現われたのはこのあたりから。
54: 事件とその騒動がそろそろ-段落つき始めたところで、事件とその背景を概括しようとするこの企画ものは悪くない。新聞にしてはかなり頑張った記事といえる。

イ」のソフトとして登場し、小学館のまんが雑誌「コロコロコミック」での連載、テレビ番組のアニメ化が続いた。
来年夏にポケットモンスターをアニメ映画化する東宝によると、「四〜十二歳の子供の二人に一人はテレビアニメ『ポケモン』を見ている」という。今回の騒動で病院に運ばれた視聴者の年齢構成を見ても、六〜十五歳が五百八十三人おり、全体の八五%以上を占めた。
この人気を当て込んで、おもちやメーカーなどの企業が参入した。ぬいぐるみやカード、CD(コンパクトディスク)、ふりかけやカレールーのパツケージにポケモンのイラストを使う食品メーカーまで現れている。こうした、キャラクターグッズと呼ばれる関連商品に子供たちの関心を引き付けるためにも、アニメの人気の維持は不可欠で、そこに、映像による子供への強い刺激をエスカレートさせる要因が潜む。〈産経新聞・朝刊〉

◎〃時差〃も悪くない゠ポケモン事件
テレビを見ていた子どもたちがけいれんなどを起こし、病院に運ばれる事例が続出した。各地で同時多発し、動画番組「ポケットモンスター゠ポケモン゠」第三十八話を見ていた点が共通している。光の刺激が発作を誘発したのではないかとみられている。
幸いなことに鹿児島県内ではまだ放映されていなかった。鹿児島放送゠KKB゠はテレビ東京より三話遅れで放映しており、事件のあと年内の放送を中止した。
時間差、つまり放映が三週間遅れだったおかげで身近に被害者が出なかった。結果として遅いのが幸いした。
テレビについては、性や暴力の表現、不快な言葉遣いが青少年に与える影響が注目されてきた。これは一筋縄でいかない面がある。が、健康に直接の被害を及ぼすとなれば議論の余地はない。
というより、これまでうかっ過ぎた。映像が感性や情緒へ及ぼす影響だけでなく、直接に人の生理や心理に与える影響について、もっと注意を払うべきだった。
前に、サブリミナル効果の危険性が問題になった。はっきり視認されない速度で瞬間的に映像を挟み込み、潜在意識に刻み込もうとする手法で、悪質な心理操作に利用される恐れがある。
ポケモン事件では、番組制作者に加害の意図はなかったはずだ。が、映像のもつ広範で強い影響力について、当事者の認識が甘かった。
番組の配給を受けている各局は一斉に放映中止を決めた。予防体制が整うまでの急場の措置としてはやむを得まい。ただ、今回問題になったのは番組の内容ではない。どこに問題があるのかをキチンと見極めたうえで、自主規制に当たっては不足も過剰もないように願いたい。

73  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

ポケモンは動画番組の前からゲームとして流行していた。個性をもつ多くの怪物や小動物を訓練して戦わせ、うまく育ったものを人から譲り受けることもできる。
いわば仮想現実゠バーチャルリアリティ゠の遊び体験で、遊びの場と機会に制約の多い都会の子が夢中になる気持ちは分かる。
遅れて鹿児島にも伝わってきたようだが、悔しがることはない。情報や流行がリアルタイム゠即時゠でない代わりに、遊びも模擬体験でなく即体験・実体験がしやすい環境があるはずだ。〈南日本新聞・朝刊【社説】〉(55)

十二月二十日

その後……
【テレビ局】
●全テレビ局が放送中止決定
テレビ東京の調べによると、同社の人気アニメ番組「ポケットモンスター」(ポケモン)を放送していた全国の三十七局すベてが十九日までに、放送を当面見送ることを決めたことが分かった。全局とも再開日は未定で、当分の間全国のテレビから「ポケモン」が姿を消すことになった。
番組を放送していたのは、テレビ東京と同社の系列局五局のほか、「番組販売」という形で供給を受けている系列外の三十一局。十六日の問題発生以降、対応にばらっきがあったが、テレビ東京が対応策を検討する調査チームを十九日に発足させたことを受け、福井テレビなど「放送を続ける」としていた社も同日までに放送見合わせを決めた。〈産経新聞・朝刊〉

【制作現場】
●ポケモン問題でアニメ制作現場に自主規制の動き
民放テレビのアニメ番組「ポケットモンスター」を見ていた子どもたちが気分が悪くなったりして病院で手当てを受けた問題で、アニメの制作現場では、当面光が激しく点滅するシーンなどを使わないことにするなど、自主規制の動きが出ています。
光が点滅するシーンは、爆発シーンなどで迫力や緊迫感を出すために使われるもので、今回の番組では赤と青が激しく点滅するシーンが繰り返し数秒間にわたって続くなど激しい光の刺激が多くあったことが影響を与えたのではないかと指摘されています。
このためアニメの制作現場では、原因がはっきりするまで原画の裏側から赤や青の光を交互にあてて撮影する手法など、光の激しい点滅シーンは使わない

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55: メディアの空間での時差も悪くない、というこの主張は地方紙として正しい。ただ、そのかわりに「模擬体験でなく即体験・実体験がしやすい環境があるはず」と短絡するのはどうかとは思うが。

74

ようにする動きが出始めています。
なかにはテレビ局の意向もあって、すでに制作が終わり放送日が決まっているアニメ番組から光の点滅シーンをカットして手直しをしている会社もあり、アニメ業界に自主規制の動きが広がっています。〈NHKニュース・七時〇〇分〉

【テレビ東京】
●緊急避難的基準を来週早々にも策定
ポケモン問題で、テレビ東京の局内調査チームは十九日午後、二回目の会合を開き、アニメ制作に関する正式な基準ができるまでの緊急避難的基準の策定作業に入った。英国の商業テレビを監督する第三者機関ITC(独立テレビ委員会)の基準を参考に、来週早々にもまとめる見通し。
ITCの基準は、光が明滅したり、高速で変化する画像について、「三ヘルツ(一秒間に三回)以上の速さで使わない」とし、そのような画像が画面の中央部にあった場合は特に使用を避けるなど具体的な数字を挙げて示している。〈産経新聞・朝刊〉

【NHK・民放連】
●アニメ番組ガイドライン作成へ検討会
NHKと民放連は十九日、「アニメーション番組に関する日本放送協会・民放連の検討会」を設置し、NHK内で一回目の会合を開いた。メンバーは、NHK側が田畑和宏理事ら三人、民放連側が酒井昭専務理事ら三人の計六人。それぞれの組織で検討したアニメの演出基準案などを持ち寄り、今年度中にテレビ業界全体のガイドラインを作成する。また、民放連は近く、アニメの演出効果について十分注意するように、テレビ各局に要請する。〈朝日新聞・朝刊〉

