Pokemon Story/Chapter 4/Subchapter 1: Pokemon 2001

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1 ポケモン2001

ポケモンとビジネス

もしかすると多くの方々が、キャラクタ—ビジネスというのは、キャラクタ—さえゲットしたら、後は左団扇だと思っておられたかもしれません。ましてポケモンのように「現象」と呼ばれるほどのヒットを飛ばしたキャラクタ—であれば、関係者が寝ている間に利益を生んでくれるんだろう。そう考えていたのではありませんか? 実はそうではなかったということが、これまでのお話でおわかりいただけたでしょう。寝ている間に利益を生むには、寝てはいられないのです。キャラクタービジネスの関係者は、楽ではありません。もしかすると、キャラクタービジネスというものは、ヒットすればするほど、関係者は眠れなくなるビジネスなのかもしれません。ポケモンビジネスに接していると、そんな気さえしてきます。キャラクターというものは、それほど手間暇をかけてやらなければ育たないものなのでしょう。まるでひとの子どものようです。

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ポケモンのこれから
僕自身は、ポケモンの中心人物ではありません。映像チー厶の責任者ではありますが、それはポケモンをお手伝いしている立場であることには変わりありません。その僕がポケモンのこれこれからを一席ぶつのは立場を越えているでしょう。
僕はメディアで働いています。ですので、様々な情報が入ってきます。任天堂関係以外の方とお仕事させていただくことも少なくありません。それらの方々は僕がポケモンの仕事をやっていることを知
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第4章  ポケモンワールド

ヒットするキャラクターを生み出すにも、そのキャラクタ—のヒットをビジネスの仕組みとして築き上げてゆくにも、またそのヒットを維持してゆくにも、人はありつたけの知恵を絞らなければならなりません。それは、ゲームソフトやカードゲームで、またアニメーションの制作で、人々がいかに真剣にクリエイティブに取り組んでいたか、それを思い出していただければ十分でしょう。
しかし、もっとも重要なポイントは、彼らは作り上げてからも休んではいないということです。ポケモンのゲームチームもアニメチームも、作り上げたときに匹敵する真剣さで、いまもゲーム制作に、カードゲームの新しい工夫に、アニメーション制作に、持てるクリエイティブを注ぎ込んでいるのです。
それは何もポケモンには限りません。長寿といわれるキャラクターは、みんな同じです。誕生してはや30年にもなるドラえもんが、いまも毎年映画化され、毎年コンスタントに20億円前後の配給収入を上げているのは、ドラえもんがいまも生きている証明ですが、そのために大勢のスタッフが知恵を絞っています。キャラクタービジネスのフロンティア、ディズニーのキャラクタ—も同様です。世界最大の玩具メーカー・マテル社の日本法人で、ディズニーのライセンス商品を担当してきたあるアメリカ人女性は、次のように話しています。
「ディズニーの商品クオリティの要求は非常に高くて、企画提案するときはいつもと

