Pokemon Story/Foreword

From Poké Sources
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ゲームスター卜

初めまして。わたしは、本書『ポケモン・ストーリ一』の著者です。のっけから恐縮ですが、ポケモンについて、空っぽになるまで書きました。それが、本書です。ポケットモンスター、略してポケモンといいます。
ポケモンは、当初は任天堂の携帯用ゲーム機ゲームボーイ用のゲームソフト『ポケットモンスター』に登場するモンスタ—たちの総称でした。日本およびアジア地域を除く、欧米などの海外では、ゲームそのものも『ポケモン』という名称で販売されていますから、かの地ではポケモンは略称ではありませんが、いずれにしても、ポケモンはポケモンです。
しかし、いまではもう、ポケモンという言葉は数多くのものを呑み込んでしまい、一言では説明できなくなってしまいました。例示的に列挙することも容易ではありません。ですから、ゲームのポケモンとか、アニメのポケモンとか、商品化されたポケモンとかという言い方で区別し、単にポケモンと言う場合には、そうしたものをすべて含んだポケモンの遊びの世界全体を指すこともありますし、ポケモンのビジネス全

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体を指すこともあります。あるいは、世界中にメディアを越えて広がってゆく現象や、文化的な影響力を意味することもあります。
本書では、できるだけ意味がはっきりわかるように書いていますが、それでもあいまいな場合は、ポケモンのすべてを指しているのだと理解していただければ幸いです。ここで、ビジネスとしてのポケモンを数字でご紹介してみましょう。ゲームソフト『ポケットモンスタ—』の発売以来の世界の累計販売本数は、2000年6月末現在で、6435万本です。そのハードである『ゲームボーイ』は、そのすべてがポケモンと連動しているわけではありませんが、ポケモン発売開始以来、世界で5000万台を超えるゲームボーイが売れています。ポケモンカードゲームは、全世界の累計出荷枚数が42億枚(2000年6月末)です。ポケモンのアニメーションは、テレビ東京で現在も放送中のアニメ番組が常時14パーセント前後の視聴率を記録しており、その再放送でも9パーセントから10パーセントにもなります。海外には、アジアをはじめ南北アメリカ、ヨーロツパ、中近東、アフリカと、ほぼ全世界をカバ—する51の国と地域に販売され、放送されています。映画は、日本では第3作目まで公開されていますが、1作目と2作目はともに、日本映画歴代配給収入ベストテンの7位と8位にランクされ、それぞれ42億円と35億円です。海外には、1作目がワーナーブラザーズの配給で、アメリカを皮切りに世界33カ国で公開され、さらに増え

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つつある状況ですが、すでに北米だけで8500万ドル、北米以外で9100万ドルの興行収入を上げています。ポケモンのキャラクタ—を使用した商品は、国内に約70社4000アイテムあり、累積市場規模推定7000億円です。海外になるとぐっと増えて500社8000アイテム以上になりますが、市場規模はまだ調査がありません。これらのすべてが、ゲームのポケモンを種として芽生え育ったのです。これまで、宗教や言語や人種や価値観や文化的背景などの違いを超越して、これほどまでに世界に広く伝播したゲームはありません。人類史上最大最速の伝播性と世界的共通性を備えていたという意味で、ポケモンの出現は、人類にとって未曾有の体験だったと言ってもいいでしょう。
しかし、本書で紹介するのは、ポケモン・ビジネスのその規模の大きさではありません。もちろん結果として規模にも触れることになるのですが、本書がたどっているのは、ポケモンはどのようにしてポケモンになったか、という軌跡です。その軌跡を、筆者は、ポケモンについてほとんど何も知らないところから、たどり始めました。その点では、ポケモンやその他のゲームソフトについて、何もご存知ない方にも安心してお読みいただけるかもしれません。取材という形で初めてポケモンに接したわけですが、ミイラ取りがミイラになり、ポケモンのゲームとその世界にす

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●本書の楽しい読み方●

初めまして、私は、ポケモン映画のエグゼクティブ・プ口デューサーをしております久保と申します。故あって、本書の共同著者となりました。本書は、上記の本文を畠山さんが執筆し、下段の解説・写真図案・時代考証を私が担当するというちよつと変わった表記スタイルを採用しています。
上記の本文は、畠山さんがおこなった数々の関係者インタビュー (インタビューのダイアログだけで原稿用紙800枚にもなっている!) を元に構成されています。ですので本来、アシスト的な注釈は必要ないと思っていましたが、担当編集者の柳瀬さんの希望である『親子で読めるビジネ
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っかり魅せられてしまった筆者は、好奇心の赴くままに、取材を進めてゆきました。ゲームを作ったのは誰なのか?どのようにして作られたのか?アニメーション化されたのはなぜか?ゲームソフトのアニメーション化はどのように行われるのか?ピカチュウはどこからやってきたのか?子どもたちに受け入れられたのはなぜか?キャラクターの商品化は、どのようにして行われているのか?ライセンスはどうなっているのか?任天堂はどんな会社なのか?テレビ東京の放送事故は、何が原因でどう解決されたのか?そしてアメリカにどのようにして進出していったのか?なぜワーナーが配給することになったのか?アメリカでもヒツトしたのはなぜか?ポケモンはこれからどうなってゆくのか?
本書は、こうした好奇心の一つひとつについて取材した報告書でもあります。ただ、本書ではゲームのポケモンのストーリーについては、基本的な事柄の他には、特に詳しくはご紹介していません。それは、本書がゲームの解説書を目指したものではない、というのも理由のひとつですが、それよりももっと大きな理由は、ポケモンにとってそのストーリーは、ゲームのほんの一部に過ぎないからです。ポケモンのゲーム世界を支えている大黒柱は、ある種の世界観なのです。その世界観があるがゆえに、そのストーリーを知ったとしても、ゲームそのものの価値が減じることはありません。いえ、実際にプレイした印象としては、プレイすればするほど

