Magic of Pokemon/Celebrity Emergency Anket

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著名人緊急アンケー卜

子どもたちはみんな知ってる「ポケモン」だけど……
あなたは
ポケモンを知っていますか?

アンケート質問内容
Q1・「ポケモン」(「ポケットモンスター」)を知っていますか?
Q2・ゲー厶の「ポケモン」をやったことがありますか?
Q3・テレビアニメの「ポケモン」を見たことはありますか?
Q4・【Q2、Q3のいずれかで、やったり見たりしたことがある、とお答えいただいた方のみ】お好きなポケモンがあればそれは何か、教えてください。
Q5・昨年の暮れに起こった事件(テレビ東京のアニメ番組「ポケモン」を見ていた子どもたちが全国で倒れた事件)はご存知でしたか?
Q6・事件でもっとも問題になつたシーン(ピカチュウが占点滅し、発光する)はご覧になりましたか?
Q7・今回の事件についてどう思われますか?ご感想などを自由こ。

小沢遼子 (社会評論家)
① 知っている。② ない。③ ほんの少し。⑤ 知っている。⑥ 題になったあとで見た。
⑦ 子どもは好きなアニメにはとかく熱中する。ひとりまたは少人数で見ている場合は熱中して傍から話しかけてもまったく反応しないほどのめりこむことがしばしばある。これほど集中しているときに非常に刺激のあるシーンを見せれば今回のような事件に発展することは理解できる。どの程度刺激してよいものか、とくに色彩、光、音響については専門家の手もかりて、程度というものを考えるべきだと思う。

西部邁 (評論家)
① NO。② NO。③ NO。⑤ NO。⑥ NO。
⑦ ボケモノたちの日本に何が起こっても不思議ではない。(本来大騒ぎすべき問題ではないと考えているので、アンケートも自分は答えるべきではないと思うが、あえて答えれば先のとおり。無回答に数えていただいても、先の回答を使っていただいてもかまわない。——とのコメントあり)

呉智英 (評論家)
① 知っている。② ない。③ テレビは持っていない。⑤ 知っている。⑥ テレビがないので見ていない。⑦ これを利用すれば新種の兵器ができると思った。

宮台真司 (社会学者)
① YES。② YES。③ YES。④ ミュー、ピカチュウ、ピッヒ。⑤ YES。⑥ YES。
⑦TV業界の反応は不合理である。第一にポケモンだけを放映自粛し、他のアニメを中止しないのはおかしい。第二に、「パカパカ」という問題手法だけを自粛すれば

103 PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

いいのに、放映自体を自粛するのはおかしい。第三に、自粛しないと「世間」が納得しないなどという馬鹿馬鹿しい論理はやめてほしい。そのような「世間」は妄想の中にしか存在しないし、万が一現実に存在するなら合理的な根拠をもって説得すればいいだけだ。

夏目房之介 (マンガ・コラムニスト)

① 報道の一部で。② いいえ。③ いいえ。⑤ 報道の一部で。⑥ いいえ。
⑦ 一番の核は、この現象についての(殊に映像と脳神経系の相関領域における)科学的な、徹底的な解明のように思えます。ただ、長く地味な(マスコミ的でない)時間が必要です。むろん、現在までの研究成果による仮説の限りで、当分の間、TV放映アニメに暫定的規制を設けることは可能でしょうし、あるいは必要かもしれない。一時的で扇情的、かつヒステリックな反応は問題を歪めそうに思えます。

水木しげる (漫画家)
① 知っています。② ない。③ ある。④ ない。⑤ 知っています。⑥ 見ていません。
⑦ 別にありません。

岸田秀 (和光大学教授)
① 知りません。② ありません。③ ありません。⑤ 知っていました。⑥ 見ませんでした。
⑦ たいして関心ありません。

内海桂子 (漫才師)
① 事件が起きるまでは知りませんでした。② ありません。③ 番組としては、ありません。⑤ 知っています。⑥ ニュースでは見ました。
⑦ 画像、音響、内容すべてにおいて、もちろん、それらの個々においても、過剰な刺激を与えすぎる傾向が強いと思います。子どもはその成長に合わせた文化情報が入っていくべきなのに、今の大人にはその判断がなさすぎます。

山崎哲 (劇作家)
① 知っています。② ありません。③ あります。④ 別にナシです。⑤ 知っています。⑥ いいえ。
⑦ 制作側がある程度刺激的なシーンを作ろうとすることは仕方がないと思います。ただ限度はあると思いますが、未知の部分が含まれているため、どこに限界線を引くか、大変むずかしいだろうと想像します。今回の刺激は資料として制作側は大事にするべきでしょう。