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っている上でお仕事をさせていただいているので、僕自身の守秘義務は元よりスタッフの秘密保持に対しても細心の注意を配っています。僕の存在価値は、ポケモン関係者の中で一番とは決して言いませんが、ポケモン以外のこともまあまあ見えている視野の裾野が広い人間であることだ(誰に言われたわけではありません。本当にそう思っているのは自分だけかも……)と思っています。自分のことは、自分が何屋だか分からないこともありよく見えていませんが、ポケモンの世間の中でのポジションはわかっているつもりです。
前置きが長くなってすいません。そんなちよつとアウトサイダー的立場でポケモンのこれからを占うと未来はある
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ても気を遣っていました。さらにそのディレクションも、商品のセグメンテーションごとに微妙に違っていて、コンセプトが曖昧な商品企画はあっという間にごみ箱行きです。ちよつとした思いっきが大当たりということは、ディズニーのグッズにはないと思います。そんな奇跡は誰も信じていないでしょう。ディレクションの内容ですか?残念ながら、退社した今もそれはお話できません。そういう約束をしていますから」
キャラクタービジネスは、殿様商売ではありません。常に柔軟なディレクションを必要とする、取り扱い難いビジネスです。久保はこう話しています。「ドラえもんは、テレビ朝日のアニメ番組の中で生きている。ミッキーは、ディズ二ーランドにいけば会える。スヌーピーは、新聞を開けば会える。キティちゃんは、キティランドにいくと、一緒に写真が撮れる。そういう存在感を背景に、消費者はキャラクターグッズを買うんです。その存在感を失ったり、疑われたりすると、もうだめでしょう。残念ながら、シュルツさんがお亡くなりになったので、スヌーピーには会えなくなりました。あそこは、原作者がいなくなってもクリエイティブを維持するような仕組みになっていませんから。スヌーピーは世界三大キャラクタ—の一つですが、生きているスヌーピーに会えなくなるということが、スヌーピーのキャラクタ—ビジネスに与える影響は大きいでしょうね。スヌーピーファンにとっては、永遠のキャラ

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が課題が多いと言わざる負えません。それはポケモンが持つオリジナリティが原因なのです。
わかりやすく説明するためにポケモンとその他のエバーグリーンと言われて長生きしているキャラクタ—を比較してみましょう。
①ポケモンのストーリーは旅がテーマになっている。ミッキーマウス、ドラえもん、キティ、スヌーピーといった20年以上生きているキャラクターは日常生活をテーマに描かれている物が多いのです。他の20年選手だと、ウルトラマン、仮面ライダー、ガンダ厶が思い浮かびますが、これらは決して主人公が一人ではありません。シリーズがありその度にヒーローは変わっていきます。ただバトルシ
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第4章  ポケモンワールド

クターとして心のなかでは生き続けるでしょうが、ビジネスでは、かなり大きなハンデなんです。その存在感を維持してゆくことが、キャラクタービジネスと言ってもいいのかもしれません。じやあ、ポケモンはどこにいるんだ?その問いに答えられる世界を築き上げることが、僕たちの仕事だと思っています」キャラクターの存在感をいかに強め、永続させて行くか。それに関係者は知恵を絞るのです。そう考えると、キャラクタ—ビジネスは皮肉なビジネスかもしれません。知恵を絞らなければキャラクターは使い捨てです。そして、キャラクターを使い捨てにしたくなければ、逆に人間の方が、膏血を絞り取られることになるのです。ポケモンビジネスの特徴のひとつに、そのディレクションの分業があります。ポケモンという言葉には、ゲームソフト、カードゲーム、アニメーションという三つのパラレルワールドが含まれるわけですが、その全体の基盤となり、方向性を決定するコンセプトについては石原がディレクションし、戦略上重要な意味を持つ映像を使用してのジビネス展開については久保が中心となって企画を立案し、そうした石原のディレクションと久保の企画提案に対して、川口が任天堂の立場からアドバイスとバツクアップを与えるというトロイカ体制です。
同時にそれは、クリエータ—の田尻を守ってゲーム制作に専念させるための仕組み

