Secrets of Pokemon/Chapter 4: No compromise on strategic products

From Poké Sources
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第4章

戦略商品にも
いっさいの妥協なし

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日本初のカードゲームが第2のジャンピングポイントだ

ソフトを補完するカードの働き

ソフト発売から8か月後の96年10月20日、クリーチャーズの石原恒和がかねて開発していた『ポケット モンスタ—カードゲ—ム』が発売された。
ポケモンはモンスタ—をゲットして、モンスタ—図鑑をつくるというコレクション的な要素のあるソフトである。もともとは、ゲームソフトの開発者の田尻智が子供の頃にやったような、野球カードやウルトラマンカードのコレクションの楽しさを体験してほしいという思いから作ったゲーム。ゲー

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[[IMAGE CAPTION|
ポケットモンスター
力ードゲー厶 (メディアファクトリー)
ポケモンカードゲームのスターターノヾツク。遊び方説明書、ポケモンコインI枚がセットになっている。60枚入り1300円
]]

--- MAIN TEXT ---
ムボーイの画面では、モンスタ—コレクションはみるだけだが、ポケモンカードは彩色が施されているものを実際にコレクションできる。
石原は以前から、ちびまる子ちゃんのキャラクタ—を使った『はなまる作文ゲーム』や『エドカ』『ラメカ』といったカードゲームなどを多数開発していた。
ポケモンカードゲームに関しては、アメリカで誕生し、欧米はもとよりアジアでも人気がある『マジック・ザ・ギヤザリング』のように、コレクションの要素と対戦の面白さの両方を兼ね備えた物を作ろうと考えていた。
ポケモンはもともとがゲームボーイのソフトなので、モンス夕—の絵があまりきれいではない。しかも色がついていないので、そこを補うためにもカードが必要だった。カードには1匹ずつカラーでモンスタ—が描かれ、名前、特殊能力、技、弱点などが詳しく表示されている。
カードは大きくわけて、ポケモンの絵が描かれているモンス

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[[IMAGE CAPTION|
〃ねんりき〃系の超能力技を使える超ポケモンは紫色。ちなみに力ードゲー厶では、進化前のポケモンカ—ドをたねポケモンと呼ぶ
]]

--- MAIN TEXT ---
夕—カードと、エネルギーカード、ゲームの戦略を考えるうえで必要なトレーナーカードの3種類ある^ポケモンカードはそれぞれ草・炎・水・雷・超•闘•無色の7つのカテゴリーごとに分けられ、草は緑色、炎は朱色、雷は黄色、超は紫などと色で分類されている。
例えばフシギダネは草ポケモンなので、緑色のカード。紫色の超ポケモンはなんとなく怪しい感じ。超ポケモンのユンゲラ—は「ちようねんりき」という技を使う。このカードを見ているだけで、モンスタ—の特徴がよくわかるし、また実際にコレクションとしても楽しめる。ゲームでポケモンに接した子供に、もっと深くポケモンを知って楽しんでもらうためのものかポケモンカードゲームなのである。
小学生にアンケートをとったところ、ゲームボーイで遊んだ子供は、ほとんど例外なくカードもやっているという結果が出ている。ポケモンカードが発売されたおかげで、ゲーム本体とのかけ算が行なわれポケモンファンが拡大しただけでなく身近

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[[IMAGE CAPTION 1|
エネルギ—カード“ポケモンが技を使うために必要なカード。7種類あり、技に合うエネルギーカードを付けないと技が使えない
]]

[[IMAGE CAPTION 2|
トレーナーカード。ポケモンや場を操るための重要なカードで、ゲームの流れを左右する
]]