●【苫小牧】スケー卜まつりの大雪像、でも「ポケモン」!
テレビを見た子供ら多数が体調を崩したアニメキャラクタ—の「ポケモン」が、来年二月に苫小牧市で開催の「第三十二回苫小牧スケートまつり」(同実行委主催)の大雪像のモデルとなることが、十九日決まった。関係者は「キャラクター自体に問題はない」としているが、時期が時期だけに市民からは「何もポケモンでなくても」との声も出ている。
同実行委は毎年、大雪像のアイデアを公募。同実行委雪像部会(会長・首藤武洋苫小牧商工会議所専務、十七人)が投票で採用を決めている。今年は二十六件の応募があり、うち六件はポケモンがテーマだったという。首藤会長は「テレビの件は痛ましいが、ポケモンは絶大な人気がある。雪像を見て、子供らも喜ぶはず」と話している。〈北海道新聞・朝刊【道央】〉

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56: 雪像のピカチュウを見て倒れる 子どもはいないっての。

75  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

●【滋賀】家庭での視聴啓発へ「ポケモン」で青少年を守る県の対策会議
県教育委員会、県警などで構成する「青少年を守るための有害情報等対策会議」(本部長・山田新二副知事)は十九日、第一回の会議を開き、人気アニメ番組「ポケットモンスター」を見た全国の子どもらが発作を起こした騒ぎについて、対策を話し合った。
会議では、問題となった回の録画ビデオを視聴するとともに、全国の被害状況について情報を交換した。続く協議で「長時間にわたってテレビ視聴やテレビゲーム遊びは避ける」など、家庭でのテレビ視聴などについて、関係機関を通じて啓発することを決めた。(中日新聞・朝刊)

●【群馬】TV視聴など注意呼びかけポケモン騒ぎで県教委
テレビアニメ「ポケットモンスター」を見た子どもが相次いで体調異常を訴えた問題で、県教委は十九日、県内の小、中学校、高校などに通知を出し、二十五日からの冬休み中のテレビ視聴やテレビグームについて注意を呼びかけた。内容は(こテレビ画面からなるべく離れて視聴する(二)部屋を明るくして視聴する(三)長時間、テレビ視聴、テレビゲームをしない、の三点。〈朝日新聞・朝刊〉

●【大分】ポケモン被害二百三十九人
人気アニメ番組「ポケモン」を見て異常を訴えた県内の児童・生徒の総数は計二百三十九人で、十三市町村にわたっていることが十九日、県と県教委の調査で分かった。
いずれも福岡県のテレビ局が放送した番組を、直接受信したり、ケーブルテレビで見ており、被害は福岡県境地区に集中した。調査は、県教委が県内五十八の全市町村教委を通じて行った。〈西日本新聞・朝刊〉

海外から
●ポケモン問題米政府も懸念【ワシントン十九日゠共同】マカリー米大統領報道官は十九日、日本で人気アニメ「ポケットモンスター」を見た子どもたち多数がけいれんなどの症状を起こした問題について「クリントン大統領も問題を認識、深刻に受け止めているはずだ」と語り、米国内で同様の問題が発生しないかどうか米政府が懸念していることを明らかにした。クリントン政権は現在、テレビ業界の自主規制策を中心に、性的シーンや暴力的な表現が多い番組が子どもの目に触れないようにするための方策を立てている。報道官は「(ポケモンのような事例は)テレビ産業も避けたいと思っているはずだ」と述べ、今後は政府と業界がポケモン問題を教訓に、協議を進める意向を表明した。〈産経新聞•夕刊〉

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57: なるべく離れて見る、部屋を暗くして見ない、長時間見ない、という「テレビ視聴の約束ごと」=一点セットはこのあたりでほぼ固まったらしい。でも、これって昔から言われてたことじやなかったっけ。

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●タイ、輸入禁止検討他番組の検閲強化も
【バンコク十九日】テレビ東京系の人気アニメ「ポケットモンスター」を見ていた子供たちがけいれんなどを起こした問題で、タイ政府は十九日までに、同番組の輸入禁止の検討や日本製アニメの検閲強化に乗り出した。(58) タイでは日本製アニメが放映されて人気を呼ぶー方、一部の番組の暴力シーンなどに批判が亠咼まっている。
「ポケモン」問題はタイでもテレビや新聞で大きく報道された。ラキアット厚生相は商業省に対して、同番組の輸入禁止措置を要請。また、ソムサック副文相も「日本のアニメや漫画の暴力、わいせつシーンには目に余るものがあり、青少年に有害」として、政府検閲委員会に対し、日本製アニメの輸入については厳しく調査するよう要望した。
タイ文部省は最近、海賊版で出版されている日本の青少年向け漫画にわいせつな表現が含まれているとして、輸入規制などのキャンペーンを始めたばかりだった。〈東京読売新聞・朝刊〉

視聴者の声
◎ポケモン放映、やめないで子供の電話が殺到「ピカチュウ、頑張って」「放送やめたら、もっと気分が悪くなっちやうよ」。テレビアニメ番組「ポケットモンスタ—」(テレビ東京系)が子供たちの体に異状を引き起こした問題で、子供たちから放映続行を求めるテレビ局への電話が殺到している。テレビ東京は二十三日分の放映中止を決めたばかりだが、同局関係者は「このまま放映をやめるのが本当に正しいのか、困惑している」と複雑な表情だ。
テレビ東京視聴者センターの電話は、放映当日の十六日から鳴りっぱなしになった。当初は保護者からの問い合わせや抗議が六、七割を占めたが、十八日には逆転。約四百八十件の電話のうち、放映続行を求める声が約三百四十件と七割に達した。さらに十九日には、夕方までの集計で百十件の電話のうち八割以上が放映の要望だった。〈毎日新聞•朝刊〉

◎番組の中止は子供を裏切るTVアニメ「ポケモン」
国立市 (会社員 三十六 歳)
わが家の娘も、その時間にTV番組「ポケモン」を見ており、幸い何ともありませんでしたが、被害をニュースで知り、たいへん驚きました。被害にあったお子さんと保護者の方には、心からお見舞い申し上げます。
仮に、推察されているように、番組の一部の場面や手法に原因があるとすれば、今後、他の番組でも発生する恐れがあり、原因の調査と再発防止の対策は、十分にやってもらいたいと思います。
一方、一部に番組自体を打ち切ってしまえという意見がある

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58: 確か、ベトナムでたまごっちが輸入禁止になったこともあったはずだが、東南アジア諸国のこのあたりのスジの通し方には学ぶべきところがあるように思う。
59:「保護者からの問い合わせや抗議」の中には、子どもをダシにした親の「ピカチュウ大好き」丸出しのものもあったと推測する。

ようですが、それには反対です。原因がはっきりするまでの放送の一時休止はやむを得ませんが、制裁的な意味での番組打ち切りは問題があると思います。
今回の事件の責任を取ることと、今後の表現の機会を奪うことは違います。乱暴な例かもしれませんが、事故を起こした航空会社でも営業打ち切りにはならないのに、アニメではそういう声があるのは「たかがアニメーといった偏見があるのではないでしょうか。
このまま打ち切りになってしまえば、子供たちは大好きなポケモンに、二度裏切られることになってしまいます。〈朝日新聞・朝刊【声】〉