小田晋 (国際医療福祉大学教授・精神科医)
① はい。② いいえ。③ はい。④ ございません。⑤ はい。⑥ はい(後になってですが)。
⑦ テレビ・ビデオの視聴中に起こる痙攣・意識喪失の発作については以前から報道されていましたし、英国では痙攣の際の嘔吐物の誤嚥による死亡例もあるくらいです。しかし、今回のポケモン事件に関しては、単に光起原性てんかんでは片付かない要素を含んでいます。つまり少なくとも次の三要因は複合していると考えられます。

(1) 光起原性てんかん要因の他に、リズミカルな音刺激も異常脳波を誘発しますので、それによつて発作が誘発されたのは確かであると思われます。
(2) まるで集団ヒステリーのように同時多発的にバタバタ倒れ、しかも、大半は個別に視聴していたわけですから相互感應機制は考えられません。考えられるのはその時点で画面に写っていた「大きな眼玉」の影響です。つまり、(1) の影響と並んで「眼を見っめる」ことによって催眠効果を生じたのではないかと考えられます。
(3) 更に視聴者は、この場面の前後、ヴァーチャル・リアリティ的に、回転、動揺、逆転、旋回の感覚を味わわせられるようにできています。つまり物語とその画面に同一化している場合、まるでジエット・コースターのシミュレーションのような内耳性の平衡感覚異常とそれに基づく眩暈感を惹起したのではないかと考えられます。この場合の動揺と加速度は、ジエツト・コースターの場合よりも多軸的で不安定なもので、更に物語がもたらす感情的興奮がこれに加わっています。

つまり(1) 脳波的・神経生理学的要因、(2) 催眠的・心理学的要因、(3) 三半規管・内耳機能的要因の三者が相乗した結果と考えなければ、視聴中の子どもが数百人、全国で同時に卒倒するという結果が起きることは考えられないでしょう。
もちろん、私たち精神科医は患者さんの脳波を記録するとき、ごく慣例的に、(ア)光刺激、(イ)音刺激、(ウ)深呼吸(血液の02分圧を上げるため)の三つの方法を用いて、異常脳波を賦活しますから、今回は全国規模で壮大な脳波賦活が行われたわけです。しかしながら、厚生省の研究班には神経生理学者が多いようですから、上記(1)の側面にのみ注目するのではなく(2)(3)の各側面についても調査し、分析統合、評価するのでないと、「この画面からでは多少の賦活は現れるがそれほどの異常脳波の賦活効果はみられない。それについては今後の検討を待ちたい」といった何のことやらわからないが何の役にも立たない結果に終わってしまいそうです。
五年位前、通産省の「感性ビジネス研究会」(河合隼雄会長)では、情報産業テクノロジーが人間心性にもたらす作用の明暗両面を研究報告して、その中で、テレビ、ビデオ、テレビゲーム、パソコンゲームによるてんかん発作の問題を取り上げています。しかし、その当時もその後もゲーム産業の経営者は、その問題についてはなるたけ触れたくない、という様子が見えました。新しい産業とテクノロジーが人間性にもたらす影響について、研究、予測、ガイドライン設定——というようなことはいずれも必須で、緊急のことのように思われます。あのオウム真理教のマインドコントロール体系の中にも、「ポケモン」と共通性を有するヴァーチャルリアリティ技術は、やはりたっぷり取り入れられていたことも注意しておく必要があるでしょう。

竹田青嗣 (哲学•文芸評論家)
① 知らない。② いいえ。③ いい、え。⑤ はい。⑥ いいえ。
⑦ ほんものの超常現象だったらおもしろかったんだけど。このアンケート、お断りしょうかといったん思って、回答したほうが手間がないかと思い直しました。失礼。以上感想です。

やなせたかし (漫画家)
① 知っている。② ない。③ ない。⑤ 知っている。⑥ 見ていないがパカパカの手法は知っている。
⑦ マスメディアにたづさわる仕事をしている人間は、ぼくをも含めて細心の注意をはらわないと予測しない事件がおきる。今回はたまたま意識不明になるということで表面化したが、眼に見えない部分で、社会に害毒を流していることは他にも多数あるはずで、自戒と恐怖の念におそわれた。

久野収 (評論家)
① 〇。② X。③ X。⑤ 〇。⑥ 义。
⑦ 見る方に直接反射を条件づける働きかけ様式が極端化した放映ジャンルとしてカウンターバランスを必要とするのではないか。