--- MAIN TEXT ---
な存在になっていった。
日本人がイメージするカードゲームというと、トランプか花札。いずれもすでに決められている札があり、それを使ってゲ—ムを行なう。トランプならハートが13枚、ダイヤが13枚、クラブが13枚、スペードが13枚にジョーカー、これがトランプのカードの構成である。裏面の模様が違うくらいで、トランプの中身は一緒である。
ところがポケモンカードは、なかなか同じ物が手に入らないースタ—夕—パックといって、ポケモンカードと進化カード、エネルギーカード、トレーナーカードが60枚セットになっているものが販売されている。しかし中身の構成は、スタ—夕—バックごとに違っている。同じポケモンカードが入っているとは限らないのだ。普通のカラー印刷のカードもあれば、光る特殊印刷が施してあるキラカードという種類もある。かってプロ野球カードが流行したとき、子供が争ってカードを集めたことがあった。長島選手や王選手などは稀にしか出て

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[[IMAGE CAPTION 1|
カメックスは攻撃力が強く、相手に大きなダメ—ジを与えられる。手に入りにくく人気の高いキラカードのひとつ
]]

[[IMAGE CAPTION 2|
伝説の鳥ポケモンのひとつ、サンダーもキラカード。ダメ—ジに強く攻撃力も高いが、技を出すときにエネルギーをたくさん消費する
]]

--- MAIN TEXT ---
こないので、〃アタリ〃カードとし、珍重された。
ポケモンカードにも、そういつた要素があるが、プロ野球カ—ドと違うのは子供によってアタリと感じるカードが違うのである。
ゲームをする上で、戦うのに強いカードである、「リザードン」「カメックス」「フシギバナ」が好きな子供もいれば、「フ—ディン」「サンダー」といった光るキラカードが好きな子供もいる。幻のカードといわれ、なかなか入っていない「ミュウ」をアタリだと思っている子供もいる。ゲームをするときは弱いのだけど、どうしても「ピカチュウ」が好きという子供だっているのだ。
その子供にとってのアタリカードが違うので、アタリが出るまでカードを買うことになる。スタ—夕—パックが1300円、この他に10枚291円で拡張パックも発売されており、カードのコレクションを増やしたり、ゲームに強いカード構成にしたり工夫する。

117  戦略商品にもいっさいの妥協なし

ポケモンカードゲームは、カードを集める楽しさとそれを使って遊ぶ楽しさを兼ね備えた物としては、日本で初めてのカードゲームといえる。

ゲームを補完する遊びの展開を進める

販売ルートを確保する苦労
ポケモンカードゲームは、今まで日本に存在しなかった新しいゲームである。ルールが複雑で、しかもポケモンの技や攻撃カ、弱点を理解したうえで、先を読んで戦略をたてていかなければ戦えない。最初はデッキと呼ばれる60枚のカードを手にはじめるのだが、その60枚にしても自分の手持ちのカードのなか

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での組み合わせと構成を考えなくてはならないのだ。トランプの常識しか持たない大人にとっては、たいへん難しいゲームである。
初めてのゲームであるから、当然販売する流通の担当者、仕入れをする問屋の担当者もまったくわからない。販路を確保するという難事業が待ち構えていた。
販売を担当しているのは、メディアファクトリーである。メディアファクトリーは、リクルート系列の出版部門を担っている会社である。
取締役の香山哲は、かなり以前からアメリカで大流行しているカードゲームに関心を寄せていた。カードゲームを、なんらかのかたちで日本でも展開できないかと情報を収集していた。クリーチャーズで新しいカードゲームを開発したらしいということを聞き及び、さっそく石原にコンタクトをとった。まだポケモン発売前のことだったが、ゲームが面白かったのとキャラクタ—でこれはいけるかなと香山は考えた。カードゲーム自

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体も、そろそろ日本で認知されるのではないかという漠然としたものを感じていた。
香山は会社に帰り、部下で現・取締役の小澤洋介を呼んだ。「カードゲームでさあ、ポケモンっていうのが出るんだよ」小澤はよくわからないまま、香山の話を聞いていた。手がけるからには、まず流通経路と販売計画を作って、クリーチャーズに提出しなければならない。しかし、メディアファクトリーは、書籍の出版社である。取次店とは付き合いがあったが、流通はまったく未知の分野である。これが1995年の年末のことだった。