警告
◎ポケモンパニック〃電脳社会〃に行政追いつけず現行法での対応困難 (61)
「冗談だろ」。人気アニメ「ポケモン」を見た子供たちが次々と病院に運ばれているらしい、と十六日夜に聞かされた郵政省放送行政局のある幹部は思わずつぶやいた。
放送業界の監督官庁である郵政省にとっては、全く想定外の事件だった。郵政省が放送業界を監督する法根拠は放送法。「公共の電波を使用して行う事業であるからこそ、その放送内容は公共の福祉にかなったものでなければならない」との趣旨を規定した法だ。
ところが、「今回の問題は放送内容というより、その技術的な手法に絡む部分。現行の放送法で対応できるのかどうかの判断は難しい」(郵政省幹部)ー。十七日にテレビ東京から事情聴取後に記者会見した品川萬里放送行政局長は「放送法に抵触する疑いがあるとして聴取したのか」と報道陣に問われ、「違う。放送法に抵触するか否かの判断はこれからだ」と慎重な態度を崩さなかった。
□   ■   □
郵政省が対応に慎重になる理由はもう一っある。放送行政と「表現の自由の保障」との兼ね合いの難しさだ。「ひとつ間違うと放送内容への過剰介入と批判されかねない」と同省幹部。事態を重視し、アニメ映像表現の新しいガイドライン(指針)づくりにNHKと共同で着手することを決めた民間放送連盟の氏家斉一郎会長が、記者会見の席で「検討は自主的に行う」と強調したのも、行政の関与を意識してのことだ。
しかし、その放送局自身が、アニメの映像表現にどれだけ神経を使っていたのかも問われている。
TBSではオウムビデオ事件を踏まえ、一年前に「報道倫理ガイドライン第一版」を作成した。「映像表現上の問題」として、ビデオ編集での〃禁じ手〃が実例を挙げて列記されている。「サブリミナル手法」という視聴者が通常感知できないような短いカツトを映像の中に挿入して何らかのメッセージを伝えようとする手法にふれた項目

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60:「三十六歳会社員」の「アニメに偏見があるのでは」というご意見であります。自分がアニメ大好きなんでしょうな。
61: 法制的な問題とメディアや情報環境の現状とがズレていることを指摘した企画もの。これも新聞としてはかなり頑張った記事と思、つ。

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だ。
そこに〃類似の手法〃として、「内容のない単なる白色や青色の短いカツトを挿入して視聴者の注意を喚起する」手法があり、「こうした〃過剰演出〃の、誤解されやすい手法も好ましいものではない」と書いてあった。
テレビ東京系列で放映されたポケモンでの、赤や青の短いカツトが交互に数秒間光るフリッカー(明滅)映像は「過剰すぎる演出」ではなかったのか。「これを機会に、〃医学的側面〃から映像表現上の問題を見直さなければ」とTBSは言う。
□   ■   □
専門家は「郵政省が放送の実態に追いつけないという側面がある」と指摘する。以前からパソコンでテレビ番組を見たり、テレビでインターネツトを引く時代が来ることは予想されていた。だがパソコンでテレビ番組を見ることは、今の郵政省の規定では放送ではなく、通信になる。パソコンで「ポケモン」を見た大が多数被害を受けても、行政は何の対応もとれないことになつてしまう。
テレビ、パソコンといった多様なメディアをさまざまな映像情報が駆け巡るようになった〃電脳社会〃で、未知のトラブルが今後も発生する危険性は各方面から指摘される。
「郵政省は個々の問題に規制という形でかかわるのでなく、まず、こうした多様化の中で、放送と通信の基本的な秩序を再構築すべきだ」と神奈川大学の田島泰彦教授(メディア法)は強調している。〈産経新聞・朝刊〉

あれこれ
◎アニメーションは国際語、と言ったのは々ンガ家の故手塚治虫さんだった。日本のマンガは話が複雑なので、外国人は絵だけ見ても分からない。吹き出しを外国語に改めるのも難しい。でも、アニメにすると大概は理解されるのだという。無論、言葉を吹き替えれば完全に伝わる。
「ポケモン」の大暴れは外国にも波紋を広げた。テレビの前の子供たちがばたばた倒れるさまは、SF映画そのままの恐怖だから当然だ。国内のテレビすべてからポケモンは消えた。アニメはご存じのように、少しずつ動きの異なる絵をつないで作る。一秒間に二十四コマ必要だが、これを忠実にやると金と時間がかかりすぎる。そこで多くは、同じ絵を二枚か三枚挟んで二十四コマにしているのだという。動きの激しい格闘場面などでは、絵の数を増やすこともある。
ポケモンの問題のシーンは、クライマツクスの表現に力が入っていたのか。映像技術は日進月歩。手塚時代とは比較にならない。原因調査が始まったが、日本アニメが「国際語」から締め出されないためにも安全性の研究は不可欠だ。〈河北新報・朝刊【河北抄】〉

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62: はい、「手塚治虫」という葵の印籠の登場であります。で、「日本アニメ」の「国際化」が評価されるという寸法。でも、その「国際化」の現実ってどんなものなのか、というあたりは、じつはまだあまりちやんと報道されてないんですけどねえ。

79  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

十二月二十一日

●正確な患者数つかめず
まさに青天のへきれきとも言える〃ポケモンパニック〃には教育現場もなすすべがなかった。いまだに有効な対応策を打ち出せないままでいる。県内で最も多く救急患者が発生した浜松市。事態を重視した市教育委員会は緊急調査を実施しすべての市立幼稚園、小・中学校に状況を報告するよう求めた。この結果、幼稚園と小・中学校の約ハ割から報告があったが、正確な患者数を把握できず欠席者が十人いたことを確認するのがやっと。
その理由について市教委は「調査方法が園や学校でまちまちだったため、集まった被害結果は実数を表していない」と歯切れが悪い。要するにデータに信ぴょう性がないとの判断だった。調査目的はまず実態をつかんで対策を立てることは言うまでもないが、調査方法に問題があったと言うよりむしろ予想外のアクシデントで教育現場が対処するには荷が重過ぎたような気がしてならない。〈静岡新聞・朝刊〉

●【群馬】ポケモンで注意事項通知——県教委員
県内でも十八人が病院に収容された「ポケモン」問題で、県教委は二十日までに、関根正喜教育長名で市町村の教育委員会や県立学校などに「テレビ番組視聴後の健康異常問題について」の通知を出した。併せて児童や保護者にも注意喚起するよう求めた。〈毎日新聞・群馬版〉

十二月二十二日

●ネット上で、被害者からかうホームページも
インターネツトのホームペ一ジは、「ポケモン大好き」と書き、赤と青、白の光が点滅する番組の一部を紹介。「ヤバいなと感じたらやめて下さい」とする一方、「こんなもんで病院に運ばれたらダサすぎますよ」と被害者を冒とく。放送のあった十六日の直後から登場、一日二千件以上のアクセスを記録している。《大阪読売新聞・夕刊〉

十二月二十三日

●放送休止 年末・年始も
テレビ東京は二十二日、「ポケットモンスター」に関する大みそかの特別番組と元日から三日までのミニ番組、さらに六日のレギュラー番組を休止すると発表した。それ以後の放送日程は未定。〈朝日新聞・朝刊〉