根本敬 (東京外国幸準大尖宇助教授)
① 知っています。② ありません。③ ありません。⑤ 知っていました。⑥ 見ていません。
⑦ 狭い部屋に三〇インチ以上の大型画面のテレビを置いて、そのすぐ近くで子どもたちに見させる日本の貧しい住宅環境を改めて思い知らされました。家の構造としてもっと広いLD(LDK)が普及してしかるべきだし、他に選択肢がなく部屋が狭いのなら、二〇インチ程度のテレビを置くようにすべきでしょう。このことが守られていたら、今回の事件は起きなかったと思います。日本の(とくに都市部の)住居は本当に狭すぎます。

橋爪大三郎 (社会学者)
① 知っています。② ありません。③ ありません。⑤ 知っています。⑥ ニュースで見ました。また録画の再生を職場(大学)で皆と見ました。
⑦ アニメとオリジナルのゲーム、またポケモンブームは別々のこと

105  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

なので、大騒ぎすることはない。ただし、TVの画像規制は早く取り組むべき。

岩佐陽ー (『まんが秘法』編集長)
① 知ってます。② ありません。③ あります。④ ピカチュウ、ゾネンゲ、ガルゴン、モグラス、ドネルバetc. ⑤ 知ってます。⑥ 観ました。
⑦ フザけんな、バカ!って感じです。実際に問題のシーンを観てみたんですが、〃大人なら大丈夫〃とかじやなくて、子どもでも〃昔の子どもなら大丈夫〃だったんじやないかと思います。医者じゃないんで詳しいことはわかりませんが、たしかに夢中で入り込んで観てたらそれもあるかな?って気もしますが、野山を駆け回ってトンボやカブト虫捕まえたりしてた昔の子どもなら大丈夫だったんじやないスか?今の子どもは弱すぎます。精神的にも肉体的にも。カツときたらすぐ大、刺すし、『闘拳カラテダー』でも読ませて鍛え直すべき。あと、ムカついたのがマスコミの報道の仕方。「自分たちより大気のあるもの、カのあるものの弱みにつけこんで引きずり下ろしてやろう」っていう、日本のマスコミ独特の〃ひがみ根性〃がモ口に出た報道ぶりでしたな。「制作予算をケチったからああなったのでは……!?」って、『グロイザーX』(一九七六年)の昔から予算なんて全然ね〜んだよ!そんな中でガンバッてる現場のアニメータ—たちが聞いたら怒るでホンマ!!

オバタカズユキ (作家)
① YES。② N0。③ 1回のみ。④ ピカチュウかわいい。⑤ YES。⑥ NO。
⑦ 私の子ども時代、TVは「三メートル離れてみるもの」でした。「目が悪くなるもの」であり、「見てばかりいるとバカになるもの」でもありました。主に母親が口うるさかったわけですが、このごろは、「三メートル」が「一メートル」に、ネガティブなイメージがほとんどゼロになっているようです。そりやそうですよね。だって、「TVだけ見ていればいいのなら、どんなにかすばらしい大生だろう」と、母親の注意がうざったかった子どもたちが今の母親なんだから。ましてや、TVの制作者の中核も(コロコロコミックやゲームの制作も)そういう年齢層なんだから。その他、主婦の問題、メディア技術の問題(ソフトもハードも)、子どもとビジネスの問題など、いろいろ気になることはあります。

石井苗子 (TVキャスター)
① はい。② はい。③ はい。④ それほどの興味はありません。⑤ 知っています。でVTRで。
⑦ ニュース等であまり大騒ぎすることは不親切であると感じました。関係者が専門的な知識の向上を必要とすればよいことです。

小田嶋隆 (テクニカルライター、コラムニスト)
① はい。② はい。③ はい。④ ピカチュウ。⑤ はい。⑥ はい。
⑦ 事件そのものは生理学的な問題(光過敏性発作)に過ぎないし、偶発的な事故だと思う。再発を防止しなければならないことは当然だが、この事件を教育論やメディア論や現代文明論の問題にフレームアツプして語る大々が多いのには閉口する。

ドリアン助川 (バンドマン)
① YES。② N0。③ YES。④ ミニリュウ(しかし、あんたたち、大人相手にこの質問はないんじやないの)。⑤ YES。⑥ NO。
⑦ 子どもたちが大人になった時、飲み屋で盛り上がるネタができてよかった。ピカチュウ失神芸とか……。