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未知の分野に挑戦する無鉄砲さ

人との出会いが販路を開拓した
年が明けて、小澤をはじめスタッフは、流通確保のために問 屋やチェ—ン店を1軒ずつまわり、話をしていった。2月にゲ —ムボーイのソフトが発売され、ゲームソフトを置いているオ モチャ屋は、ポケモンの特徴は認識していた。
オモチャはメーカーから問屋に出荷する段階で買い取っても らい、小売店も問屋から買う。委託商品ではなく、買い取りで ある。買い取りの場合は、リスクが少なく、利幅が大きいもの をと考えるのは当然である。

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出足が早くて在庫にならない人気ソフトは、値段も4000円から6000円と単価が高い。そういう商品を扱っている店に、ほとんど認知されていないカードゲームで、しかも単価が300円弱からという商品を置いてもらうのは至難の技である。メリットをいかに認めてもらうかが、勝負だった。ところが、思わぬところから応援があった。キャラクタ—エンピツのブームである。エンピツの先にキャラクタ—をつけて、対戦して遊ぶというバトエンが爆発的に売れ出したので、単価の安い利幅の薄い商品でも、量がはければ十分に商売になるということが小売店の意識の中にも浸透しつつあった。といっても、正式に扱ってくれるという問屋が決まらないままに時間だけが流れていった。
ある時、メディアファクトリーの社員の一人に、大阪の玩具問屋に勤めている友人がいることがわかった。その友人を通じて相談にいったところ、是非扱ってみたいということに話が進んでいった。

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ゲームソフトを扱っている店には、子供はソフトを買うときにしか来ない。ソフトの値段は安くても、3000円から4000円するので、そう度々は来店できない。しかし300円弱で買える商品があれば、子供たちはやってくる。来店すれば、また次にほしいものは目に入って、他の商品の販促にもつながるという考えだ。
これが玩具卸しスターコーポレーションとの出会いであり、玩具問屋のルートがこれで確保された。オモチャの流通だけでは、小学生がどこまで集まってくるかが問題である。もう少し周辺に販路はないかということで、イトーヨーカ堂、ダイエー、ローソンといったGMSやCVSといった経路に営業にでかけた。
これには、以前から付き合いのあるリクルートとして、営業にいっている。
玩具問屋とGMSとの取引ルートが確保できたために、クリ—チャーズに対して、全国のどの地域にどれくらい流通させる

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ことができるかという販路と規模を提示することができた。これによって、クリーチャーズは、メディアファクトリーをカードの販売会社に決定した。当時のメディアファクトリーのカード担当は、4人。この4人とも書籍の営業との兼務だった。カードは商品が小さいので、売場で散逸することがないように、はじめからPOPを兼ねた箱を作った。1箱にスタ—夕—パックなら10個、拡張パックなら60個入っている。この箱をあけてフタをあげると、そのまま展示箱になるという仕組みにした。
『ポケモンカードゲーム』は今やスーパー、コンビニルートの売上げが全体の7割、オモチャ屋ルートが2割、あとの1割が書店で売られている。

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ごみ箱から始まるビジネスチャンス

カードゲー厶製造好調!
販路はある程度見えてきたが、本当に子供たちが買ってくれるのかが問題だった。ポケモンのキャラクタ—を使っているとはいえ、カードゲームは今まで日本にはなかったもの。そこでおもちやショーの会場に出掛けていって、カードゲームのチラシをつくり、子供たちに配ることにした。
96年6月に開催されたコロコロのイベントに、初めて出展した。といってもコロコロコミックブースの机の端っこに、ほんのわずかにスペースをもらう程度のものだった。

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会場で社員が必死にチラシを配る。チラシの文字は、「ポケモンカード製造好調」
ある程度絵柄も決まっていたので、チラシに絵柄をはって子供たちに配った。手渡すときに、
「こういうの、出たら買いたい?」
と聞いたが、子供に無視されることもたびたび。ポケモンの認知度もまだ低く、その上カードゲームという知らない遊びだったので、出口付近のごみ箱にたくさんのチラシが捨てられ散乱していた。
これだけ小学生に冷たい反応をうけたポケモンカードが、わずか1年半で、スタ—夕—パックが200万個でカード数にして1億2000万枚、拡張パツクをあわせると3億枚も売れる大ヒット商品になろうとは、誰が想像しただろうか。