●アニメ制作基準を示す広告代理店などにテレビ東京
人気アニメ「ポケットモンス夕ー」による体調異常の問題でテレビ東京は、同局と関係がある約三十社の広告代理店やアニメ制作会社に対し、一部の映像技法を極力使わないことなどを

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63: 教育委員会自身が調査データに信頼がおけないことを自覚しているという、これは冷静な報道。大手の日刊紙でこういう報道はほとんどなかったのは、なぜだろう。
64: これ、「冒とく」かなあ。ネツ卜ってのはこういう空間だってことに対する前向きなあきらめがない分、こういうお手軽な「正義」に頼った報道の文法になっちまうというのは、まあ、ありがちであります。わざわざ新聞記事にするようなことかいな。

求める「制作に当たってのお願い」を配った。
同局は、基本的に「パカパカ(画面の背景の色を瞬時に変える)」や「フラッシュ(同一色での点滅)」と呼ばれる技法を極力避けることとしている。そのうえで、使う場合は(こー秒間に三回を超えないようにする(二)色調を変化させる場合には赤と青の組み合わせは避けるなど、具体的な基準を示している。
いずれも、英国の独立テレビ委員会(ITC)の基準を踏まえている。
一方、すでに出来上がった番組については、放送などの際に輝度を下げたり、音の周波数や音量を下げたりする方法で、「刺激」を減らしているという。〈朝日新聞・朝刊〉

◎「ポケモン」被害・反響大きく (65)
「楽しい夕食をとりながら、テレビのアニメを見ていると、数百人の子供たちが日本全国で同時にがたがた震え出し、ひきっけを起こした。テレビが視聴者にえたいの知れない影響を与えた」(十二月十八日付米ニューヨーク・タイムズ紙)「オウム真理教による地下鉄サリン事件以来の奇妙な事件にだれもが啞然(あぜん)とした」(十二月十九日付米ワシントン・ポスト紙)
テレビの人気アニメーション番組「ポケットモンスター」を見ていた子供たちがけいれんを起こしたり、気持ちが悪くなったりした事件は、海外でも大きな反響を呼んだ。
「ちかちかするテレビ映像やコンピューターを見ていると、ひきつけを起こすことがある。特に画面の前で長時間座っているとそうなりやすい」(十二月十八日付英インデペンデント紙)「神経学の専門家によると、テレビ画面が大型化し、ビデオゲームが普及するにつれ、光に敏感な子供がひきつけを起こすケースが増えているという」(同米USAツデー紙)
「私たちはビデオと切っても切れない社会に住んでいる。何が起きているのか、もっと詳しく研究を進めなければならない」(同米ボストン・グローブ紙)日本の特殊事情を指摘する声もある。
「日本では、多くの場合、狭い家に大きなテレビがある。こうした住宅事情が事情を悪化させた。日本のアパート住宅でテレビを見るのは、映画館の最前列で映画を見るようなものだ」(十二月十九日付米ワシントン・ポスト紙)
「英国では同様の事態が起きることはないと、関係者は保護者に平静を呼び掛けている。英国放送協会(BBC)と民放系の独立テレビ委員会(ITC)によると、テレビ画面での強い光の使用を一部規制する指針があり、一秒間に四回以上フラッシュ光を点滅させたり、ちかちかする映像パ夕—ンを放映したりしない」(十二月十八日付英ガーディアン紙)
「米国の親たちは、子供がテレ

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〈貪料〉
●十二月二十三日テレビ東京広報室発表

「ポケットモンスター」の今後の放送について
テレビ東京では今回の「ポケットモンスタ—」による事態を重く受け止め、独自の調査チームを設置したのに加え、日本民間放送連盟(民放連)の調査チームと共同で、原因究明にあたっています。テレビ東京としては、この民放連の調査結果等がまとまるまで、「ポケットモンスター」の放送を休止いたします。

65: 海外、ったって英米なんだけど、報道のされ方の総まくり。ワシントンポストの「日本では、多くの場合、狭い家に大きなテレビがある。こうした住宅事情が事態を悪化させた。日本のアパート住宅でテレビを見るのは、映画館の最前列で映画を見るようなものだ」に拍手。

ビのアニメが原因でひきつけを起こしはしまいかと心配する必要はない。日本のような動きの速いアニメは米国ではほとんど放映されていない。『日本のア二メは米国のよりずっとどぎっく暴力的で、刺激的な場面の連続だ』と、米漫画専門チャンネル、カ—トウ—ン・ネットワ—クの幹部は指摘する」(同米USAツデー紙)(さ)〈東京読売新聞•朝刊〔ジャパンウォツチ〕〉

十二月二十四日

●パニックの被害に「知識あった」——衆院委でテレビ東京社長が陳述
衆院逓信委員会は二十四日、集中審議を行い、参考人として出席したテレビ東京の一木豊社長は公の場で初めて謝罪した。東映動画の山口康男取締役らは、画面を発光させる「透過光」と瞬時に明滅する「パカパカ」と呼ばれる技術が、今回の問題を引き起こしたとの見解を明らかにした。だが、「この表現はアニメ界では何十年も前からの初歩的技術。避けられないものだ」とも述べ、アニメ業界に困惑が広がっていることも明かした。
一木社長は、光の明滅がテレビゲームなどで被害を及ぼしたり、英国でテレビ番組でも問題になった例について、担当者が「知識としてはあった」と説明したうえ、放送までチェツクできなかったことについて、「遺憾であり深く反省している」と釈明した。
だが、原因とみられる表現技術については、一木社長は「我々にとっては、不測の事態というしかありませんでした」と弁明。山口氏も「本件のような例は聞いたことがなかった。驚がくしています」と述べた。これに対し、委員からは「英国の独立テレビ委員会(ITC)が光刺激を禁止する基準を作っているのを知らなかったのか」「アニメが絶叫マシンのように刺激が強くなっている」「金もうけ主義に走っているのでは」などの批判が集中した。また、三月にアニメ「YAT安心! 宇宙旅行」(NHK教育)で同様の被害があった点について、NHKの河野尚行専務理事は被害を民間放送連盟に連絡しなかったことを認め、「今回のような事態に発展すると認識していなかった」と釈明した。テレビ東京は午前十時からの主婦向け情報番組「十時!奥さまプラーザ」の枠内で、同委員会での一木社長の冒頭の謝罪、説明部分だけを生中継した。〈毎日新聞・朝刊〉

●「ポケモン現象」兵器に使える「米口で開発」と米誌報道
【ワシントン二十二日゠時事】二十二日発売の米誌USニューズ・アンド・ワールド・リポ—卜最新号は、日本で人気アニメ「ポケットモンスタ—」を見た子供たちが体の異常を起こした現象を応用した光線点滅兵器の