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ーンは殆ど同じところで戦っており、旅をして動いていくというのはポケモンだけかもしれません。旅をすると出会いがあります。サトシが持つポケモン達も変わってきています。本来ならば、テレビシリーズは主人公の街の中で殆ど完結して、映画は冒険の旅に出るというどらえもんタイプが息の長いキャラクタ—になりやすいのです。旅の生活は見る方からすると、途中からストーリーに入りづらく、新しいファンには八ードルに感じます。また一度離れたフアンも戻りにくいのです。ポケモンのアニメのストーリーはゲー厶のストーリーをベースにしていいるので、ゲー厶をクリアした人がテレビを見ると、この先のアニメス卜ーリーをおおざっぱに想像
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でもあります。それはポケモンビジネスが成長する過程で各自の得意分野が明確になり、自然に出来上がったものでした。これも吉川が言うように「あの人がいなかったらこうはならなかった」というポケモンが恵まれた大きな幸運の一つだったでしょう。彼らは多くの場合、プロデューサーという肩書きで対外的に紹介されますが、実は現場のディレクターとしての作業をおろそかにしてはいません。ビジネス上のほぼすべての事柄に対して、きめ細かくディレクションし、スーパーバイズしています。そのため、ビジネスの拡大とともに彼らはどんどん忙しくなります。ポケモンという巨大なビジネスを、人にたとえれば、彼らは眠ることのない脳として機能しているのです。そして、小プロは契約によって自立的に働いて全身に利益という血液を送り出す心臓に、任天堂はポケモンビジネスの総体を形成する体組織にたとえられるでしよう。これらが心身ともに健全だったからこそ、今日の成功があるのかもしれません。こうした合議制に近いシステムは、実は有名キャラクターではそれほど一般的なシステムではありません。スヌーピーの作者はシュルツ本大1大だけでしたし、ムーミンも作者はトーベ・ヤンソン1大だけです。ドラえもんも、藤子•F•不二雄亡きあとも、その継承者が藤子プロを設立し(現社長・伊藤善章の前職は小プロ•メディア事業部。久保と共に任天堂を説得したキーパーソンです)、原作権は1本化されています。いま、世界的キャラクターの中で、原作権が1大、もしくは1社に集約されて

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することは可能です。それでもアニメが面白いのは、基本的にゲー厶ボーイのゲー厶とカードゲー厶とアニメというのが微妙なバランスで立ち会っているということが理由です。表現方法が限定されているゲー厶八ード。自分でストーリーを作ると言っても過言ではないカードゲー厶。フル彩色とアクション、音楽のあるアニメーションがポケモン(同じキャラクタ—群)という共通項を元に複雑に絡み合って立っているのです。その立ち方はそれぞれが独立している「3本の矢」というよりは太いワイヤーが絡み合ってる「ラーメン構造」に近いと思います。それゆえ強力で堅固ですし、他のキャラクターにはない世界展開が可能だったと考えています。
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第4章  ポケモンワールド

いないキャラクタ—は、ポケモンただ一つでしょう。
ポケモンビジネスが目指しているのはどこか?そう尋ねたとき、石原はこう話しています。
「これは、ポケモンセンターのコンセプトですが、一時期のブームで終わらないように願いを込めて作ったお店が、将来ワーナースタジオストアとかディズニーストアのように、一つのキャラクタ—を長く扱うお店になっていきたいなあと思ったんです」本書を執筆している2000年の段階では、セールス上の成功という意味では、ポケモンのピカチュウは、ミッキーマウスをはるかに凌いでいます。が、それで勝負がついたわけではありません。これまでにもミッキーは、キャベツ畑人形や、ファービ—人形など、数多のライバルたちの挑戦を受け、一時的に負けたことは何度もあります。でも最後まで生き延びたのはミッキーだけでした。久保はこう話しています。「ミッキーに売り上げで勝っているっていうことは大きな意味をもってはいますが、長期的には、必ずしも必要条件ではないでしょう。ミッキーをつぶそうなんて、考えたこともないんですから。ぼくも子どもたちもミッキーが好きですし。共存ですね。去年までの世界三大キャラクタ—を考えて見ると、3番目がなんであったのかについては、さまざまな意見があるでしょうが、1番目と2番目がミツキーとスヌーピーで

