A Man Who Created Pokemon/p84

From Poké Sources
A Man Who Created Pokemon p84.jpg
 
Warning: the text below has not yet been proofread!
The text below has not yet been translated.
Page 84, scan, edit, history
COLUMN 02 - ごく短いサブカルチャー論

田尻智へのインタビューを彼の著書「パツクランドでっかまえて」に対する感想から始めたのは、今思えば、そこで書かれていた風景に対して、どうしょうもない違和感を感じていたからだった。『スペースインベーダー』『ディグダグ』『ギャラクシアン』……。確かに〃ゲーセンのゲー厶が光り輝いていた時代〃が,80年代の前半にはあり、そしてそれはまた日本のサブカルチャーが一種のベルエポックを迎えた時代でもあった。田尻智の個人史を振り返るとき、〃あの時代〃が持ち得ていたインパクトと可能性を踏まえなきやいけない。その想いが、インタビュー冒頭の(ぎこちない)やり取りの背後にはあった。では〃あの時代〃とは、どんな時代だったのだろう。松田聖子が華々しくブラウン管に登場し、小泉今日子や中森明菜があとに続けとばかりにデビュー。田中康夫「なんとなくクリスタル」が賛否両論を巻き起こし、浅田彰「構造とカ」がニューアカブー厶の呼び水となり、ジョン・レノンが射殺、劇場版「機動戦士ガンダム」が公開され、イラン・イラク戦争が勃発した。たった30年前には焼け野原だった極東の小国が名実ともに経済大国へと成長し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」な雰囲気に満ちた時代、ともいえる。この風景をどう分析するかは、人によって様々だろうが、その特徴としてひとつ挙げられるのは、以前の文化——団塊の世代からの切断と、奇妙なほどの〃政治性〃の薄さ(ノンポり!)だろう。「重厚長大から軽薄短小へ」。そして、それは時代の〃前衛〃としての諸文化゠〃サブカルチャー〃が、大きな資本とともに時代の前面にせり出し始めた時代でもあった。
ここでもう一度〃サブカルチヤー〃とは何か、を確認しておこう。サブカルチャーとは、その社会の主流文化から外れてしまった文化、下位にある文化を指す。だからそれはいつの時代も、辺境であり、見過ごされたモノたちへのどうしょうもない執着である。常に、大衆の興味の外からやって来て、その時代の文化エリート(!)たちを魅了し、彼らの手を通過して大衆化したのち、いっしか〃主流〃へと取り込まれていく。それは、かって文学や映画やロックがたどり、アニメやマンガ、テレビゲームが同様にたどろうとしている道だろう。
今や、アイドルが青年誌の表紙を飾るグラビアアイドルになり、田中康夫は長野県知事、『ガンダム』は〃種〃で、バグダッドは爆撃を受けた。この間、JIWAVEが「好きなビートルズの曲」を募集したとき、中間発表の1位はなんと「イマジン」だったという。
つまり、サブカルチャーなんぞとっくの昔に死滅し〃大衆文化゠ポップカルチャー〃だけが生き延びたということ。そこでは、「イマジン」がビートルズではなく、ジョン・レノンのソロ曲だと言い立てるのは、オタクの〃こだわり〃以上でも以下でもない(それはそれとして価値があるのだろうけれども)。「古き良き'80年代」を回想するのは醜悪なノスタルジーでしかないが、それがどう変質したのが、そしてそれがどのように今の私たちを規定しているのか。それを考えるのは決して無駄ではないように思う。

084

← Page 83 – Page 85 →

Note: to add furigana, use {{Ruby-ja}}.