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〈資料〉
●十二月二十四日
テレビ東京広報室発表

テレビ東京の一木豊社長は二十四日午前、衆議院逓信委員会の「ポケモン問題」に関する集中審議の参考人として出席し、今回の事態についてのこれまでの経緯、内容、対策などについて説明しました。
〈主な内容〉
冒頭、一木社長は「テレビを見ていた方々の健康に影響を及ぼす事態を惹起する事になり、衷心よりお詫び致します。また、まだ入院されている方もいますので、ー日も早く退院出来る事を祈念するとともに、事態の原因究明に全力を挙げて取り組んで行きます」と述べました。
今後の対応と対策については「技術面を中心とした局内調査チームを発足させこの問題に先行しているイギリス、アメリカへ調査班を派遣する事を決めました。また、現在放送している全アニメ二十本については暫定的なガイ

ていると報じた。
同誌によれば、米国防総省は点滅するストロボ光線を非殺傷兵器として利用することを研究、ロシアは人体機能に影響を及ぼす特定の光の配合をパソコン画面に出現させるコンピュー夕—ウィルスの開発を完了したといわれる。〈朝日新聞・朝刊〉

●近畿の学校で「テレビ長時間見ないで」児童に冬休み中の指導
近畿地方の大半の学校で二十四日、二学期の終業式が行われた。テレビの人気アニメ番組「ポケットモンスター」を見た子供たちがけいれんを起こすなどの被害が起きたことを受け、冬休み中テレビやゲームの画面を長時間見ないよう指導する学校が目立った。
全校児童三百九十七人中二百九十二人が同番組を見て一人が入院した大阪府堺市立深阪小学校では、「時々画面から目を離す」などの注意点を書いた保健便りを全クラスに配布した。
約二十大が目の異常や体のだるさを訴えた大阪市立田川小(淀川区)でも、教師が全校児童三百五大に「テレビやゲームの画面を見ていて気分が悪くなったら、すぐ離れるように」と注意した。〈大阪読売新聞・夕刊〉

●【静岡】クリスマスのプレゼントは?
「ポケモン」人気衰えず
クリスマス・イブを翌日に控えた二十三日、街はプレゼントを買い求める大たちでにぎわった。JR静岡駅の駅ビルにある「キディランド」静岡店も、小さな子どもを連れた父親や母親たちであふれ、レジの前には長い列ができていた。
「今年の売れ筋は『ポケットモンスタ—』のキャラクタ—グッズ。ぬいぐるみやタオルなどをあわせて一大で三千円ぐらい。春ぐらいから売り出したハイパーヨーヨーも大気がある」と店長の大田典克さん(四〇)。山のように積み上げられたぬいぐるみの前で、「ねえ、これ買って、これ買って」とねだる子どもに、「明日になればサンタさんがプレゼントを持ってきてくれるから」と必死に説得する母親の姿もあった。〈朝日新聞・朝刊〉

十二月二十五日

●効果画像、慎重期す
民放連が申し合わせ
テレビ東京系列の「ポケットモンスタ—」問題で、日本民間放送連盟(氏家斉一郎会長、加盟百九十社)の放送基準審議会は二十四日、事態の原因解明まで、せん光や急速に点滅する光の画像、極端に短い映像などを多用したアニメ番組の放送は当面、特に慎重に取り扱うことを申し合わせた。あす二十六日に文書で加盟各社に伝える。また、同審議会は同日、在京キー局の技術責任者ら十一大で構成し、民放連としてのガイドライン作りの具体的作業を行う

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ドラインを作成し手直しやチェック体制を強化しています」と説明しました。
また「ポケットモンスター」の放送再開については「民間放送連盟のガイドライン等がでるまでは休止する」と述べました。
66:「金もうけ主義に走っているのではないか」ったって、あなた、今やアニメとキャラクター商品はこの不景気の中で数少ない大きな商売ですからねえ。国会議員のセンセイ方の「正義」も、この程度であります。
67:『朝日新聞』だから、なんかもっともらしく見えるけど、これってトンデモ丸出しですがな。この元ネタの記事のウラはどこまでとったんかいな。

「アニメ映像特別部会」と、医師らで構成し、同部会に助言を与える「アニメ映像顧問会議」を設置した。〈東京読売新聞・朝刊〉

十二月二士八日

●「ポケモン」対策で初会合、来年三月郵政省指針
人気アニメ「ポケットモンス夕ー」(テレビ東京系)で児童ら多数が入院した問題で、郵政省が再発防止策をまとめるために設置した「放送と視聴覚機能に関する検討会」(座長・原島博東大教授)の初会合が二十六日、開かれた。映像表現のあり方や放送方式、技術基準の見直しなどを含め、来年三月にアニメ番組の与える影響を中心とする中間報告をまとめることでー致。さらに六月までに放送番組全般の体に与える影響という観点から、映像表現に関するガイドラインをすることもにらみながら検討を重ねる。
「ポケモン」問題では同日、厚生省でも医師らによる検討会の初会合が開かれ、個別症例の具体的把握、研究を担当。一方、郵政省の検討会は、工学、心理学、医学の専門家や放送番組制作者が将来の放送メディアのあり方に的を絞り、テレビの大画面・広視野・高画質化やバーチヤルリアリティー(仮想現実)による臨場感と視聴者の反応などについて指針をまとめる。〈毎日新聞・朝刊〉

●NHK教育アニメの被害
九県十二人に拡大
ポケモン問題参院逓信委
テレビ東京のアニメ「ポケットモンスタ1」(ポケモン)などを見た子供たちに、けいれんなどの症状が出た問題で二十五日、前日の衆院に続いて参院逓信委員会が開かれた。
参考人として出席したNHKの河野尚行専務理事は、今年三月教育テレビで放送したアニメ番組を見て具合が悪くなった子供が、二十五日までの調べで、九県十二人にまで増えたことを報告。正式なガイドラインができるまでの暫定基準を局内に設けたことを明らかにした。NHKの河野専務は質疑の中で、英国のガイドラインなどを参考に「赤と青など補色関係にある色のフラッシュ(通称パカパカ)は使わない」など四項目の暫定基準を決め、同日までに制作現場などに通達したことを明らかにした。〈産経新聞・朝刊〉

●刺激的な光で放送中止、NHKで一件参院委で報告テレビ東京の「ポケットモンスター」問題で、NHKが過去の番組を見直した結果、刺激的な光の使用で放送の中止や手直しをした映像が二件あったことが、二十五日新たにわかった。参院逓信委員会で河野尚行NHK総局長が報告した。
一件は一九九五年六月に仙台放送局が東北六県で放送したスポーツ番組のタイトル映像で、コンピューター・グラフィック

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〈資料〉
●十二月二十三日
テレビ東京広報室発表

十二月二十五日番組休止のお知らせ
先に毎週火曜日のレギュラー放送につきましては、民放連の調査結果がでるまで休止することを決めましたが、年末年始に予定していました番組についても中止を決めました。
十二月三十一日(水)朝九:〇〇ー九ニ五四放送予定の「大みそかポケットモンスター!アンコール」
一月一日(木)から一月三日(土)まで六分間のミニ枠で放送を予定していた「ポケモンクイズ」

68: NHKの三月の事件までもが蒸し返されて、新たな展開をしているようです。被害者が増えたというのは、「そういえば、うちの子もあの時……」てなケースが出てきたのかもしれない。