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そんなポケモンの長所と弱点とも言うべきポイントが「旅」なのです。ポケモンの根本に関わることなので、早急な結論は不要です。原著作者のみなさんが考えていくベき事でしょう。
②複雑な権利保持形態ポケモンは最初からビッグになることを想定して育てられてきたキャラクターではありません。発売直後から、ーつの団体が製作コストや全ての宣伝費を持って作られてきたわけではないのです。その意味ではハリウッドのメジャースタジオ製作のキャラクターとは一線を画します。いろんな会社や人間がその都度協カしあい、その八ーモニーの力で現在まできているのです。そんな成長の歴史は変えようがありません。
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あったことはまちがいない。そこにピカチュウが入ることができればいいなと、そう思っているんです」
しかし、ポケモンがディズニーを目指すと聞いたとき、両者の間にある大きな違いに同時に気づくことになります。ディズニーは、ディズニープロダクションというひとつの組織体がすべての源になっていますが、ポケモンのビジネスは、企業の複合体が、ビジネスを運営してきたのです。
これに対しては、二つの見方が可能でしょう。
一つは、そんな集合体で、よくここまで求心力を失わず、ポケモンを成功させることができたな、という驚嘆です。企業の複合体でありながら、ポケモンに関してはー糸乱れぬ体制で、まさに一枚岩として今日の成功を達成したのです。それはキャラク夕ービジネス史上、かってない偉業だったといえるでしょう。そしてもう一つの見方は、その二つの形態の、どちらがこれからのビジネスには有利なのだろうか?という比較です。ポケモンの寿命を延ばし、ミッキーマウスのように、ピカチュウの生誕30周年、40周年を祝うことができるようにするには、どちらが有利なシステムなのか、という課題を、ポケモンビジネスは抱えているのです。ポケモンが、世紀を越えて生き続けるためには、ポケモンビジネスのシステムも、変わらなければならないときを迎える日が来るのかもしれません。

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違った見方をすると、これまでは確かにそれで良かったかもしれません。いや、ポケモンの成功を振り返るとそれでなければならなかったのです。しかし世界展開が可能となった今とこれからを考えると、それではいけないかもしれないのです。今後は何をするにも大きなコストがかかってきます。情報伝達はインターネット時代では社外のスピードより社内の方が速くてはなりません。社外の流れより社内の意志決定が速くないと生きていけなくなるのです。企業間の距離が足かせになる可能性もあります。ポケモンのコングロマリットは大きな岐路に立っていると思います。解決方法はポケモンの中心に立っている人たちが考えるべき案件です。僕ではありませ
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第4章  ポケモンワールド

ポケモン時代の明日

「ゲームが出てから、自分自身の気持ちが少しずつ拡張していって、カードゲームとか、バンダイさんとやった周辺開発など、いろんなものに興味が出ました。そういうなかで、自分はいつまでポケモンをやるんだろうって思っていたところに、久保さんのアニメの話がきて、あれ、ちよつと違う方向にきたなっていうのがあったんですよ。それでやがて田尻君と相談して、ポケモンセンタ—というのを作ろうっていうことになったんですが、それは、商品の流れやアニメというものに対して、たとえばアニメが終わったらブームも終わるし、ブームが終わったらゲームソフトも売れなくなるしっていう危機感を感じたからですね。ですから店を作って、それが続いているし、未来永劫ありそうな感じがするっていうことが、ポケモンの長さっていうか、今後もずっとやっていきますよっていう決意や思いとなって表現できるんじゃないかなって思って、ポケモンセンタ—を作ったんです。
ポケモンは、原作者グループが、ポケモンもワン・オブ・ゼムだって考えたら、ー気にしぼんでしまうでしょう。ぼくたちがしぼむということは、遊んでいる人たちの気持ちもしぼむということなんですよ。しかしいま、ポケモンに対する考え方も繫が

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ん。
複雑に権利関係が絡んだからこそ、ポケモンの輪に入っている人が増え、結果としていろんな人が自分の事としてポケモン展開に参加し協力してきているのです。
そうでなければポケモンはここまで来ていないのです。ポケモンの未来は明るい!しかし、その実現は一筋縄でいく仕事ではありません。
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りも、強くなっているし、深まっていますね。これは付き合いが深くなりそうだなっていうのが、お互いの気持ちじゃないでしょうか。ポケモンの側も、われわれの側も」(石原)