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来店動機を高めるグッズを探せ

子供の遊び道具でもクオリティーにこだわりたいカードゲームの発売は96年10月20日と決まった。製造にあたっては、とにかくクオリティーにこだわって製作している。アメリカではNBAやNFLなど多くのトレーディングカードが発売されているが、仕上がりは決してきれいなものばかりではない。カードの角もただ四角く裁断されているだけというものが多い。ポケモンカードはコレクションするだけでなく、それを使って遊ぶのであるから、カードで手を切っては困る。そこで、角を丸くしてある。

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[[IMAGE CAPTION|
ラツキーのキラカード。HP値が高いが、攻撃時に相手と同じ数値のダメ—ジをうけてしまう
]]

--- MAIN TEXT ---
また、何度遊んでもきれいな状態が保てるように、紙も高級なものを使い、滑りがいいように表面にはトランプ並みのコーティングを施してある。こうした耐久性や滑りやすさを調べるために何度も試作品を作り、その都度チェックしていった。製作は、任天堂の関連工場が担当している。任天堂はトランプのトップメーカーであるから、技術の点では申し分なかった。ただし、トランプと決定的に違う点がある。それは中身のレアリティーの問題。トランプは4種類のマークを13枚ずつパッケージすればいい。ところがポケモンカードは、60枚入っているスタ—夕—パックの中身の構成が、ばらばらでなくてはならない。
第1段で発売されたカードは、ポケモンカードが69種類、卜レーナーカードが26種類、エネルギーカードが7種類となっている。これらのカードを、どれくらいの頻度で、どのカードを入れるかを決めなくてはならなかった。カードの右端にほんの小さなのマークが入っている。これは出やすいかどうか

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[[IMAGE CAPTION|	
ポケモンカ—ド、トレーナ—カードが入っている拡張パックの第—弾がコレ。メディアファクトリ—/I0枚入り29I円
]]

--- MAIN TEXT ---
の頻度を表している。★がついているカードは一番手に入りにくいカードである。
印刷する技術はあったが、1パックにするときに、どういう工程でカードを入れてゆくかのノウハウがない。そこで印刷したものを裁断して、シャツフル、それを一列ごとに交互に入れることで、まったく同じ構成のパックができないようにした。ときどき違うものを入れていかないと、どうしても出やすいカードばかりになってしまう。この複雑な作業を、なんと手作業で行なっていた。「8月のお盆シーズンには工場の人手が減るので、製造個数がおちるんじゃないかという笑い話があったほどなんです」小澤が当時を振り返って、笑う。
ゲームソフトの販売が伸びるのと呼応するように、カードの販売もうなぎのぼりに上昇してゆく。人手で入れていたのではどうしても間に合わなくなり、ついに発売からほぼ1年経た97年9月オートメーション化した。コンピュータ—制御で組み合

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[[IMAGE CAPTION|
最新の拡張パック『ロケッ 卜団』。〃わるい〜〃という ポケモンカ—ドが多い。メ ディアファクトり—/10枚 入り291円
]]

--- MAIN TEXT ---
わせをコントロ ールして、同じカードが出ないようにしてある。 その後拡張パックといって、10枚ひと組になったものを発売 している。すでに『ポケモンジャングル』『化石の秘密』『ロケ ット団』の3つの拡張パックシリーズが発売されている 『ポケモンジャングル』では、ポケモンカードが47枚とトレー ナーカード1枚、『化石の秘密』ではポケモンカード43枚と卜 レーナーカード5枚、『ロケット団』では、ポケモンカード53 枚、トレーナーカード9枚、エネルギーカード3枚が発売され ており、現在までのトータルで285種類になっている。 この他に、コロコロコミックの付録やJR東日本のスタンプ ラリー、ポケモン公式ファンクラブなど、そこでしか手に入ら ないおまけカードが19種類出ている。
これだけ数多くのカードが出ていても、自分で買ったものの 中にほしいカードが入っているとは限らない。 友達同士で交換して、集める子供もいる。しかし、 「友達に聞いても持つていないというし、どうしても手に入ら