スによる複数の光の点滅に対して、精神科医から「発作を起こす危険がある」と指摘を受けたため使用を中止した。
もう一件は教育テレビで土曜夜に放送中の「サイエンスアイ」のタイトルバック映像。今月十七日、「光の点滅が不愉快」という指摘を視聴者から受けて、点滅を弱めるなどの手直しをした。〈東京読売新聞•朝刊〉

●ビデオを見せた教諭に注意ポケモン騒動で横浜の小学校
横浜市内の市立小学校で、六年生のクラス担任の女性教諭(三七)が、多数の子どもがけいれんなどを起こした「ポケットモンスター」のビデオを、早送りで児童数人に見せていたことが二十六日、わかった。横浜市教委は教諭に口頭で注意した。
同市教委によると、放映があった三日後の十九日、教諭が「ビデオがあったら持ってきて」と教室で呼びかけた。教諭は数人の児童からせがまれ、拒みきれずに教室で早送りで見せた。
〈朝日新聞•夕刊〉

●「ポケモン」相談愛知県きょう設置
テレビの人気アニメ番組「ポケットモンスタ—」(ポケモン)を見て、多くの子供たちが体の異常を訴えた問題に関連し、愛知県はきょう二十六日、「光感受性発作」などについての相談窓口を設置する。
光感受性発作は、テレビ画面のちらつきや色の変化など、激しい光の変化で起こるとされ、意識を失ったり手足のけいれんといった症状があらわれるという。消防庁によると、今月十六日の「ポケモン」放映後、全国で六百八十五人、東海三県では七十七人が救急車で病院に運ばれた。
相談窓口では、同県総合保健センタ—の精神科医が対応する。〈中部読売新聞•朝刊〉
◎「ポケモン騒動」が象徴、神がかりの電脳社会「ポケモン」騒動は、テレビ文化というより現代生活にかかわる象徴的な事件だ。
光学や臨床心理学、あるいはアニメやCGの映像処理上の問題もあるが、むしろテレビを見ていた多くの幼児たちが日本全国、同時多発的に同じような被害にあった現象に関心を持つ。それは現代の子供状況に深くかかわる事件だからだ。まず地縁的な子供社会が大きく欠落している環境が目を引く。町中で遊んでいる子供たちを見かけない。個室に引きこもるか、塾に急ぐ子供たちが大半だからだ。両親が共働きで不在がちの家庭の寒々とした風景が見えてくる。
生身の友達の代役を果たしているのがテレビだ。優しくてかわいらしく、勇気もある「ピカチュウ」をはじめ、怪獣たちがお友達になってくれる。キャラクター・グッズを集める。その行為自体が幼児たちの話題の中

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69: アニメだけではなく、こういう水面下での動きがすでにあったってことね。民放ではなかったんだろうか。今後、光の点滅系の映像に過剰反応する大々は増えるだろう。
70: これも、要するにてめえが見たかったってだけなんじやないか。子どもとの関係が単なる友だちになっちまってて、そのことに違和感をもたなくなっている今どきの小学校の現場のありようが見えるようなスカな事件でした。

85  PART-1►「ポケモン事件」とメディア

心となる。見ていない子供は疎外される。
だから子供たちは必死なのだ。「やめないで…」の投書が放送局に殺到する。
もともと人類は、光や音に超能力を秘めたパワーを感じ、畏怖の感情を示した。古代宗教にみる神事には火や太鼓がっきものだった。光と音の高揚の瞬間に巫女が神がかり状態(失神)になり、神のお告げを口走るわけだ。
光と音と色の合成による物語性こそがテレビなのだが、物語より記号に優位を置く電脳社会とは、案外古代社会的な側面を持っているのではないか。特に子供たちにである。
子供はテレビをそばで凝視する。半ば口を開け、放心したように画面のキャラクターの動きにのめり込む。仮想現実の中で主人公はカリスマ性を帯びてくる。子供は目くるめく光の乱舞に取り込まれる〃神がかり〃である。
それはテレビに限らない。電脳都市状況化し、記号の交信が言葉に取って代わる時代だ。ポケベルごっこもポケモン騒動も示唆的である。だからこそ、幼児の母親たちに「テレビに子守りをさせないで」と訴える言葉は切実なのである。(松尾羊一・放送評論家)〈北海道新聞・夕刊【放送時評】〉

十二月二十七日

●ポケモン被害も、支払い対象に——都民共済
都民総合共済生活協同組合(都民共済、豊島区)は二十六日までに、人気アニメ「ポケットモンスター」を見て全国の子どもたちが体の異常を訴えた被害を「不慮の事故」とし、「こども共済」の支払い対象にすることを決めた。生命共済の加入者も同様だが、二十五日現在、いずれも支払い請求はないという。〈毎日新聞・東京版〉

●連携深め指針作成民放連の特別部会
ポケモン問題で、日本民間放送連盟(民放連)が放送基準審議会のもとに設置した映像表現のガイドラインを検討する組織「アニメーションの映像表現に関する特別部会」の第一回会合が二十六日、開かれた。会合にはテレ東の森廣成編成専任局長が特別に出席し、テレ東内でのこれまでの対応や社内調査チームの今後のスケジュールなどを報告。これを受けて特別部会はテレ東、NHKのほか郵政省や厚生省が設置した検討会とも連携を深め、ガイドラインの作成を含めた対応を行っていくことを確認した。部会長には中京テレビの岡田晋吉副社長が選ばれた。〈産経新聞・朝刊〉

●郵政諮問機関が三月までに中間報告 神経への影響調査
郵政省放送行政局長の諮問機関「放送と視聴覚機能に関する検討会」(座長・原島博東大教授)が二十六日、郵政省で初会

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71: この松尾羊一というのは、スカの多い放送関係の評論家ではかなりイイ線いってる誠実な人。テレビの視聴環境の変貌を的確に指摘するこの記事も穏当なものだ。

72: 都民共済までが先取りして「補償」に動いております。なんなんだ、こういう軽挙妄動っぽい動き方って。

〈資料〉
●十二月二十六日
テレビ東京広報室資料

テレビ東京の局内調査チームのイギリス、アメリカ派遣計画が決まりました。
調査チームはそれぞれ二人で構成し、イギリスへは一月六日出発、約十日間滞在して、ITC(英独立テレビ委員会)やBBCなどを訪問して、放送、制作のガイドラインや規制などについて調査する予定です。
またアメリカへは一月十二日から約十日間の予定で派遣する計画

合を開き、九八年三月までに、再発の防止策を盛り込んだ中間報告をまとめる方針を決めた。検討会は映像関係や医学、心理学の学者や放送番組制作の関係者で構成。アニメーションを中心とした最近の番組ソフト制作の最新技術や、映像が人間の感覚機能や自律神経に与える影響を調査する。最終報告は来年六月の予定。〈東京読売新聞・朝刊〉