2000年8月24日、任天堂は、幕張メッセで、翌日から始まる任天堂スペースワールド2000に先立ち、プレス向けに新製品発表会を開催しました。そこで、ゲームソフト『ポケットモンスタ—クリスタルバージョン』の発売が、2000年12月14日と、正式にアナウンスされました。ポケモンのシリーズ第7弾です。会場では、ゲームの内容については明らかにされませんでしたが、新しく設定された『モバイルシステムGB』というサービスを可能にする『モバイルアダプタGB』というアクセサリーも、2000年1月27日に発売されることが発表されました(利用するには登録料など別途料金が必要になります)。このシステムを使うと、ゲームボーイカラーを携帯電話やPHSに接続して、遠隔地にいるプレーヤー同士で対戦したり、交換したりすることができるようになります。発表会では、ゲームボーイの後継機、ゲームボーイアドバンスも展示されました。これまでのゲームボーイポケットや、ゲームボーイライト、ゲームボーイカラーをマイナーチェンジとすれば、ゲームボーイアドバンスは、フルモデルチェンジというこ

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ポケモンクリスタル
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第4章  ポケモンワールド

とになるでしょう。大きさはゲームボーイカラーとほぼ同じですが、持つ位置を横向きに変更し、モニタ—もTFTカラー液晶2•9インチに拡大しました。そしてこの機種にも、ゲームボーイの伝統である、ソフトの互換性が維持されていますポケモンクリスタルをはじめとする、ゲームボーイカラーに対応しているソフ卜は、ゲームボーイアドバンスでもプレーできるのです。おなじみの通信ケーブルはさらに進化して、ゲームボーイアドバンス専用通信ケーブルでは、最大4人までの通信プレーが可能になりました。発売予定日は、2001年3月21日です。しかし、この発表会の最大の目玉は、それまでドルフィンというコードネームで呼ばれていた新世代ゲーム機『ニンテンドーゲームキューブ』でした。任天堂が、満を持して出したN64の後継機です。この発表会に集まった、約2500人の報道関係者、取引先関係者の多くがこの新ゲーム機を目当てにやってきたのです。発表会の席上、任天堂の技術開発陣を率いる任天堂取締役総合開発本部の武田玄洋は、プレゼンテーションステージの壇上で、文字通り声を張り上げて宣言しました。ーニンテンドーゲームキューブは情報AVなのか、それともゲーム機なのか——?わたしたちの答えは明確です。ニンテンドーゲームキューブは、ゲームを遊ぶことに焦点を絞った『かってない最咼傑作のテレビゲーム機』です」ニンテンドーゲームキューブの特徴は、その高性能さよりも、むしろ、時代に逆行

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ゲー厶ボーイ・アドバンス
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するかのような印象さえ受ける、オリジナル8センチサイズのディスクメディアの採用にあると言えるでしょう。このディスクは松下電器産業の光ディスクテクノロジーを使用した、容量1・5GBのディスクです。直径8センチでフォ—マットも新開発のものですから、他のハードでは使用できませんし、既存のディスクをゲームキューブで使用することもできません。PS2とは違って、DVDプレーヤーにはならないのです。松下の8センチディスクを採用した理由を、任天堂広報課の皆川恭廣は、次のように話しています。
「なぜメディアで松下さんと組んだかといえば、コピープロテクションの技術のためだったんですよ。武田を中心としたグループが、あらゆるセキュリティシステムを検討した結果、松下さんが開発されたセキュリティーが最高であるという結論を出した。そのうえ、既存のDVDサイズではなく8センチというサイズを選んだことで、なおさらですね、コピーできなくなる。たとえコピープロテクトを破られたとしても、それをじやあ量産できるのかといえばできない。いまみたいに、CD-Rコピー機があればいくらでもコピーできちゃう状況では、たとえばプレイステーションのソフトなんか、いくらでもコピーされちやう可能性があるわけですよね。それがいま実際にヨーロッパのゲーム市場を崩壊させている原因にもなっているわけです。そういうことをトータルに考えた上での8センチCDなんです」

