Secrets of Pokemon/Chapter 1: The birth of a once-in-a-decade character

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第1章

10年に1度の
キャラクタ一誕生

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10年にひとつともいわれるキャラクターの秘密〜
151種類のモンスターたち

中国のオモチャ工場地帯にモンスタ—を探す

ポケット モンスタ—が中国で増殖しているという。その実態を確認するために、香港に飛んだ。
香港は1997年7月1日、99年の租借期間を経てイギリスから中国へ返還された。
一国二制度に基づいて、香港は特別行政区として50年間は現状のまま変わらないと約束されている。返還後に訪れた香港は、空港に中国の警官が銃を携え警備にあたることもなく、何も変わっていないようにみえた。

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香港からKCR (九広鉄路) という鉄道に乗って35分、列車は中国の玄関である深圳に到着する。香港と中国本土を結ぶKCRは、かつては中国からニワトリや上海蟹を運ぶ人で満員であったが、現在は車両も新しくなり香港側から深圳の工場へ勤務する労働者の通勤の足にもなっている。
8輛編成のうち1輛が1等車で、座席がソファーになっている。他の車輛が金属製の堅い椅子なのに比べると、かなり快適だ。1等車に乗車しているのは、ほとんどが外国人ビジネスマン。スーツにネクタイをしっかりしめて、工場の運営状況につ いて話をしている。
1979年経済特別区に指定された深圳は、駅前から超高層ビルやホテルが建ち並ぶ近代的な街である。日本企業も数多く工場進出を果たしており、まさに躍進する中国の顔の一っとなっている。
香港が返還されてから、ビザの申請から許可がおりるまでは早くなったとはいうものの、相変わらず入国手続きには延々並

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ばなくてはならない。一日だけの特別ビザを申請するのに10分程度、入国審査に15分程度かかるだろうか。
深圳駅からクルマに乗り換える。
広州までのびている高速道路は、路面がガタついているうえに、橋脚が驚くほど細い。
地震がないからこれで大丈夫と説明を受けても、もし細い橋脚にトラックが激突でもしたら高速道路は脆くも崩れてゆくのではないかと、心配になる。
この道路は広州出身で成功した香港人が作ったものだという。この道路を乗用車や資材を積んだトラックが引っきりなしに爆走し、中国側からは生きたままのガチョウを積んだトラツクが何台も連なって走ってゆく。
深圳を出てから40分ほどで、めざす東莞市に入る。
東莞市は、街を縦断する10メートル道路の両側に4階建てくらいの長方形の建物が続くほこりっぽい街である。大型トラックがうなりをあげて走る道の端を、人間がけだるそうに歩いて

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いる。
この長方形の建物のほとんどがオモチャ工場。
1000とも1500ともいわれる工場のうち、日本製品を作っているのは、200工場はあるといわれている。これほどまでにオモチャ工場が集まったのは、10年ほど前にマブチモーターが自社の中国工場を作ったためで、以来、モー夕—を必要とするオモチャ工場群が形成されていったのだという。
はたしてこの長方形の工場の中で、本当にポケモンが作られ ているのだろうか。

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日本のオモチャ産業をささえる中国の労働力

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てのひらシリーズ (卜ミー) うなずきフシギダネ話しかけたりすると、内蔵の音声センサーが反応して「ダネダネ」といった返事をしながらうなずいてくれる。一480円
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フシギダネ発見

幹線道路から少し入ったところに、勵新實業有限公司 (NICE INDUSTRIES LTD) の工場がある。警備員の立つ玄関を入ると中庭を囲むように、工場と従業員の宿舎が建っている。4年前に建てられた工場だというが、それにしては階段も壁も傷みが激しい。
オモチャは販売数量の7割近くがクリスマスシーズンに集中する。クリスマスに売るためには、7月頃発売し宣伝と口コミの相乗効果で一気に販売攻勢をかけるのが理想的だといわれて