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ないんです。だから送ってください」
という切々とした手紙を書いて、お金を送ってくる小学生もいるという。これに対してメディアファクトリーでは、丁重に断りの手紙を添えて返金しているそうだ。

子供商品でも手を抜かない

公式試合で誉めてあげる
メディアファクトリ—・エンタティメント事業部の内山雅子は、97年10月からポケモンカードの担当になった。担当に決まったとたん、まさかこれほどの忙しさに見舞われようとは思ってもいなかったというのが正直な感想だという。

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97年年末から98年2月にかけて、コロコロコミック主催の大イベントが行なわれた。名古屋、大阪、福岡はドームで、東京は幕張メッセで開催された、「次世代ワールドホビーフェア」である。
このイベントの出展者のひとつとしてカードゲームトーナメントを実施、内山はその準備と実施運営に追われた。コロコロコミックと完全連動して参加者にハガキで応募してもらい、各会場1日2回の開催で120人の小学生がカードゲームの対戦を行なった。
カードゲームの対象は9歳以上となっているが、一番のボリュームゾーンは小学校高学年から中学前半の男の子である。参加者は圧倒的に、その世代の男の子。
男の子に限定している訳ではないのだが、ルールが複雑で、しかも先を読んで戦略をたてないと勝てないという理論的なゲ—ムなので、女の子はなんとなく拒否反応を示すのかもしれない。

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トーナメントを勝ち抜いた各地域の子供たち4人が、4月26日東京で日本一決定戦に臨んだ。
こうした子供たちが実際にカードゲームで対戦することに対して、コロコロコミックの久保は、
「誉めてあげることが必要なんです」
という。
コロコロでは以前から、ミニ四駆の公式大会を開催してきた。なにか一つの遊びを突き詰めていったときに、ちやんと誉めてあげるシステムが必要なのではないかという。それも公式的に。最近の小学校の通信簿は、せいぜい3段階評価で、ちやんと勉強した人と、あまり勉強しなかった人の差がない。しっかり勉強した子供にとって、あいまいな評価は不満に感じる。運動会も差別につながるという考えから、最近は1等賞を出さない学校が増えている。
「こういう社会では、勉強はだめだが駆けっこは速いという子供には生きる場所がないのではないかって思うんです。塾にゆ

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くと偏差値があって、全国で何位と張り出したりしてるのに。だから学校に対して子供の興味が薄れてきていると思うんですよ。遊びに関しても、やっぱり一生懸命やったヤッはちやんと評価してあげたい。一生懸命やってよかったなと、その子に思ってもらわないといけないから、公式大会を主催してちやんと誉めてあげる場を作る必要があるんです」
と力説する。
誉めることで一層やる気になるし、他の子供も次はぼくも挑戦してみようと思う。
「初めて出会う子供と生で戦い合うなかで、相手から戦略的なものを学んだり、情報交換したり、そういうところで遊びが広がってゆくわけで、だからこれは絶対やってゆく必要があるんです」
たしかに、最近の子供は初めて出会った相手と「生」で真剣に向き合うという機会が少なくなっている。もしかしたら、塾の全国模擬試験の会場だけかもしれない。

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それとても直接相手と対戦するわけではなく、結果としてのランクでしかない。
どうせ子供の遊びだから、と大人は軽視しがちである。しかし、子供にとって遊びのなかから学ぶものがいかに多いか、自分の子供時代を振り返ってみるとよくわかる。
「カードゲームは、戦略を考え、先を読まなくていけないけれど、これに運の要素が加わるんです。山からめくったカードで何が出てくるかって。だからどの子も真剣ですよ。必死になってカードをきって、同じようなカードが出てこないようにしている」
勝負に立ち合った内山は、こうした光景を何度も目撃した。