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ニンテンド—ゲー厶キューブ
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シドニーでのポケモンイベント
シドニーでの国際的なイベントとほぼ同時期に開催したインターナショナルイベン卜。ポケモンが世界中の子供達に人気があることを示すた
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また、取締役情報開発担当の宮本茂は、スペースワールド2000開催中に行われた共同インタビューのなかで、こう言っています。「コピープロテクトというのは、深刻な問題で、任天堂は独自のフォーマットで独自のものでやる。8センチにして、コピーされずにちやんと買ってもらえるソフトを作る。そういうことです」
『ニンテンドーゲームキューブ』の発売は、2001年7月の予定です。任天堂の山内はPS2発売前、あるインタビューの中で次のように語っていました。「任天堂は、他社製のハードはまったく気にしていない。目指しているものが違うのだ。そのような高性能ゲーム機でいつたいどのようなゲームソフトを遊ぶというのか」
ファミコン以来、一貫した考え方の表明ですが、それは、自社製ゲーム機の二ンテンドーゲームキューブにも、当然適用されることになるでしょう。2001年の発売に向けて、すでに専用ゲームソフトの開発は進められています。それらのゲームソフ卜がリリースされたとき、ニンテンドーゲームキューブの真価が評価されることになるでしょう。
ポケモンは、2000年になっても相変わらずの快進撃を続けています。2000

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め、国際的イベントで集まった各国のプレスやビジターを意識した作りになっています。このイベントを紹介するため、専用のホームページPokemon2000.comを7月に開始しました。日本で初めての8カ国語に対応したマルチリンガルサイトになっています。WEB上でのポケモンクリスマスカードの送信やポケモンクリスタルの予
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年6月現在の、ゲームソフトポケモンの累計販売本数は、シリーズ全体で国内4246万本、海外2189万本。カードゲームの累計販売枚数は、国内18億5000万枚、海外24億枚。ともに世界中で楽しまれています。アニメーションは、テレビ版は51力国で放送中ですし、映画『ミュウツーの逆襲/ピカチュウのなつやすみ』は33カ国で公開されました。これまでの北米地域にその他の地域をあわせた海外での興行収入の合計は1億7600万ドルです。ライセンス商品は、国内のライセンシー約70社、キヤラクタ—商品4000アイテム以上、市場規模7000億円。海外のライセンシー約500社、キャラクター商品8000アイテム以上。海外の市場規模は不明です。ポケモンは、いまも世界に広がっています。いまこの瞬間にも、アニメーションの第1話「ポケモンきみにきめた!」を初めて目にして、テレビ画面に釘づけになった子どもが、世界のどこかにきっといるはずです。あるいはポケモンのゲームソフトを初めて手にして、たった今、ゼニガメを最初のポケモンに選んだ子どももきっといるはずです。そんなポケモンの世界を作ってきた人々が、優しい眼差しをもった人々だつたことは、子どもたちばかりでなく、人類にとって、幸運なことだったでしょう。その眼差しがある限り、ポケモン時代には明日があるはずです。

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約販売、特別ビデオの予約販売などが可能です。期間限定サイトなのでご注意のほどを!
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シドニーオリンピック会場でのイマクニ?
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第4章  ポケモンワールド

♪ 宇宙の果てが暗闇ならば
白々明けてみせましょう
走れ! 輝け! 光って見せろ! (にや一んてな)

愛が正義か、正義が悪か
どんでん返しのからくり芝居
見てよ、我らが主役のドラマ
ポケモン時代は 明日がある
(『ロケット団よ永遠に』より) 
* 『ロケット団よ永遠に』歌:ムサシ、コジロウ、ニャース
作詞:首藤剛志
作曲・編曲:たなかひろかず

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