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中国•東莞市のオモチャ工場街にある勵新實業有限公司。訪れたときはトミーの゛てのひらシリーズ"がラインを流れ生産されていた
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いる。これに対応するために工場は、9月頃はフル稼働の状態になる。この時期には3000人の工員が、24時間昼夜を分かたず働くという。少ない時期でも1000人の工員が働いているとのことで、それだけの人数が昼夜2交替で毎日働いていれば、建物の損傷が激しいのも仕方のないことなのかもしれないー工場は各階ごとにそれぞれラインがあり、ベルトコンベアによる流れ作業でオモチャが生産されていた。 最初に目に飛び込んだのが、「フシギダネ」だった。トミーから発売されている大ヒット商品『てのひらピカチュウ』シリーズの一つ、『うなずきフシギダネ』が生産されていた。
広さ300坪程のフロアに、幅50センチ程の緑色のゴム製のベルトコンベアのラインが4基稼働している。ベルトコンベアの両側には、長い漆黒の髪を無造作に後ろで束ねた若い女性がずらりと並んでいる。一列に35人が、右側の列はこちら向き、左側の列が向こう向きと互い違いになるように座って、流れて

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取材時の新製品『うるさい二ヤース』は、一体一体が手作業で、反応する音量のテストを受けていた。仕事ぶりはとても丁寧だ
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きた部品を指示手順通りに組み立てていた。
化粧気のない女性工員の年齢は、15歳から20歳と本当に若い。見た目は年齢よりもさらにあどけない。ハンダづけなどの工程に、時折男性が交じることがあるが、大半は女性である。無駄口を一切きかず黙々と作業を続けている。
ひとりひとりの作業台の上には、布が掛けられている。日本は品質に厳しいので、ほんの小さな傷も許されないという。これは製品に傷を付けないための、保護の布なのである。工場の中では、フシギダネのほか、ニャース、カビゴンといった、音に反応して鳴いたり動いたりするオモチャとプラモンのラインが動いていた。
この工場ではプラスチックの成形から、塗装、IC部品の装着と組み立て、包装までを流れ作業で行なっている。1997年のクリスマス商戦で大ヒットした『てのひらピカチュウ』を生産したときは、5つの金型で24時間フル稼働、月に50万個生産、累計で200万個の生産実績を達成した。

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ひと通り塗装の終わったピ カチュウもまた、一本ずつチェック。3〜5本の面相筆を器用に使い分け、細か い修正を加えていく
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この工場に限らず中国のオモチャ工場は、塗装技術のすばらしさで定評がある。塗装はすべて人間による手作業で行なわれる。
たとえば、大きさ3センチ程度のピカチュウを作る場合、まず全体の黄色をスプレー塗装したあとは、それぞれ耳の先の黒い部分の右側を塗る人、左側を塗る人、右の黒目を塗る人、ほつペたの赤を塗る人など、一つのピカチュウを完成させるため に16人もの手がかかっている。
しかも完成したものをチェックして、塗り足りないところは針の先のような細い筆で補正している。細かい作業を根気よく続けている。
日本のオモチャは精巧で、仕上がりが美しいといわれるが、今やその品質を中国の女性が支えているのである。ポケモンはその種類が151もあるうえに、表情や色、形の規定がとりわけ厳しい。その厳しい要求を満たすのには、彼女たちの根気と忍耐が不可欠なのである。

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マーケティング要素だけではヒットしない

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多くは台湾製のチツプを用いて、IC基板が作られる。オモチャに使われる基板は比較的簡単なため、ハンダづけなどは中国で行なう
]]

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オモチャ生産は海をまたいで行なわれる

日本のオモチャメーカーは以前は自社の工場で生産を行なっていたが、現在は企画に基づいて原型を作り、契約工場に生産を委託している。
東莞市には、こうした契約工場が200ほどある。工場は香港の会社のもので、土地と建物を東莞市の鎮と呼ばれる村から借りて操業している。ちなみにこの工場の1か月の賃料は、80万円。生産にあたっては、まず工場に成形用の金型と、ICのチップ、説明書や包装材などの印刷物を運びこみ、成形、塗装、