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大人はやがて太刀打ちできなくなる

親も巻き込んで定着をはかる
イベント会場では、公式大会のほかに、インストラクターによるティーチングを行なっている。ルールが複雑なので、覚えるまでに時間がかかる。
実際にやってみると、大人で30分程度でなんとか遊べるようになるのだが、説明書だけではとても無理である。とくに小さい子供の場合は、解説書を読んだだけでイヤになってしまうこともある。そこで、親と一緒に覚えることで、子供も楽しく覚えられるという方法でファンの拡大をはかっている。

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4月26日のイベントでは、ポケモンカードゲーム親子大会も開催された。親子でペアになり、相手ペアと対戦した。カードゲームはある程度、足し算、かけ算、割算ができないと遊べないので、親子同時に覚えると最初は大人の方が強い。ところが子供は記憶力がバッグンなので、カードに書いてある技を1枚残らず覚えてしまう。こうなると、大人は太刀打ちできなくなる。
メディアファクトリーの担当の取締役・鶴宏明は、「うちの場合、親子のコミュニケーションは、カードゲームだけですよ。最初は他の子供と同じようにカードを集めるだけだったのですが、ルールを覚えたらやたら対戦したがる。ちょっと時間があると、一緒に遊べる。正面から対戦するともう子供には勝てないので、ちよつとズルしてなんとか父親の面目を保っているところです」
と苦笑いする。
カードゲームは、もともとゲームソフトを補完するために開

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発されたが、ゲームの奥行や面白さは大人にも十分アピールする完成度を誇っている。そこで開発者の石原は、ゲームやアニメを卒業したらカードゲームという位置付けにしたいと考えている。
ポケモンというキャラクタ—で子供たちが遊んで、その親に一緒に遊んでもらうことによって、対象を広げてゆく。キャラクタ—にしても、カードゲームにしても、小学校を卒業して、中学、高校にいくと、その期間離れてしまう傾向がある。またもう少し大人になると戻ってくるのだが、今後はこの空白ジェネレーションを埋める対策が必要になってくるのではないか。

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ポケモンカ—ドゲ—厶の遊び方

---ROW 1---
カードゲ—厶は、自分が選んだデッキと呼ばれる60枚の力—ドを使って行なわれる。力—ドは、ポケモンカ—ドと進化カ—ド、エネルギ—力Iド、トレIナ—力Iドの4種類があり、それらを組み合わせてデッキをつくる。例えば手持ちのカードに黄色の雷ポケモンと紫色の超ポケモンのカ—ドが多かった場貪この2種類のカ—ドを中心に構成する。これに黄色と紫のエネルギーカードを10枚ずつ入れて、あとはポケモンカードの技や弱点を助けるようなトレーナーカードを選

---ROW 2---
び、60枚のデッキをつくるわけだ。
ゲー厶開始にあたり対戦者は、まず自分の左側に6枚のカードを伏せておく。相手の6枚のカードを全部とったら勝ちである。メンコのように実際にカードを取ったり取られたりはしない。
ジャンケンで先攻を決めたら、お互いに場にカ—ドを1枚出す。この時、3回続けてたねポケモンが出なければ、その時点で負けになる。たねポケモンというのは、ポケモンの原形で、これが1進化、2進化と強いポケモンになつ

---ROW 3---
てゆく。先攻がチップを指で弾き、表が出たら相手のカ—ドに攻撃を加えられる。技と弱占点をうまく組み合わせて、対戦し勝敗を決めてゆく。ポケモンカードには、情報が書かれてある。
❶ はポケモンの名前。
❷ は、カードのおおよその強さのレベルを表している。
❸ はHP(ヒットポイント)といって、このカードのポケモンの体力を表す数字。HP以上のダメージをうけた場合は、「きぜつ」する。
❹ ポケモンカードがどの夕イプか表してある。これは水