いとうせいこう (作家)
① YES。② YES。③ YES。④ とくになし。⑤ YES。⑥ YES。
⑦ テレビに限らず、メディアの端末の大半はモニタ—になっている。いや、メディアばかりではなく、機械と大間のインターフェイスはほぼ必ずモニターなのだ。っまり明滅する光と視覚が生活の基本なのである。その文化の形態のネガティブな部分があらわれたのが今回の事件なのであって、単に

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テレビを責めても事の本質には至らないと思う。

大槻ケンヂ(ミュージシャン)
① はい。② いいえ。③ いいえ。⑤ はい。⑥ いいえ。
⑦「光過敏性の発作」などというものは、サブリミナル効果が実はなんの効果もないものと同様に、一種の都市伝説みたいなものとばかり思っていました。さらに「ゲームで引き起こされる」というのも、外国企業が任天堂バッシングのためにつくったインチキ情報だとばかり思っていました。本当に起こってビツクリしましたよ。反キリスト者だったサウロはダマスカスへ行く途中、光にうたれ、倒れ、目覚めるとキリスト信者に回心していて、後には十二人の使徒パウロとなりました。ポケモンで倒れた少年少女のなかから、アニメで言う「ニュータイプ」が現われたら、話としてはおもしろいんですが、さてどうでしょうねえ?

西川らゆうじん(マーケティングコンサルタント)
① 知っている。② ある。③ ある。④ ピカチュウ。⑤ はい。⑥ はい。
⑦ 日本のアニメーションは日本のみならず世界の宝である。人間の脳にはまだまだ未知の部分も多い。光に対する脳の反応についての研究はまだ尾に付いたばかりだ。デジタル映像技術の発展途上において当然起こるべくして起こった事件。被害にあわれた方々にはお見舞い申し上げたいが、この事件によって映像技術の開発や実験が規制されたり、発表の場がせばめられたり、スピードがスローダウンしたり、アニメという日本が世界に誇りうる数少ない現代文化であり、貴重な財産が否定されることは避けなければならない。

串間努(出版社経営)
① 知っている。② やったことはない。③ 一度もない。⑤ 知っている。⑥ 見たことはない。
⑦ 知人や知人の子どもで例のシーンを見た人は多くいる。その人たちに聞いてみても、とくに症状はなかったという。なぜ人によって差があるのかわからないので、その差異には興味がある。高度成長時代から現代にかけて、子どもたちの体質はだいぶかわってきている。たとえば、昭和五十年代くらいまでは、バス旅行の際に「乗り物酔い」になる子どもが多かったが、自家用車が普及するにつれて酔う子が少なくなった。ヨソへおでかけした際も、発熱したりゲロを吐く子が多かった。だから必ずしも「現代の子どもの体がへンだ」とは言えない。

唐沢俊一(作家)
① 知っています。② ありません(基本的にゲームはしません)。③ あります。にありません。⑤ 知ってます。⑥ その翌日家にみんな集つてビデオ上映会をしました(笑)。
⑦ サブリミナルという言葉が実際の効果と無関係に言葉だけが一人歩きしているのと同じく、今回も光過敏症という言葉だけが、勝手にそのイメージを増大させて、卜ンデモな説をいろいろ生み出す根源になっています。すでに同様の事件がNHKのアニメ番組で(規模こそ違え)起きているにもかかわらず、今回マスコミが大騒ぎしたのは、ただの交通事故であっても人気スタ—が起こした事件にはマスコミがわっと群がるのと同じ、嫉妬の感情のあらわれでしょう。
実際には光過敏症は身の回りの人の中にもときおり観察できる病気で、特殊なものではありませんし、また子供のころのそれは成人する過程で自然治癒してしまうことも多いそうです。過激で不十分な報道でその被害者の家庭があらぬ差別を受ける危険性を思えば、あのような報道はできなかった筈なのです。日本のマスコミの騒ぎ方は未成熟としかいいようがありません。
まったく関係ないことですが、清涼院流水の『コズミック』というトンデモ・ミステリーに、あまりの美貌のため、見つめられると人が気絶してしまう美少年探偵が登場しますが、彼がテレビに出て会釈しただけで十六万人の失神者が出ます。それを思い出してしまった。