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ス書』を実現すべく、ストーリーの理解度を増すためにこのような下段解説をぼくが作ることになりました。また小学生でも読めるよう本文にはなるべく漢字にふりがなをつけました。
下段文章は、ポケモン現象を95年末のゲー厶の発売前後から関わっている久保が書きますので、純粋なファンという立場でかかれている畠山さんの上記本文とは趣が異なります。上記本文はポケモン事象をストーリーとして純粋に楽しみたい人にはぴったりです。下段解説はよりビジネス色が濃くなりますので、キャラクタービジネスをより知りたいと思う方々には役に立つかもしれません。
そう書くとこの表記スタイルは良いこと尽くめのように
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ポケモンの世界観に魅せられ、そのゲーム世界に対する愛着が増してゆきます。ポケモンはRPG(ロールプレーイングゲーム)と呼ばれるジャンルのゲームに属しますが、プレーヤーがゲームの主人公役(ロール)をつとめながらゲームの物語を進めてゆく(プレーイング)という形式のRPGでは、ゲームクリア後にこのような感覚が残るのはきわめてまれなことです。
その大黒柱ともいうべきポケモンの世界観については、できるだけ詳しくご紹介してあるのですが、ゲームのストーリーについて紹介していないのは、本書を読み終えられた方の中には、それじやあちよつとプレイしてみようか、と思われる方がいらっしやるかもしれないと思ったからです。
そうした方々の楽しみを奪うことは、本書の目的ではありません。にもかかわらず、ポケモンというゲームがどんなゲームなのかは、本書をお読みいただければ、十分おわかりいただけるはずです。不思議にお思いかもしれませんが、本当です。もうひとつ、ポケモンの世界にご案内する前に、任天堂取締役社長山内溥氏との対決についても、ここでご紹介しておきましょう。
この本が企画されたとき、任天堂の山内社長へのインタビューを計画しました。任天堂は、言うまでもなく世界のゲームエンタテインメント界の巨人であり、本書の主

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聞こえます。ですが(僕は書く前から感じているのですけど)、実は大きな不安をはらんでいます。それは畠山さんと久保はポケモンの全ての事象について全く同意見であるわけではないということです。つまり上段(畠山さん)•下段(久保)が同じベクトルで書いている場合は、確かにより理解しやすくなると思います。しかし、いったん意見の異なるパートに差し掛かれば、大きな声では言えませんが超頑固者の2人のことです。激しいディベートになったり、『畠山さんはこう書いているが、実際はこう考えるのが正しい一』など間違いを指摘しあうようなシ——ンも避けては通れないでしょう。
つまりそんなイザコザを含め楽しんで頂ければというこ
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人公の1人です。その〃総帥〃へのインタビューは、この本の成立に不可欠だと思われたからでした。
しかし、山内社長は、めったにマスコミの取材に応じることがありません。任天堂広報室を通じての正攻法はもとより、人の伝を頼ってもまず無理というのが業界のほぼ常識となっていました。
ただしその一方で、山内社長は知る人ぞ知る大の碁好きとしても知られています。囲碁です。そこで、詳しい事情は巻末のゲームクリアードにご紹介してありますが、苦し紛れの一計を案じて、インタビューの申し込みの際、「インタビュアーは碁打ちである」ということを付け加えておきました。「碁打ち」とは言っても、筆者はアマチュアのヘボ五段ですから、アマ強豪として知られる山内社長に敵うはずもありません。が、もしかすると、山内社長の関心を引けるかもしれません。狙いは見事に当たりました。インタビューを受けてもらえることになったのです。しかし、敵もさるもの。折り返し返ってきた返事には、条件がついていました。それは、インタビューの前にまず対局し、その結果によってはインタビューを受けようというものでした。もし筆者が首尾よく勝てば、山内社長のインタビューがとれますが、もし山内社長の勝ちなら、インタビューはあきらめて、とっとと帰るように、というのです。つまり、社長インタビューを賭けて碁を打とうというのです。

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とですが……。
蛇足ですが、ぼくはゲー厶を初めてプレイするために電源をONにする瞬間が大好きです。この本をここまで読まれた方々が、その感触と同等のものを感じていただければ幸甚です。
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それを聞いて、筆者は闘志を燃やしました。ただの勝負であれば、ほとんど勝つチヤンスはないでしょうが、賭け事となれば話は別です。賭け事はすべからく、実力よりも賭け事特有のツキが大きく影響します。筆者は、インタビューが取れる確率を五分と見ました。筆者にとっては、取材段階で、一つのゲームがスタ—卜したようなものでした。
というわけで、2000年3月29日、京都の任天堂本社で、筆者は山内社長に大勝負を挑みました。その結果は……この勝負を見物するためにわざわざ京都までやってきた共著者の久保雅一が、「ゲームクリアード」で報告してくれるでしょう。さて、ここでお話しておくことは以上です。さっそく、ポケモンの世界にご案内しましょう。
ポケモンワールドに、ようこそ!

(本文中は全て敬称を略させていただきました。)
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