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てのひらシリーズ(トミー)
てのひらピカチュウ
手のひらに乗せると、ピカピカ光りながら「ピカチュ〜」と鳴く。大人気となったてのひらシリーズの第|弾がコレ。1280円
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組み立てから包装出荷までを行なう。
契約工場の指定には、品質に信頼がおけることが最大の条件である。さらに、出来上がった物が不合格になっても、闇に流して売ってしまわないとい、つ信頼関係を結べるところとでなければ仕事はできない。この付近に工場は数多くあっても、品質を保ちながら安定供給ができ、しかも信頼できる工場というと限定されるのはいたしかたないことなのだろう。ICのチップは台湾で生産される。
例えば『てのひらピカチュウ』の場合は、手のひらに乗せると「ピカチュウ」と鳴いて、ほっぺたの赤い部分が光る。このIC製作には、まず声優に「ピカチュウ」という鳴き声をもらい、DATでデジタル録音する。これをパソコンから通信手段を使って台湾のIC工場のパソコンに送る。また「こうなったら音を出しなさい」「こうなったら光りなさい」といつた簡単なソフトを組んで、これも台湾に送る。このわずかな作業でICが完成する。

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簡単なプログラムのものなら台湾では日本の3分の2で、中国なら日本の15分の1のコストで、ICができるという。ICのチップが完成するのに50日かかる。このチップを中国の工場に運んで、生産がスター卜する。
中国の工場で完成した製品は、船便で4日間で日本に到着する。通関に1週間程度要し、その後メーカーの流通倉庫に入る。そして発売予定の1週間前に倉庫を出発し、問屋や小売店に運ばれるのだ。
ICを使ったオモチャは20万個売れれば大ヒットといわれるが、『てのひらピカチュウ』は、最初のロットから50万個の生産だったから、まさにおばけ商品、モンスタ—なのである。『てのひらピカチュウ』は、最近のオモチャのヒットの三要素 を備えているといわれる。
『光る・動く・しやべる』この三要素がうまく連動し、形になったのが『てのひらピカチュウ』である。

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しかもオモチャは子供にも手が届く値段でなければ売れないため、1000円でおつりがくるのが理想とされている。『てのひらピカチュウ』は一つ1280円という値段で、少し無理をすれば子供にも買うことができるという値段に設定したことも、実売170万個という驚異的な数字に結びついた。しかし、こうしたマーケティング要素だけではヒット商品は生まれない。そこにキャラクタ—自体の魅力が必要なのである。

日本では初めての人気の出方

子供の好きなキャラクタ—
ポケモンには151種類のキャラクタ—がいる。今までの人

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ポケットモンスター
サンダース
イーブイに「かみなりの石」を使うと進イ匕する。素早い攻撃が得意で、イーブイから進イ匕させられる3夕イプのなかでも人気が高い
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気キャラクタ一、例えばウルトラマンならば、子供に人気なのはウルトラマンとあとは怪獣が2、3種。登場するすべての怪 獣にファンがっくということはないだろう。ところがポケモンは子供によって、好きなキャラクタ—が本当に違うのである。実際に子供たちに好きなキャラクタ—をきいてみた。
小学6年男子•5人組(豊島園)
松浦君 1・サンダ一ス 2・エレブー 3•サンダ一
秋本君 1・サンダース 2・ドククラゲ 3•ライチュウ
安倍君 1・フリーザー 2・サンダース 3•ピカチュウ
斎藤君 1・イワーク 2・パルシエン 3•ギャラドス
愎本君 1・ミュウ 2・ミュウツー 3•フリ一ザ一 となっている。
しかし同じ6年生といっても、女の子ではまた好きなポケモンが違う。
小学6年女子•3人組(後楽園遊園地)
入江さん 1•シャワーズ 2•ピカチュウ 3・プリン

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ポケットモンスター
イ一ブイ
与える石によって3タイプのポケモンに進化する可能性があるめずらしいポケモン。貴重さで男の子に、かわいらしさで女の子に人気
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中瀬さん 1•イ一ブイ 2•ロコン 3•ヒトカゲ
武田さん 1•ピカチュウ 2•プリン 3•ニドラン(♀)