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---ROW 1---
ポケモンで、エネルギ—力—ドの色は水色になる。
❺ ポケモンの「種類」と「身長」「体重」を表している。
❻ 拡張パックのマ—クを表している。
❼ はもっている技や特殊能力を示す。
❽ は逃げるときにトラツシュ(場から流す)するエネルギーの数。
❾ このポケモンの弱点となるポケモンを表している。
❿ このポケモンが抵抗力をもっているポケモンのタイプ。
⓫ 抵抗力の大きさ。
⓬ ポケモンについての解説。
⓭ イラストレータ—の名前。
⓮ ポケモン図鑑のナンバ—。

---ROW 2---
⓯ 進化の回数。たねポケモンから数えて、1回目の進化であることを表している。
⓰ このカードによって、進化できるポケモンの名前。こ

---ROW 3---
の名前のポケモンが自分の場にいれば、このカードを使ってそのポケモンを進化させることができる。
この特徴を使い対戦する。

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ウチの子供とポケモン

---ROW 1---
P27〜28のコラムで登場した子供たちのお母さん4人に、子供とポケモンの関わり方を聞いてみた。
A最初に子供が 『ポケモン言えるかな?』 の歌を歌っているのを聞いたとき、何を言ってるのかと思ってびっくりした。それでもよく耳にするから、さわりのところとかは私も覚えちゃった。
B うちは5歳だけど、覚えたものをず—っと繰り返し教えてくれる。
C 学校にゲ—厶は持っていけないから、一度家に帰って、

---ROW 2---
どこかの家に集まって遊んでる。何を持ってこいっていうなかに、必ずポケモンカ—ドとかゲ—厶ボ—イとかが入ってて、まずはポケモンで遊んで、それから外へ行って遊ぶとか、その日によってパタ—ンが違うみたい。
D 流行ってるときは歩きながらでもやってて。危なかったから、表ではやつちやいけないっていうのは決めた。
C 力—ドゲ—厶はル—ルがよくわからないから、誰かがしっかり覚えないと遊べない。低学年には難しいわよ。
A うちの子はいまだによく

---ROW 3---
わからないから、ただ交換してるみたい。ダブってるカードを交換しあうのね。遊びはもっぱらゲー厶ポーイ。
B やっぱりコレクションのほうが強いわね。
D 見えないうちにお金かかかるのよね。
C ゲー厶ソフトを2本とか3本とか持ってるし、コロコ口も毎月買ってるでしょ。Aゲー厶ボーイ本体を買うところから始まるものね。
D すると全部で1万円以上でしょ。カードもみんな100枚以上持ってるってことは、スター夕ーパックを入れなく

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---ROW 1---
ても3000円分以上は持つてることになるじやない。ほかにシIルもあるし。
C 1年生とかは、みんなシ—ルからスタ—卜したよね。これもコレクションするからいっぱい買ってる。
A シ—ルの中にはキラカ—ドっていうのがあって、そのキラカ—ドを集めるのがまた大変。全く入ってないのもあるし、1枚だけっていうのもあるし。だから小銭がかかっちやうわね。
B それにガシャポンとかお菓子。ス—パ—に行って1個買っても100円でしょ。「いや—、集まったな」とか思いつつ、使ったお金を考えると、バカバカしくなる。

---ROW 2---
A シ—ルは151種類で柄違いを入れたら180種類ぐらいになるわけでしょ。けっこうな数だよね。
D でも、実際は何枚持ってるかわかんない。これはお気に入りの持ち歩き用で、まだ家にもいっぱいあるんだから。そのかわり、ラムネ菓子とかガシャポンとかには興味ないみたい。
A ポケモンに飽きたとは言わないけど、どの時点で火が付くかで、波がズレてくるのかもしれないわね。
D 最近64を買ったもんだから、今はポケモンより64をやりたがってる。
C うちは64待ち。ポケモンのソフトが出てから買う。

---ROW 3---
A 力—ドを買って何が出てくるかどきどきして、それから友達と交換するときにまたどきどきするとか、ガシャポンで何が出てくるかどきどきするっていう、そういう遊び方を吸収しちやったわよね。でも、「ああ、こういうことか」みたいなサイクルを子供なりに覚えて、フツと間があいたときに、ちらっとポケモンはもういいかなっていう気持ちが出たりすることもあるみたい。でも、代わる遊びがないのよね。でも、次から次へとコロコロみたいに何が出る、何が流行るってやられちやうと、気持ちが駆られちやうのよね。友達が何を持ってる、あれを持ってるっていう