107  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

吉田司 (ノンフィクションライター)
① YES。② N0。③ NO。⑤ YES。⑥ NO。
⑦ マクルーハンの古典『メディア論』は、エレクトロニクス時代の幕開けをこう綴っている。「テレビの場合……、視聴者は光の刺激の砲火を浴びる。ジェイムズ・ジヨイスはこのことを『魂の皮膚に泣きたくなるような無意識の暗示』をしみこませる『光旅団の攻撃』と呼んだ」
〈一家に一台〉のお茶の間テレビ情報(゠映像と音響)によって人間が動かされる電子時代が到来したことに対する驚きと不安、恐れが素直に吐露されている。
今回のポケモン騒動(「フライデー」報道では「光過敏性てんかん」)は、このジェイムズ・ジョイスの言葉を憶い出させた——時もまさに、インターネツトのコンピュータ世界とテレビが合体し、新たなエレクトロニクス゠電脳情報世界が幕を開けようかという時代だ。子供のみならず、私たちみんなの中に、新しい映像情報時代へ同化しようと急ぐ部分と不安だけ拒絶したい本能が同居し、ぶっかり合う。〈熱中〉と〈拒絶〉……今まではコンピュータが切り開く新時代へのファンタスティツクな憧れ(゠熱中)が語られてきたが、インタ1ネットなどの仮想現実゠バーチャルリアリティの世界が日常化するにつれて、その仮想性と不安(拒否現象)も現われてくるだろう。今回の子供たちの〈てんかん〉様の発作は、頭脳は映像の仮想現実の中に過剰に入り込もうとするのに、身体がついてゆかない、拒否するという、新しい電子情報時代の到来に対する〈入り口現象〉〈幕明け現象〉ではあるまいか。数年後、過激なコンピュータ・グラフィックス様のア二メ現象に慣れてしまった子供たちに、今回と同じ〈光の攻撃〉を加えたら、効くかどうか(「てんかん」現象を起こすかどうか)、わからないと思う。
「たまごっち」だって、あれは小さな画面、粗雑な映像だから〈ゲーム〉として成り立っているんであって、あの画面が映画館のように巨大化して人間を取り囲む構造になったら、それは〈ゲーム〉ではなく、私たちを取り囲む〈現実〉に変わってしまうだろう。電子映像が私たちのまわりに簡単に〈仮想現実〉の世界を作り出し、私たちはその仮想性の中で思考したり、泣き笑いする——そういう〈魔術的映像の時代〉はもうすぐそこまで来ているのだ。

千葉麗子 (チェリーベイブ代表)
① はい。② はい。③ はい。④ ピカチュウ。⑤ 知っている。⑥ 見ました。
⑦ アニメそのものにたいしては過剰反応しすぎだとおもいます。アニメとゲームを混同しているのもおかしいと感じました。この事件に関するゲームメーカー側のコメントもかなりいただけない感じがしましたけど。今回の事件はシンクロニシティという言葉で片付けられるような気もするのですが、発生源が分かっているので、もしかしたらそれも違うのかなと思います。
今回の事件で一番の被害者は気持ち悪くならなかった子供たちでしょうか?続きを楽しみにしていたのにそれを奪われてしまったわけですから。せめて問題の回までの再放送という形をとったほうがよかったのではないでしょうか。問題になってない回まで放送を自粛してしまうのはなにか変な感じがしました。

フレデリック・シヨツ卜      Frederik L. Schodt
(ノン・フィクション作家・翻訳者)
① はい、よく知っています。② ないです。主義でゲームをやりません。というよりも、時間がないです。③ ないです。テレビもなるベく見ないようにしています。⑤ はい、大変よく知っています。⑥ テレビのニュースでチラッと見た程度です。
⑦ これは私にとって、とても、とてもショツキングな事件でした。まだ心の中で完全に処理していないところもあります。テレビが見られるようになってから、既に五十年以上の歳月が経っていますし、アニメは九十年位の歴史があ

ります。なのに、ポケモンのような事件は今まで殆ど聞いたことがないです(少なくともこれほど大きなスケールで)。ということは、人類はこれではじめて普通のテレビ放映を使って、多くの人々に具体的な害を与える方法を初めて(しかも全く偶然に)発見したことになるわけですね。例えばどこかの独裁者とか、悪意を持つ人間が、今後多くの人々に対して生理的な危害を加えようとすると、その最もロー・コストな方法論はこれで提供されている、というようなことになるのではないか、と考えたりします。
私自身は十八歳の時、バイク事故で頭を打った後、突然の発作を経験したことがあります。その時、医者に「てんかん患者」だと誤診されたこともあります。それ以降、何も問題は起きなかったのですが、時々チカチカする光を見たりするとやはり気持ち悪くなったりしました。思えば、私も光過敏性かもしれないので、「ポケットモンスター」の問題のエピソードを見なくって、本当によかったです。