男の子と女の子では、これだけ好きなキャラクターが違っている。
男の子は攻撃力のあるパワー系のポケモンが好きなのに対して、女の子には目が大きく3頭身の可愛らしいロリコン系キャラクターが人気である。
今までのキャラクタ—は、例えばガンダムなら男の子が、キティなら女の子がという具合にキャラクタ—が性別を限定していた。しかし、ポケモンは151種類もあるうえに、特徴や特性がバラエティーに富んでいるので、遊び方や子供の性別や年齢、性格によって好きなキャラクターが分散し、それの集合体であるポケモンが一層パワーをもっという結果に結びついている。
長年ICのオモチャの制作にあたっていて、中国の事情にも

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詳しいティーエムコーポレーションの代表取締役である伊賀恰は、
「ポケモンはディズニー以来、10年に1度のキャラクタ—だと思います。ディズニーだってミッキーマウスは圧倒的に人気ですが、だからといってダンボやクマのプーさんが人気がないかというとそんなことはない。それぞれのキャラクターの総合で、ディズニーの人気が保たれている。日本のキャラクターでそういう人気の出方をしているのはめずらしい。もしかすると、初めてなのではないでしょうか」
という。
誕生してまだ2年のポケモンであるが、はたしてディズニーのキャラクターのように、長く世界中の人に愛されるキャラク夕ーになるのだろうか。これについては、時間が明らかにしてくれるだろう。

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小学1年生のポケモンワ一ルド

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君の好きなポケモンは?
協力してくれた子供たち
• かとうまりえ(7歳)
• わだたかき(7歳)
• やまもとしょうへい(7歳)
• きむらけんすけ(7歳)
• ながみねしんや(7歳)
• かねこたかし(7歳)
• こばやしみのり(7歳)
• よねやまこすも(5歳)

かとうまりえちゃんのクラスメイトと近所の友達。そしていとこのこすもちゃんがスペシャルゲストで参加

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小学1年生グル—プは、全員ゲー厶ボーイとカードゲ一厶の両方で遊んでいる。ゲ—厶ボ—イは、クラスの友達のひとりが、97年の春ぐらいに入院したときに始めたのをきっかけにクラスに広がってゆき、11月頃本格的に流行り出した。7人の間では去年の夏休みくらいから徐々に増え始め、今年に入って全員が持つようになった。しようへい君は、98年の1月3日からゲ—厶ボ—イでポケモンを始めた。ゲ—厶を始めるのが遅かったのは『ポケモン金・銀』バ—ジョンが出

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るのをずっと待っていたから。まりえちゃんのクラスでは、現在はほとんどの子がゲ—厶ボ—イでポケモンをやっているというが、たかき君のように力—ドのほうがよく遊ぶという子も出始めている。子供たちのカ—ドゲ—厶のやり方

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かとうまりえちゃんのお気に入りは『てのひらピカチュウ』]]

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は、通常のル—ル通りだけでなく、ただカードを交換するだけのものからオリジナルル—ルまでさまざま。たかし君は、ひとりでも力—ドを収納しているアルバムの並び替えをしたりして遊んでいるという。低学年の子は、対戦より

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もコレクションのほうが重要になっているようだ。
1年生全員が買っている雑誌は『コロコロコミック』。クラスの中でもほとんどの子がコロコロを買っているそうだ。コロコロは情報ペ—ジの内容が細かく、低学年には理解するのが難しいかと思っていたので、この結果は意外。好きなポケモンキャラは、個人でバラバラ。とくに男の子は、ゲ—厶ボ—イで自分のパ—ティ—にいるポケモンが好きなようだ。逆にキャラク夕—で選ぶのは女の子。まりえちやんやみのりちゃんはピカチュウが、こすもちやんはイ—ブイがお気に入りだった。

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ポケモンはいつでもみんなの話題の中心。まりえちゃんの自由帳は外も中もポケモンでいっぱい
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