●厚生省研究班が一回目の会合
厚生省の「光感受性発作に関する臨床研究班」(班長゠山内俊雄・埼玉医科大教授)が二十六日、一回目の会合を開いた。研究班は、(こ「事件」の全体像を把握するための基礎資料として、全国数カ所の地域の小、中、高校の在校生を対象に症状の有無や程度などを聞き取り調査する(二)症状を起こした八十人から百六十人を対象に、詳細な症状と既往症など医学的なデータを集め、発作を防ぐための情報を集める(三)問題となった映像が健康な人の脳波に与える影響を徹底して調べ、点滅の頻度、色彩、図形の種類など物理的な条件が特殊なものだったのかどうかを検討する——を研究目的とした三班に分かれることが決まった。三月までに研究成果をまとめ、再発防止と映像作成のガイドラインづくりの参考資料とする。〈朝日新聞・朝刊〉

●北見冬まつりポケモンの名消す
来年二月十三日から十五日に北見市役所前小公園を会場に開かれる「第二十八回北見冬まつり」(北見観光協会など主催)の大雪像のテーマが「みんなのバレンタイン」に決まった。子供たちに人気の「ポケットモンスター(ポケモン)」のキャラクターの雪像が含まれているものの、テレビアニメを見た子供が引き付けを起こした騒動に配慮、テーマ名からポケモンを急きよ外した。〈北海道新聞・朝刊【道北】〉

十二月二十八日

●鹿熊安正氏、放送基準強化に動く
◇…自民党の鹿熊安正参院議員が、いわゆる「ポケットモンスタ—」問題を受け、放送基準の強化に動く構えを見せている。参院逓信委員会で筆頭理事を務める鹿熊参院議員は、かねてテレビ番組のチェツク体制を取り上げてきたが、今回の動きについて、郵政省への影響力向上が狙いと勘ぐる向きも出ている。
「七百人もの視聴者が病院に運ばれたのは我が国テレビ放送始まって以来のことだ。こんな重大事態をどう受け止めるのか」。三十五日、「ポケモン」問題を受けて急きょ開かれた参院逓信委員会で、鹿熊氏は参考人として出席したテレビ東京、郵政省、厚生省の幹部に次々とただした。さらにテレビ東京の一木豊社長に対し、「入院費の負担など誠意ある対応を求めたい」

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でFCC(米連邦通信委員会)や三大ネットワークなどを訪問する予定です。

87  PART-1► 「ポケモン事件」とメディア

とたたみかけると一本社長は「誠意ある対応を取りたい」と即答する形となった。〈北國・富山新聞・朝刊〉

十二月三十一日

●米国紙のポケモン報道「日本アニメたたきはナンセンス!」
米のファンが抗議
人気アニメ「ポケットモンス夕ー」を見た子供たちがけいれんなどを起こした事件が米国に飛び火し、「ポケモンに名を借りた日本アニメたたきは許せない」という議論に発展している。
発端は、USAツデー紙が事件の翌日、同紙のオンライン版に載せた「米国の子供はまんがによる発作の心配はない」と題した記事薪聞には十八日付で掲載)。「事件は光の激しい点滅などで起きた」と説明したあと、「しかし、米国のネツトワークテレビもケーブルテレビも、過激で暴力的な〃アニメ〃と呼ばれる日本のまんがは放送しない」とした。
この記事に反発したのが英語でも「OTAKU」と呼ばれる米国の〃アニメ〃ファン。一人の女性がすぐに抗議のページを開設するとともにツデー紙の編集者、記者に「事実誤認だらけで、悲しむべき偏向ジャーナリズムの見本だ」とする抗議の電子メールを送りつけた。その根拠として、動きの速いアニメーションは米国でも多いし、米国のものでも日本で作られているものが少なくないうえ、現実にテレビ放映されていることを挙げている。さらにひとくくりにして〃アニメ〃は「危険」とするのは偏向もいいところだとして、釈明や訂正を要求している。同趣旨の抗議メールは百通以上に達した。
これに対して同紙の反論は共同執筆者の一人(科学記者)からだけ。それも「自分の役割は光の点滅による影響を書くことだけで、日本アニメには詳しくない」と素つ気ないもの。アニメファンの間に抗議ページのリンクが広まっており、同紙への圧力が続きそうだ。〈東京読売新聞•朝刊〉

一月八日

◎不幸な事態生かしたいテレビ東京・一木豊社長に聞く
アニメ番組を見ていた子どもたちが大勢倒れ、放送界に大波紋を起こしたテレビ東京の「ポケットモンスター」騒ぎ。日本民間放送連盟などが原因の解明を急いでいるが、番組のチェツクに問題はなかったか、現在は番組制作はどうなっているのか、そして再開はいつか、テレビ東京の一本豊社長(六三)が騒動後初めてインタビューに応じた。
——今回の事態をどのように受け止めているか。
多数の被害者が出た以上、放送した私どもの局に全面的責任がある。申し訳ない。
——極端な光の点滅など、

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73: ここでも「補償」が圧力化され始めている。議員センセイを動かしてこういう質問をさせた方々がいらっしやるんでしょうな。
74: アメリカでも、やっぱりこういう手合いのバカモノさ加減は同じとい、っことでしょうか。「わたしの好きなものを全然理解していないくせに」というストレスが前提になっている点では、このへんの気分に国境はないらしい。

映像技法が引き起こす人体への影響を考えたことはあったのか。 (75)
「不測の事態」と国会でお話ししたら、大変なおしかりをいただいたが、全くの正直な気持ちだった。騒ぎが起きて、テレビゲームが原因で起きる発作に関する報告や、光点滅を番組の演出に使うことに関する英国の規制があったなあと、頭の片隅にぼんやりと思い出した程度だった。
——アニメはすべて外注のため、自社制作の番組と比べて、チェックが甘かったのではないか。
実績のある制作会社に発注しているので、信頼性は亠咼いと思っている。差別用語やストーリーの倫理性など、ソフト面の点検は厳密にやっている。ただ、今回の事態はチェックの対象外だった。自社で作ったとしても同じことが起きた可能性はあった。
——番組の映像技法が、回を追うごとに過激になっていったのではないか。
子どもたちに喜んでもらうため、テンションを高めていく演出をしようという気持ちが、制作現場に絶対になかったとは言い切れない。
——問題になった回以降の作品はどうなっているのか。
アニメの納品は毎回、放送の一週間前から三、四日前。問題となった第三十八話の次の放送分は、まだ完全には仕上がっていなかった。原作から見直しをさせている最中だ。
——今後、番組をどうしたいのか。
現段階では打ち切りは考えていない。「ポケモン」自体は悪くない。技法の問題だ。民放連の調査結果が年度内に出るはずで、その後すぐにでも再開したい。原因が不明確なまま、また、ガイドラインができる前に、打ち切りを決めてしまうことのほうが、放送機関としては無責任だと思っている。
——ガイドラインの意味と目的は。
ガイドラインの研究のために、スタッフを近く英米に派遣する。どんなものなのか全容がつかめていない。幅広いデータを集めるように言ってある。ただ、テレビの文化的評価、視聴形態は日本と外国とでは違う。こういう基準で制作すればこと足れりと考えること自体が安易だろう。もちろん日本独自のガイドラインは必要だ。日進月歩のメディア時代、番組の作り手にとって、ガイドラインとは、その時々のテレビ文化を考える一つの指標。それをどう活用するかが重要だ。
——さらに何が必要だと思うか。
ブラウン管との付き合い方については、家庭でも気を配ってほしい。今回の騒動を機に、家庭とテレビ局が共にテレビを考えて、あの不幸な事態を将来に生かしていければと思っている。〈朝日新聞・夕刊〉