藤井良樹(ルポライター)
① 名前程度。②コンピュータゲーム自体、やったことないので、ポケモンもありません。③ない。⑤はい。⑥観ていません。⑦事件、特に「若い世代」に関する〈事件〉が起きると、その事件の原因・要因・意味に対して、様々な分析や解説が行なわれてきた。私自身、そういうことをやつている。ただ、ルポライターの自分に対して自分自身が一番要求することは、〈事件〉の渦中に自らの身を置き、その事件の直接の影響下で自分はどう振る舞えたりえたのか、それを基準に物事を考えたいということである。しかし、それが無理ならば(多くの場合は難しいだろう)、せめて、その事件の直接の影響下にある人たち、それも、一番抜き差しならないところにいる人々の立場・視点に依拠して、〈事件〉を見たいと思っている。
そういう見方をした場合、事件の原因や要因に対して導き出される答えは、「よくわからない」であろう。今回のケースで言えば、「なぜ、テレビを観ただけで、大量の子供がああなったのか、よくわかない」ということ。無論、「よくわらない」からこそ、調査し、分析する。倒れた子供たちが運ばれた病院の医者は、それをやらないと患者としての子供に対応できない。
しかし、言論の場ではしばしば……というか、私自身が直接に関わった渦中で思うのは、九五年のオウム真理教事件以降、まるで、「運び込まれた患者を治すためではなく、その患者より自分(自分の支持する世界や思想や理論)が上であるということを確認するためだけの分析や論説」が、あまりに氾濫しすぎているということである。だからこそ、「よく、わからない」という、事件の当事者がたぶん、一番多く発するであろう言葉の意味を、我々のような立場の人間は、もつともっと考えなくてはいけない。
それこそが、我々のような立場——こうして新聞などにコメン卜する立場や、報道する側に身を置いていることなど——我々、少なくとも、私自身には一番求めたい。
そして、特に今回のような事件に関して私が発言できることは、こうだ。
《なぜ起きたのかわからない——ということから、安易に逃げないようにしたい。よくわからないことが存在することこそを、理解しなければならない》現在、多発している、少年を巡る事件に関しても、そう思う。もちろん、〈事件〉をできうる限り解明しようという気持ちと、可能な限り実際行動を大前提として。

清水ミチコ(タレント)
① はい。I KNEW. ② いいえ。③ YESオフコースホワイIハバチャイルド。④ メタモン。顔書けるし。⑤ 知人から心配の電話がじやんじやん鳴って知りました。「ウチは鈍感なのかしら、平気だったけど」と返事をしたんですが、コドモは「今日のは何だか目

109  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

が疲れたなあ」とは言ってました。⑥ワンス。
⑦もしかしたら点滅の強度よりも集中しきってたゆえに点滅にあせって脳がついて行けなかった、というものじやないでしょうか。熱中している状態はあんがい身体そのものを置いてけぼりにしがちなんですよね。

赤井孝美(ゲームデザイナー、イラストレーター)
①知っています。②ありません。不勉強ですね。スタッフの中にはハマっている者もおりますが。③一回だけあります。じております。⑥そこだけ見ました。
⑦幼児向け番組を作る上で、担当演出氏が知識不足だったのが原因だと思います。またTV受像機の大型化、高彩度・高輝度化にも原因の一端があると思われます。

朝倉喬司(ノンフィクシ3ンライター)
①知っています。②ありません。③あります。④とくにありません。⑤知っていました。⑥見ておりません。
⑦受け手の人格ではなく、「心理」や「神経」を標的にした映像やイメージがあふれかえる状態はいまに始まったことではないが、事件は、その傾向がかなり煮つまったことを示しているように思う。以前私は取材で、幼少時のアニメ体験が〃この道〃に入るきっかけだったと自ら語ったホモセクシュアルの青年に出会ったことがあるが、今回、ポケモンにあらわれた「危険」は、映像の「神経」への作用が開発した快感の密度が、それだけ濃かったことの裏返しというか端的なあらわれというか、とにかくそうした性質のものなのだろう。

柳下毅一郎(特殊翻訳家)
①はい。②ありません。③はい。④特になし。⑤はい。⑥はい(ビデオで)。
⑦事件自体は起こりうることだったので、制作者が不注意だったとしか言えない。目を向けるべきなのは犠牲者の多さ゠視聴率の高さだろう。一五%の視聴率、というのはつまりある世代の子供は全員見ているという意味である。そんなに優秀なアニメのクリエータ—にしては自分たちの影響力に無自覚すぎた。だからこんな事件を起こしてしまったのだ。クリエータ—たちにはもっとプライドをもつて欲しい。今や子供を動かしているのはアニメとゲームなのだから。そのくらいの自信があれば、子供が何人か倒れたくらいであんなにアタフタせずにすんだはずだ。