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---ROW 1---
のでワ—ツとなっちやうのよね。子供の間での情報化がすごく進んでると思う。
C 外で遊ぶのも好きだけどね。ソフトを買ってもらったあと2週間ぐらいは必死にやってるけど。
D 先が知りたいときは夢中でやるのよね。
C 近所の子なんか、ご飯に呼ばれても、まだレポ—卜できないからってご飯抜きになって。そうやってず—っと入つちやって。ご飯とか食べてても気がそぞろ。家のなかで動かないでず—っとやってるから、便秘になっちゃった。
D 私も3日間ぐらいやったんだけど、3日しかやってないのにすごいプレ—時間だっ

---ROW 2---
た。10何時間とか。子供はス夕—卜した日を知ってたから、3日間でそんなにやってたなんて絶対子供に見せられなかった。お母さんはそんなことしていられない時間があるわけだから、空いてる時間はすベてこれをやってたってことだもの。
A うちの子は買った頃はよくやってたけど、今はそんなでもないわ。
C 途中でも飽きちゃうよね。要するに進めない。つまったまま何日も経つちやうと、「赤はもうヤメ」ってなって、緑版を差し込んで初めからやったりしてて。それで、お友達にしよつちゆう電話して「それからどうするの?」っ

---ROW 3---
て聞いたりしてる。電話をかけられるときはいいけど、ご飯の時間だから今は電話をかけちやダメよって言ったときなんか、初めのうちはヒステリックになって泣き出したりして。本を読んでくれって言われて攻略本とかも読んだけど、あるところまでしか書かれてないじやない。ずっといろんなゲ—厶をやってた子はいいけど、小さい子とか女の子なんかこれが初めてのゲ—厶って子が多いんだから。
B 親がゲ—厶をやりなれてるんならまだいいけどね。私はゲ—厶が好きだから、ファミコンから、ス—ファミ、プレステ、ゲ—厶ボ—イの初期も買ったし。子供がまだやっ

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---ROW 1---
てないのに (笑)。
D ハマるタイプだから、私はあえてやらなかった。
C わかる! だから子供に強く言えないところがある。ゲ—厶をやったことないお母さんは、1時間って決めたら絶対1時間でやめさせるでしよ。でもゲ—厶を知ってると、セ—プできるところまで待つてあげちやうよね。
B ゲ—厶やっててよかったことは、ポケモンで字を読むのが早くなったことかな。D、うちはマリオで。幼稚園に入る前、3歳のときから始めたんだけど、すでに足し算ができた。コイン100枚を貯めるにはあと何枚っていう

---ROW 2---
ところから、数字に強くなった。100っていう桁を覚えてて、でも100の次は101じやなくて0になっちゃうんだけど(笑)。記憶力もよくなったみたいね。
B うちの子は5歳だけど、最初はグジュグジュ歌ってたポケモンの歌をいつの間にか最後まで歌ってた。151匹全部覚えたみたい。
A そういうのっていいんだって。頭の中に引き出しをいっぱい作る訓練になるんだって。今はポケモンだけど、なにかに置き換えられるから。B 最初は読んで覚えてたんだけど、歌詞カ—ドなくして、ほっといたら耳で覚えてた。

---ROW 3---
聞いてると「イエーイ」って入ってて、同じテンポで歌つてる。記憶力が付いてるんじやないかなーと思ってる。
C アニメはいっぐらいから見てた?
D うちの子は夏ぐらいから。だから、アニメを見てポケモンに入ったわけじやなくて、ゲ—厶から入ってアニメもやってるっていうんで見てた。
B 小さい子はゲー厶ができないけど、ポケモンっていうものが入ってきて、ピカチュウつてなんだろうってなるでしょ。それでアニメを見出した。あくまでも情報源としてのアニメであって、アニメが最初ではないな。