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75: ほとんど国会答弁みたいな気の毒な対応ですな。

〈資料〉
●一月五日テレビ東京資料

今後の放送について「ポケットモンスタ—」のレギユラー放送再開については、今回の問題に関する民放連等の調査結果などを待って決定することになりますが、その間の代替番組として「学級王ヤマザキ」を放送する事を決めました。
なおテレビ東京としても明日六日に、イギリスの事情を調査するための調査チームを派遣、来週にはアメリカへも調査チームを派遣して、独自に放送ガイドライン等の研究をしていきます。出来るだけ早い段階で何らかの結論が出せるよう努力しています。

89 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

一月十三日

●ポケモン騒動CATVで〃増幅〃? (76)
地上波受信し同時放送テレビ東京のアニメ番組「ポケットモンスター」(通称「ポケモン」)を見て、全国で多数の子どもたちがけいれんを起こし入院した問題で、同局の電波が届いていないはずの「放送エリア外」からも症状を訴えた子どもが多かつたことが分かつた。ケーブルテレビ(CATV)を通じた視聴による可能性が高く、今回の問題でキー局、地方局、CATVの間の電波のやりとりのあいまいさが浮かび上がってきた。
先月十六日、「ポケモン」第三十八話が実際に放送されたのは、テレビ東京(関東一都六県)と、テレビ愛知やテレビ大阪などネットワーク五局(北海道、愛知、大阪、岡山、香川、福岡)。その放送エリアを単純に計算すると、十三都道府県になる。
ところが、病院に運ばれた子どもの数は、二十八都道府県にまたがっていた。もちろん、その一部は放送エリアに隣接し、電波が届いている地域もあるが、完全に届かない地域には、CATVによる同時放送の網が広がっていた。
例えば、静岡県。浜松市の七人を中心に、静岡、熱海市など計十二人が病院に運ばれた。静岡県は、テレビ東京のエリア外で、「ポケモン」は地元の静岡放送が番組放映権をテレビ東京から購入していたが、約三カ月遅れの放送で、問題の第三十八話は放送していなかった。一方、CATVは県内に約十局あり、静岡市の静岡ケーブルネットワークではテレビ東京の電波を、浜松市の浜松ケーブルテレビではテレビ愛知の電波を、それぞれの施設で直接受信して、この「ポケモン」第三十八話をエリア内と同時に放送した。
CATVの両局は、ともに「同時再送信の同意、許可を得ているーと話しているが、テレビ東京側は「番組はエリア内の放送が原則。それ以外の地域は番組を地方局に販売する形で、放送の権利を認めている。CATVと契約を交わしているわけではないが、黙認はしていた。四月以降は断ることも検討している」と、ー尸惑つている。「ポケモン」は、子どもたちに超人気番組だっただけに、CATVにとっては地元放送局より先に放送できる強力なセールスポイント。しかし、今回の事件で補償の問題が出てきた場合、テレビ東京としては正式な契約でない放送までの責任は負いきれない、というのが本音。本来放送していない地域での被害をめぐる責任はどちらにあるのか、議論になりそうだ。〈西日本新聞•朝刊【ゆうライフ】〉

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76: CATV(ケーブルテレビ)と契約の問題について掘り下げた、これも好企画。このテの小回りの効いた企画ものも、大手の日刊紙には見られなかったなあ。

〈資料〉
●一月十三日付テレビ東京・イン夕ーネツト・ホームページ・ウエツブマスターから

ポケモンの放送再開を望む沢山の方々からのメールを頂いています。ありがとうございます。そのなかで「中止」するとの噂の真偽についての問い合わせも多く寄せられましたが、現状で中止を決めたというような事は全くありませんので念のためお伝えします。
なお弊社社長も新年挨拶で放送局としての責任を重く受けとめるとともに被害に遭った方々には改めてお詫びを申しあげながら、「一日も早く再開に漕ぎ着ける事も我々の重要な使命だと思っています」と述べ「健全で、物理的にも内容的にも問題のない「ポケモ

一月士八日

●「ボケモン騒動」からーカ月強い放送再開の声
テレビ東京系の人気アニメ番組「ポケットモンスタ—」を見ていた子供たちが、けいれんや意識障害を起こして病院に運ばれた〃ポケモン・ショツク〃から十六日でーカ月が経過した。テレビ東京に寄せられた事件関連の投書のうち、放送継続を訴える手紙は七割を超え、CMスポンサーも事件前の七社のうち六社がそのまま代替番組に付いたままで、放送再開が大前提となっているのが現状だ。しかし、テレビ各社で構成する日本民間放送連盟(民放連)や行政による検討はようやく軌道に乗ったばかりだ。
【テレビ東京板挟み】
視聴者とスポンサーの双方から放映再開を迫られているテレビ東京では、一木豊社長が新年あいさつで「一日も早く放送再開にこぎつけるのも重要な使命」とぶちあげるなど、再開のための基準づくりに懸命だ。事件三日後の十二月十九日には局内調査チームが、イギリスの独立テレビ委員会(ITC)のガイダンスノートを参考に暫定的ガイドラインを策定し、ア二メ制作会社二十社に通知。子供向けアニメ番組の放映前には、テレビから離れて視聴するよう字幕の放映も始めた。今月には、英・米両国に調査チームを派遣するとともに、東京女子医大小児科の「テレビゲーム誘発けいれん」研究班と共同で、関東地区の八十五病院を対象に、症状や番組を見ていた状況などに関するアンケートを開始、二十日には集計作業を行うという。
【検討結果は三月末】
民放連、NHKもそれぞれ有識者などによる調査チームを編成。今月中旬から英国へ実態調査に派遣し、三月末に「独自の映像技術的な基準を定める」(NHK広報)としている。厚生省は医療専門家約十人に
よる「臨床研究班」が、症例や原因究明など医学的なアプローチから検討。郵政省は「放送と視聴覚機能に関する研究会」を設置、英国に調査団を派遣した。
いずれも一定の検討結果が出そろうのは三月末で、「多角的な調査が必要であり、検討が本格化するのは今月下旬以降」(厚生省筋)としている。このため、テレビ東京では「正式な基準を自社内で作ることで、民放連の動きも早めたい」(同社広報)としている。〈産経新聞•朝刊〉

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ン」として一日も早く全力を挙げて放送したいと思います」と語っております。
民放連の調査結果と何らかのガイド基準ができるまでいましばらくお待ち下さい。

※本ファイルのデータは「毎日新聞」「読売新聞」「朝日新聞」「産経新聞」「北海道新聞」「河北新報」「北國・富山新聞」「静岡新聞」「中日新聞」「高知新聞」「愛媛新聞」「西日本新聞」「南日本新聞」に掲載された「ポケモン」にまつわる全四百九十四の記事、およびNHKのニュース原稿のなかから、編集部が選択、抜粋し、報道日順に並べたものです。

本欄のコメントは大月隆寛が担当しました。

91  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア
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