高市早苗(衆議院議員)
①知っている。②やったことがない。③事件前にはない(事件後に資料として一度だけ)。⑤知っている。料としてビデオを観た。
⑦昨年の事件を機に厚生省では「光感受性発作に関する臨床研究班」が、郵政省でも「放送と視聴覚機能に関する検討会」が発足したので、今後は専門家の研究の成果を待って、一日も早く法的整備にかかるべきである。
後手後手になっているのは残念だが、再発しないよう改善するしかない。特に英国のITCガイダンス及び違反者への罰則等は学ぶべき点が多い。それでもなお、「ITCコードで措置されていない注意すべき映像」の存在が認められており、この部分の研究も大切な課題だと思う。

中野不二男(ノンフィクション作家)
①知っている。②ゲームはしたことがない。③テレビアニメ「ポケモン」は、断片的には見たことがある。④ほとんど知らない。⑤「ポケモン」を見ていた子供たちが倒れた事件は知っている。⑥問題のシーンは、見ていない。テレビニュースで一部を見たのみ。
⑦長男(小学校二年)の学校でも、ポケモンは大人気らしく、クラスではウチの子をのぞくほぼ全員がゲームボーイをもっていた。私は、ファミコンはもちろん、ゲ—ムボーイも買い与えなかったが、その結果、長男は仲間のなかで孤立しかけていた。わが家は郊外のニュータウンにあり、大きな公園や広々とした河原などもあって環境も比較的めぐまれていると思う。あるとき長男が五、六人の

仲間と野球をすることになり、公園の広場へ出かけていった。夕方になって帰ってきたときに聞いたら、みんなグローブやバツトをもって集りながらも、それぞれがゲームボーイでポケモンをはじめてしまい、長男はただ、それが終わるのを一人でまっていたとのことだった。ポケモン・ブームは、子供たちが自分で遊びを見つけだすことのできなくなった時代の象徴だと思う。塾や習い事をのぞけば家の中で過ごす時間が多くなり、結果的にテレビにむかい、それを親が容認してしまうからだと思う。
どんなにいい環境にいても、子供が積極的に外で遊ぶようなきっかけを、まずは親がっくらなければならない。しかし現代の親は、それとは反対の空気を作り出している。
私は、玩具や模型に関心があるので、その種の店によく足を運ぶ。そうした店内で見かけるのは、ほとんどが子供と祖父母か、子供と母親である。そして祖父母は、子供にねだられるまま、キャラクターグツ、スやゲームソフトを買い与える。玩具店には、外遊びに適した用具や、子供が自然観察に興味をもつように工夫された、なかなか面白いオモチャも多い。しかしそうしたオモチャなどはほとんどさっぱり売れないらしく、半額以下の値札がっけられたうえに、店の隅っこに追いやられている。子供の目にふれるところにあるのは、テレビアニメとタイアップした高価なオモチャばかりである。祖父母はもちろん、オモチャの構造や原理などを知らない母親も、結局はそうしたものを買い与えてしまう。
ポケモン・ブームは、こうした背景に目をつけたゲーム・メーカーが、ここぞとばかりにつくりあげた戦略だったと思う。もちろん、祖父母や母親だけの責任ではない。子供の遊びやオモチャに、父親がまったく関与しないことが最大の問題だろう。父親は、少年時代にはもっと外で遊んでいたはずである。そういう遊びを教えたり、楽しいオモチャを子供と一緒にさがしてあげたりすることが必要だと思う。
あるていどのきっかけさえ与えてやれば、子供たちは自分からいろんな遊びを考え出すはずです。今の社会には、そういうきっかけを与えてあげることのできない親があまりに多い。子供の感性がもっとも豊かな時期に、父親は仕事がいそがしくて帰りがおそい。母親は、教育には熱心で〃遊び〃については誤解が多い。自然観察や、面白いアイデアのつまったオモチャなども、子供には大きな教育となることを理解していない。自分の知的レベルだけで判断している。
こうしたことから、子供の周辺からは〃興味のきっかけ〃がどんどん失われ、画一的な環境だけが残ってしまう。ゲーム・メーカーにとっては、実に把握しやすいパ夕—ンができあがっており、どういうコマセをまけば、どれだけの稚魚を集められるかがわかるほどになっていると思う。
ウチでは、ファミコンもゲームボーイも与えなかったが、子供専用にパソコンを買ってあげた。もちろん、ゲーム・ソフトも。ファミコンとおなじではないかと思われるが、まったくちがう。たとえ最初のころはゲームばかりやっていても、やがてパソコンはいろんなことができることに、子供は気づく。そしてワープロで文書を書いたり、自然科学の絵本を見たりと、視野をひろげてゆく。「ゲームだけがすべてではない」ことに、子供が自ら気づく。
テレビのスイツチを消しても、楽しい遊びはいくらでもある。ポケモンを見なくても、仲間とできる遊びはいくらである。雨や雪が降って公園へゆけなくても、家のなかで楽しめることはいくらでもある。そういう環境を子供が自分で見つけ、広げてゆくきっかけを、親はっくってやらなくてはならない。私はそう思います。それにしても、遊び好きの大人が少ないと思います。大人が、大人なりの楽しい遊びをもっていないような家庭では、子供だって遊びの楽しさ、身の周りにある遊びの豊富さには気づかないでしょう。

111  PART-1▶「ポケモン事件」とメディア

長くなりましたが、以上が私の考えです。

赤木かん子(児童文学評論家、本の探偵)
①もちろん。②ない。③ある。④やっぱピカチュウ。⑤もちろん。⑥みてない。
⑦サブリミナル効果が禁止されてるように、光による影響は研究されてるんだから、アニメータ—がミスをしただけなんじやないの?これで子どもの好きなものがまた弾圧されるスキを作つちやったわけで、あ〜あと思うけど、大人もそこまでバカじやないとは思ってるからあまり心配はしてません。

村崎百郎(工員兼電波系鬼畜ライター)
①イメージだけは知ってる。②ねえよ。③例の事件のやつは観たぞ(ビデオで)。④「アイドル」同様、客にコビた可愛いさを持っているキャラはみんなFuck offだ!!⑤発生時にニュースで見ていた。刻々と被害者が増えていく様子が面白かったが、いまイチ盛り上がりには欠けたねえ。⑥あとで人からビデオを借りて観た。俺が日常的に体験している〃電波〃や幻視にくらべりやど一ってことない。
⑦ガキどもが昔と比べてひ弱になっているような気がする。こんなことでは次の戦争で勝てるのか非常に不安である。そして、ど一せまた、この事件をネタに『ムー』誌上で鬼塚のバカが「テレ東がメーソンと組んでやった実験だ!」とか「これはフリーメーソンの陰謀だ!」とかヨタ記事書いてワメくんだろう。そのうち道で会ったら奥歯が全部折れるまでブン殴つてやるから待っとけよ(顔しらねーけどな)。

山田まりや(お茶の間タレント)
①うん。②なつしんぐ。③ある。④ぴかちゆ一、みゆ一。⑤うん。⑥おとうと(七歳)はへ一きだった。
⑦うちの弟は、私が「ひろちゃんが2いたいするのいやだから見ちやイヤだナ」っていったら、ないちやいました。子供にとっては、地球のヒーローウルトラマンがしんぢやうぐらいショッキングなことだったと思いマス。ヒーローものや、アニメは子供にとって、ー番の教育番組でなくてはならないのに、あたりまえのことを、ミスッたのは大人なんです。

石子順(評論家)
①知ってます。②やったことはない。③見たことはある。④ポケチユウ。⑤知っている。私の知人の子どもも気絶した状態になったと知らせてくれた。⑥見ていない。⑦可愛らしいキャラクターで物語がおもしろいのに、どうしてああまで刺激的な効果をつっこむのか疑問です。子どものためのアニメを作っているという意識が乏しいからより刺激的にという方向に走るのではないか。TVアニメの根本がかかわる課題が露呈したといえる。これは警告です。

飯田和敏(ゲーム作家)
①はい。②あります。③はい。④ピカチュウ。⑤はい。⑥見ました。
⑦まず、今回の事件は映像が引き起こした事故として「ポケモン」とは切り離して考えるべきだろう。事件後のヒステリツクな報道は、表現に携わる者として、怖さを感じた。
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掲載の順番は、早期に編集部にアンケートを返送してくださった方からとさせていただきました。アンケートにご協力くださった皆さん、ありがとうございました。
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「アンケートには答えられない」という返事をくださった方々
〈五十音順〉
浅田彰、家田荘子、石原壮一郎、井上ひさし、猪瀬直樹、江川達也、岡田斗司夫、加藤紀子、栗本慎一郎、小浜逸郎、小林信彦、小林弘人、小林よしのり、櫻井よしこ、柴門ふみ、坂本龍一、田原総一朗、辻仁成、中沢新一、中村とうよう、中森明夫、畑恵、兵藤ゆき、柳美里

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